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知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

椙山「フェアユースを中心とした著作権法の新潮流」を読む

2011-04-07 19:17:25 | 著作権

まず、著作物は基本的に他者に伝達されてその意義をまっとうするものであることが強調されています。この指摘は、著作物の流通に対する制約として機能する支分権の位置づけについて再検討をせまるものといえましょう。

また、フェアユースが柔軟なルールであり、社会の変化が激しい時代には適切な結論を導くのに有利であることが強調されています。技術革新のスピートが格段に増した超現代においては、法のルールは、画一的なものではなく、柔軟ルールが望ましいと思われます。

さらに、フェアユールが導入されたとしても、裁判所は従来の裁判例をも踏まえ「公正」を求めていくであろうから、裁判の結果が劇的に変わることはないとされています。

このフェアユースを巡る議論は、キルビー判決以前の特許訴訟のクレーム解釈に関する議論を彷彿させるものがあります。フェアユース規定がない中で、適切な結論を得るために、著作権法の条文解釈がゆがむことはあってはならないし、他方、不適切な結論を出すこともまた許容できません。この問題は、一定の類型において、著作権の権利行使が権利濫用であるとの判決が積み上がり、それらを受けて法改正がなされるという流れにより解決されると予想します。

なお、本論からは、外れますが、地方のネット局は、中央のキー局の番組の合間に地方独自のスポットCMを入れることにより広告料を得ているから、番組転送サービスは、このビジネスモデルを崩すものであるとの指摘がなされています(参考文献:電波利権)。


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