知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

電子レンジマイクロ波審取

2012-03-06 21:26:21 | 最新知財裁判例

電子レンジマイクロ波審取 

請求認容

本件は拒絶査定不服審判不成立審決の取消しを求めた事案です。

争点は容易想到性の有無です。

裁判所の判断は11ページ以下。

本判決は、引用発明の内容について、「引用発明は,セラミック製の調理容器で調理を行うときは,芋等が内部加熱され水分が蒸発するとともに風味が著しく損なわれるという従来の問題点に鑑み,フェライト材(マイクロ波を吸収して発熱し,赤外線を放射する。)とセラミック材(マイクロ波を透過する。)とが併存するように被調理物加熱層14を構成し,フェライト材におけるマイクロ波の吸収に起因した外部加熱と,セラミック材におけるマイクロ波の透過に起因した誘電加熱とを併用するものである」とし、他方、引用刊行物2の記載に関し、「引用刊行物2には,調理品等の味覚が損なわない新たな解凍技術として開発された発明であること,解凍又は加熱するときにその組成の違う物資が混在しているなかでマイクロ波を直接,照射すると解凍又は加熱すべき素材は全体が均一な温度による解凍又は加熱が困難であり,解凍又は加熱後の温度むらの原因は油脂部分等にマイクロ波が集中的に吸収されるなどして,全体に均一な温度の解凍又は加熱ができないこと,そこで,磁性体シートにおけるキュリー温度相当の外部加熱のみによって素材を加熱するため,磁性体シートを透過したマイクロ波をアルミ箔等の遮断層で反射することによって,素材にマイクロ波が直接当たらないように遮断することが記載され,さらに,段落【0013】には,磁性体シートは,マイクロ波の吸収による発熱の機能を担うのであってマイクロ波の遮断までも担うものではないこと,マイクロ波の遮断機能を担うのはアルミ箔等であることが示されている」と述べたて上、。両者を対比し、「引用発明は,調理品等の味覚が損なわれるのを防止するためフェライト材とセラミック材とが併存するように被調理物加熱層14を構成し,マイクロ波の外部加熱と赤外線の誘電加熱とを併用加熱することによって,課題を解決するものであるのに対して,引用刊行物2記載の技術は,素材に対し,均一な温度による解凍又は加熱を実現するため,マイクロ波を対象物に直接照射させないようにアルミ箔などで遮断して,外部加熱のみによって素材を加熱するものである」ことから、「引用発明は,素材を内外から加熱することに発明の特徴があるのに対して, 引用刊行物2記載の技術は,マイクロ波の素材への直接照射を遮断することに発明の特徴があり,両発明は,解決課題及び解決手段において,大きく異なる。引用発明においては,外部加熱のみによって加熱を行わなければならない必然性も動機付けもないから,引用発明を出発点として,引用刊行物2記載の技術事項を適用することによって,本願発明に至ることが容易であるとする理由は存在しない」と判断しました。 

本判決は、容易想到性の判断の誤りを理由として審決を取り消した事例として参考になると思われます。

 

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