Dr. 讃井の集中治療のススメ

集中治療+αの話題をつれづれに

集中治療医を目指す総合診療医。総合診療医を目指す集中治療医

2012-03-19 14:43:28 | 集中治療

 レジデントノート4月号の巻頭インタヴュー「あの先生に会いたい」を拝見しました。藤田保健衛生大学 総合救急内科教授の山中克郎先生のインタヴュー記事です。その中に嬉しいご発言を発見しました。

「これからは集中治療が大事だと思っています」

「麻酔や救急のチームに入って、そこで集中治療を私たちも学ばせてもらいたいです」

など、大変有り難いお言葉です。

 総合診療医も集中治療医も救急医も同じ総合医で、得意とする部分に違いはありますが共通点も多いですよね。米国がそうであったように、今後さらに内科系の先生がたが集中治療に参入してくださることを期待しています(注1)。ボク自身のバックグラウンドは麻酔科ですが、未だに内科系の先生がたに教えていただく部分はたくさんあります。そもそも、根本の診断を突き詰めるという内科的な考え方なしに、集中治療を場当たり的な対症療法に終始する場、技術であると捉えると、患者を失うことにつながります。もともと若い人を修行に出すのは大好きなのですが、内科の経験が少ない若者がその洗礼を受けられるよう、総合診療科に修行に出していました。

 集中治療というとどうも術後ICUのイメージが強くて....とおっしゃる内科系の先生も多いかもしれません。確かに外科系の問題になると急に拒絶反応を示す内科系の医師がいることも否定できないでしょう。しかし、外科ICU患者の重症度は実は高くありませんし(予備軍は多いが)(注2)、「ICU患者診療の8割は共通部分」(注3)なので、その8割を行うことができるようになるための「良いICUトレーニング」を受ければ、どの科の医師にでもどの科の患者のICU管理もできるようになります(注4)。私の周囲でも、元循環器内科医、元血液内科医、元腎臓内科医が、心臓外科の大手術の術後患者を何の問題もなく診療しています。ただし、残りの部分を埋める専門医との良好な協力関係を作っておく必要があり、重要です(注5)。

 確かに内科系の医師は、外科医に比べて当然手術の体験・知識は少ないですし、麻酔科医に比べて各種の生命維持技術の経験は少ないですが、逆に診断力、考察力では格段に優れています。おそらく最強のICUはこれらの違うバックグラウンドを持ったタレントの集団かつ、専門医、コメディカルとの良好な関係が築かれている場所ではないでしょうか。

 これからどんどん混合が起こるといいですね。均一なモノの考え方をするメンバーの集団はお行儀は良いが、自ら間違いを発見して更新しにくい、新しいものを生み出すパワーに欠ける、という一般論は真だと思います。別に日本のことを言っているわけではありませんけどね。

 

注1:米国の集中治療医の8割は内科系とくに呼吸器内科の先生です。集中治療の創設期には多くの麻酔科医が参与していたが、現在麻酔科医の中で集中治療をやりたいと思うのは少数です。個人的経験でもレジデントの同期35人中、集中治療のフェローシップに進んだのは私1人でした。

注2:「外科ICU患者の重症度は実は高くない」ことは、Intensivist 2012年第2号の 特集「術後管理」で内野滋彦先生が述べてくれます。現在、4月の内科学会、外科学会に間にあわせようとMEDSI編集部の方々が休日返上で作業中。

注3:集中治療医に求められる素養とは何か. Intensivist 2009年第4号 特集「不整脈」; 865-866 参照。

注4:「どの科の医師にでも」診れるがいままでそうやって来なかったことは変えずらいのは確かです。Intensivist 2012年第2号 特集「術後管理」の「心臓外科術後管理は誰がやる?」で心臓外科医、麻酔科医、集中治療医の間のバトルが繰り広げられています。必見です。

注5: 集中治療医に求められる素養とは何か. Intensivist 2009年第4号 特集「不整脈」; 865-866 参照。そこでも述べられているように、集中治療医のカバーする範囲は広く8割、専門医のカバーする残りは範囲は狭いが高く険しい道のりでもあります。