知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

会社法制の見直しに関する中間試案(案)に対する検討(その2)

2011-12-13 16:50:12 | 会社法

2-3 監査・監督委員会設置会社制度 

2-3-1 導入の趣旨

新しい制度として、「監査・監督委員会設置会社制度」が提案されている。これは、業務を執行する取締役の監督機関として、監督・監査委員から構成される監査・監督委員会を設けるというものである。

その趣旨については、「取締役会の監督機能の充実という観点から,自ら業務執行をしない社外取締役を複数置くことで業務執行と監督の分離を図りつつ,そのような社外取締役が,監査を担うとともに,経営者の選定・解職等の決定への関与を通じて監督機能を果たすものとするための制度として,次のような機関設計を新たに認めるものとする」と説明されている。

2-3-2 監督・監査委員の要件

監督・監査委員は、「取締役」であり、かつ、その過半数は「社外取締役」であるとされている。さらに、業務執行取締役等との兼任が禁止されている。そうすると、業務執行者に対する監督機関に特化した取締役会というイメージが浮かぶ。

しかし、そのイメージは徹底されていない。すなわち、第1に、監督機能の他に監査機能も付加されている。第2に、社外取締役は過半数であれば足り、全員でなくとも良いとされており、業務を執行する取締役が監督・監査委員になることも可能である。もっとも、第2の点については、業務を執行する取締役をメンバーとなることにより情報提供が充実し、その結果、監督機能も充実するという見解に基づくものかもしれない。いずれにせよ、監査機能は切り離しておく方がわかりやすい。

なお、監査・監督委員会は,委員3人以上で組織するものとされている。

2-3-3 業務執行者

監査・監督委員会設置会社の場合には、監査・監督委員会が業務執行者に対する監督機関であるから、業務執行者は取締役とすることで問題がない。それ故、執行役も不要になる。

 

2-3-4 監査・監督委員会の監査権限

監査・監督委員会は監査権限を有している。正確には、監査・監督委員会及び各監査・監督委員は,それぞれ,委員会設置会社の監査委員会及び各監査委員が有する権限と同様の権限を有するものとする。したがって、「監査・監督委員会設置会社には,監査役並びに指名委員会,監査委員会及び報酬委員会を置かないものとする」とされている。

2-3-5 その他

監査・監督委員会設置会社は、類型的にみて,株主が多数かつある程度の規模を有するものと考えられる。それ故、会計監査人を置かなければならないものとされている。 

なお、監査・監督委員会設置会社の取締役会は,株式会社の業務の適正を確保するために必要な体制の整備について,決定しなければならないものとされている。 

3 監査・監督委員会の経営者からの独立性を確保するための仕組み 

監査・監督委員会は、業務執行者(経営者)を監督する機関であるから、その業務執行者(経営者)からの独立性を確保する仕組みが必要であり、以下の措置が講じられている。① 別選任決議

監査・監督委員である取締役は,その他の取締役とは別に,株主総会の決議によって選任するものとされている。 

② 選任議案についての同意

取締役は,監査・監督委員である取締役の選任に関する議案を株主総会に提出するには,監査・監督委員会の同意を得なければならないものとする。 

③ 選任議案提出請求

監査・監督委員会は,取締役に対し,監査・監督委員である取締役の選任を株主総会の目的とすること又は監査・監督委員である取締役の選任に関する議案を株主総会に提出することを請求することができるものとする。 

④ 特別決議による解任

監査・監督委員である取締役の解任は,株主総会の特別決議によるものとする。 

⑤ 監査・監督委員は,株主総会において,監査・監督委員である取締役の選任若しくは解任又は辞任について意見を述べることができるものとする。 

⑥ 辞任の理由陳述

監査・監督委員である取締役を辞任した者は,辞任後最初に招集される株主総会に出席して,辞任した旨及びその理由を述べることができるものとする。 

⑦ 任期

監査・監督委員である取締役の任期は,選任後2年以内に終了する

事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとし,その他の取締役の任期は,選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとするものとする。 

⑧ 報酬

監査・監督委員である取締役の報酬等は,その他の取締役の報酬等とは別に,定款又は株主総会の決議によって定めるものとし,監査・監督委員である取締役の個人別の報酬等について定款の定め又は株主総会の決議がないときは,当該報酬等は,定款又は株主総会の決議によって定められた報酬等の総額の範囲内において,監査・監督委員である取締役の協議によって定めるものとする。また,各監査・監督委員は,株主総会において,監査・監督委員である取締役の報酬等について意見を述べることができるものとする。 

4 監査・監督委員会設置会社の取締役会における業務執行の決定 

監査・監督委員会設置会社の場合、監査・監督委員会が業務執行者の監督をするので、取締役会の決議事項の一部である① 重要な財産の処分及び譲受け及び② 多額の借財を業務執行者に委任することができる。

 

 


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