知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

地盤強化工法事件判決

2015-01-28 17:11:47 | 最新知財裁判例

1 地盤強化工法事件判決

知的財産高等裁判所

平成26年(ネ)第10030号

平成26年07月23日 

2 判旨

(1)特許法は、発明の種類を「物の発明」(2条3項1号)、「方法の発明」(同項2号)及び「物の生産方法の発明」(同項3号)の3種類に分類している。そして、特許権の効力(68条)の範囲は発明の種類によって異なり、特許権に基づいて差止めを求めることができる行為は発明の種類によって異なるが、本件において、控訴人は被控訴人に対して差止めを請求していない。また、「方法」は、一定の目的に向けられた系列的に関連のある数個の行為又は現象によって成立し、必然的に経時的な要素を含むものといえるから、「方法の発明」又は「物の生産方法の発明」であるというためには、経時的要素を含むことが必須であるが、一方で、「物の発明」であるというためには、経時的要素を含むことは必須ではないというにとどまり、経時的要素を含むものであっても、「物の発明」であることを妨げるものではない(例えば、プロダクトバイプロセスクレームで規定された物の発明)。

 (2)そうすると、本件において、本件特許発明がいかなる発明に分類すべきかをまず最初に検討すべき実益はなく、各構成要件の充足性の判断の際に、当該構成要件が経時的要素を含むかどうか、本件特許発明の構成要件B及びDの「地盤強化工法」の文言が控訴人が主張するように「構造・構成」としての「工法」を意味するものか、被控訴人が主張するように「工事の方法」としての「工法」を意味するかどうかについて検討するのが相当である。

そして、控訴人主張の原告イ号工法は、本件工事の概要を示した原判決別紙図面の記載事項に基づいて構成したものと認められるから、以下において、本件工事における工法が本件特許発明の構成要件を充足するかどうかを判断するに当たっては、原告イ号工法を前提に判断することとする。 

3 コメント

本判決は、「「方法の発明」又は「物の生産方法の発明」であるというためには、経時的要素を含むことが必須であるが、一方で、「物の発明」であるというためには、経時的要素を含むことは必須ではないというにとどまり、経時的要素を含むものであっても、「物の発明」であることを妨げるものではない」との理解を示し、「本件において、本件特許発明がいかなる発明に分類すべきかをまず最初に検討すべき実益はな」いとした点において原審と異なる判断を示しており、対象発明が、物の発明なのか方法の発明なのか判然としないケースの参考にあるものと思われます。

 以上

 


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