Dr. 讃井の集中治療のススメ

集中治療+αの話題をつれづれに

Intensivist Vol.4 No.2 特集「術後管理」刊行です

2012-04-11 21:54:07 | 集中治療

Intensivist 特集「術後管理」本日刊行です。

今回は、ICUにおける術後管理を行うにあたっての必要な知識を、できるだけ根拠に基づいて解説しました。術後管理の各論、つまり各外科固有の問題を抜きにした総論、すなわちSICUに共通の問題をいろいろな側面から切った特集と言えるでしょうか。

いつもながら著者のみなさまにはご苦労をおかけしました。こんなに厚くなるとは思っていなかったのですが、240ページにせまるボリューム(史上最大厚?)です。

もちろん厚さを自慢しても仕方ありません(むしろ問題かも)。実際、Intensivistは厚い、通読が大変という声も多く聞かれるようになり、私たち編集委員の間では悩みのタネでした。もちろん、論旨に必要なことは分量の多少のオーバーを気にせず書いて下さい、と著者のみなさまにお願いしているのは我々ですし、原稿は著者の方々の血と汗の結晶ですし、実際、読ませていだくと実のある内容が詰まっていて勉強になることばかり(感動することさえあります)でどこも削れないことが多く、厚くなるのは言わば確信犯なわけですが。

まず小さな工夫として、私たちとしては、読みやすくするちょっとした工夫、内容が頭に残りやすくする工夫を始めました。ご評価くださればさいわいです。今後もさらに改善していきたいと思います。

もう一つは、お手に取った読者の方々への読み方の一例のご提案です。15分程度(もちろん1時間がいい、という人もいるでしょう)で決して立ち止まらず、ざーっと全体をパラパラ眺めて(日本語は漢字がちりばめられていて目にどんどん飛び込みやすいですよね)、その上で興味のあるトピックだけ2~3個ピックアップして読むだけでもいいのではないでしょうか。厚いですから、全部を完璧に読もうとするとアタマがスグ拒絶しますし(当直室のベッドの友、本棚の友になりがちです)、結果として疎遠になって、実は自分が知りたいところにたどりつかなかったという事態にもなりかねません。

全部を身につけようとは決しておもわず、雑誌は雑誌、あくまで読み物、テキトー(失礼! テキセツ)に読んでアタマの中に、もやっとしたイメージを残しておけばいいのではないでしょうか(そもそもIntensivistは宿題ではない、と割り切った方が精神衛生上もベター!)。そして、たとえば朝の回診のときに、「ああ、この関連事項はIntensivistのあそこらへんに書いてあった」とふと回路がつながったら、いきなり知ったかぶりして説明を始めつつ、「ああそういえばIntensivistに書いてあったですよね、ちょっと取ってきます」と面倒くさがらずにICUの本棚に走って取りにいき(あるいは◯◯くん取ってきてと言って取りに走らせ)、見ながらだれか他の人(お気に入りのドクター、ナース、ME、薬剤師、理学療法士?)に説明をする、のがおそらく一番ラクチンな“Intensivistの身につけ方”かもしれません。押しつけレクチャーを何回か繰り返すうちにIntensivistを見ずとも“それなりのウンチク”が語れるようになるでしょう。

実際、アタマの中に残るのは、じっくり読んだ50ページの教科書より、わずか2分で斜め読みした数ページの雑誌の一部ということも経験しませんか。

もちろん、本来の到達目標レベルは元文献に当たり、「その根拠はNEJM2011に◯◯らが発表した.....では、◯◯という治療は生存率◯◯%云々」などの一発で相手をノックアウトできるウンチクを述べるのが理想です。ちなみに、口が勝負の欧米ではこういう語り方をする人たちは多いですが、それも自然な繰り返しトレーニングの賜物ではないかなと想像しています。

Intensivist 特集「術後管理」、どうぞお気軽にお楽しみ下さい。興味のある人にとっては目からウロコの知識がたくさんあって、本当に面白いと思うはずです。

以下コンテンツ。

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INTENSIVIST vol.4 no.2
【特集】術後管理


1. はじめに:術後患者がICUに入室することの意義
  内野 滋彦 東京慈恵会医科大学 麻酔科 集中治療部

2. 術前の心筋虚血評価
 Part 1:評価と予防法
  平岡 栄治 神戸大学医学部附属病院 総合内科
 Part 2:心臓負荷試験の意義
  平岡 栄治

【コラム】周術期の脳梗塞:術前リスク評価
  平岡 栄治

3. 術後患者に対するgoal-directed therapy:
 GDTに明日はあるのか
  岩井 健一 東京慈恵会医科大学 麻酔科 集中治療部

4. 周術期心筋虚血の診断と治療:
 「神頼み」の薬物投与ではなく,病態生理に基づいた管理を
  山口 大介 国立がん研究センター中央病院 麻酔科・集中治療科

5. 術後心房細動
  塩塚 潤二 自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科・集中治療部

6. 術後呼吸不全の予防と治療
  下薗 崇宏 神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科・集中治療部

7. 術後患者に対する静脈血栓塞栓症の予防:
 ICU入室では全例でまずリスクアセスメントを
  松島 一英 Penn State College of Medicine 外科

【コラム】術後肺塞栓を疑ったら:
 アンテナを張りめぐらし,早期の診断・治療に結びつける
  鈴木 龍児 聖マリアンナ医科大学 救急医学
  藤谷 茂樹 東京ベイ・浦安市川医療センター/聖マリアンナ医科大学 救急医学

8. 術後出血の予防・治療:出血をきたす病態の解析が重要
  松本 雅則 奈良県立医科大学 輸血部

【コラム】虚血性心疾患における抗血小板療法:
 日本人におけるデータも含めた多面的な検討を
  香取 信之 慶應義塾大学医学部 麻酔学教室

【コラム】ガイドラインにみる周術期抗凝固療法:
 未分画ヘパリン,ワルファリンの使い方に慣れる
  松尾 耕一 みさと健和病院 集中治療部

【コラム】周術期未分画ヘパリン使用上のピットフォール
  阿部 建彦・讃井 將満 東京慈恵会医科大学 麻酔科 集中治療部

9. 術後鎮痛
 Part 1:ICUにおける鎮痛の意義とその評価
  滝本 浩平 大阪大学医学部附属病院 集中治療部
 Part 2:薬物各論と鎮痛方法
  滝本 浩平

【コラム】術後の発熱は感染と関連するか:
 術後体温測定を考えるにあたって
  細川 康二 京都府立与謝の海病院 麻酔科

【コラム】ステロイドカバーは必要か?
  志賀 卓弥 東北大学大学院医学系研究科 外科病態学講座 麻酔科学・周術期医学分野

10. 肥満患者の術後管理:
 生理的変化と合併疾患,アウトカム,術後管理のポイントとその実際
  山口剛・関洋介 四谷メディカルキューブ 減量外科
  白石 としえ 四谷メディカルキューブ 麻酔科

【コラム】心臓手術後の管理は誰がやる?
 (1)ICUケア,それはもちろん心臓外科医がすべきである
  廣瀬 仁 Thomas Jefferson University, Division of Cardiothoracic Surgery, Department of Surgery
 (2)周術期管理は最初から最後まで麻酔科医に任せるべし
  松崎 孝 岡山大学病院 麻酔科蘇生科 集中治療部
  森松 博史 岡山大学病院 麻酔科蘇生科 周術期管理センター
 (3)マンパワーの効率面からも,集中治療医チームにお任せください
  後藤 幸子 大阪大学医学部附属病院 集中治療部

11. 「特集 術後管理」解説:SICUとは何か
  讃井 將満 

【連載】
■Lefor’s Corner
Nutritional Management of the Critically Ill Patient:
 Part II. Enteral Nutrition
  Atsushi Shimizu・Alan T. Lefor Department of Surgery, Jichi Medical University

■集中治療室目安箱:ナース/ME,私の言い分
 第13回:集中治療専門薬剤師を生む実践的教育システム
  前田 幹広 聖マリアンナ医科大学病院 薬剤部

■ICUと皮膚病変
 第5回:血管拡張
  神人 正寿 熊本大学 皮膚科・形成再建科

■集中治療に関する最新厳選20論文
  柳井 真知 Division of Infectious Diseases, Veterans Affairs Greater Los Angeles Healthcare System
  藤谷 茂樹 東京ベイ・浦安市川医療センター/聖マリアンナ医科大学 救急医学

■日本集中治療教育研究会(JSEPTIC)
 Fundamental Disaster Managementコースの開催
  児玉 貴光,安宅 一晃,藤谷 茂樹,
  室野井 智博 日光市立湯西川診療所・自治医科大学 救命救急センター

■JSEPTIC簡単アンケート
 第4回:気管切開,ICUとは,終末期医療
  内野 滋彦