知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

宍戸「会社支配権と私的財産権:第三者割当増資再論」を読む

2011-04-09 07:51:43 | 会社法

本論文は、少数株主である経営者が第三者割当による新株発行を利用することにより会社支配権を簒奪するケースにおける法的問題を指摘財産権の保護というより一般的な視点から論じるものである。

本論文は、まず、平成9年最高裁判決により、平成6年最高裁判決が事実上変更されたと理解した上で、会社支配権争奪ケースにおいて、新株発行が無効になるか否かの分水嶺を「支配株主が新株発行の差止めの機会を実質的に奪われていたか否か」により判断すべきとする。このように新株発行の無効原因を広く理解する根拠は、支配株主の私的所有権保護に求められる。

さらに、本論文は、支配株主と取締役の利益相反が存在しないケースにおいては、資金調達の要否、その手段の選択(デットかエクイティイか)について取締役の経営判断を尊重すべきであるが、支配株主と取締役の利益相反が存在するケースにおいては、これを尊重せず、司法が介入して、少数株主に転落した支配株主の救済を図るべきとする。この点は、MBOにおける「公正な価格」を巡る一連の判例・学説にも影響を与える考え方である。

また、参考になる米国裁判例として、Canada Southern Olis事件、Mendel事件、Packer事件、Benihana事件(新株発行の有効性を肯定)が紹介されている。


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