平成24年6月28日判決言渡
平成23年(ネ)第10060号特許権侵害差止等反訴請求控訴事件
(原審大阪地方裁判所平成22年(ワ)第10984号)
口頭弁論終結日平成24年3月6日
1 本件は,被告に対し,被告物件の製造,使用等が本件特許権1を侵害していると主張して,特許法100条1項に基づきその製造,使用等の差止めを求めるとともに,同条2項に基づきその廃棄等を求め,また,被告方法の使用が本件特許権2を侵害すると主張して,特許法100条1項に基づき被告方法による地盤改良工事の差止め及び損害賠償を求めたものです。
2
2-1
本判決は、均等の第2要件に関し、「本件発明2は,「掘削した土壌と固化材とを均一に混合させることができるようにすることによって高強度で且つ信頼性の高い地盤改良を行うことができるようにすること」及び「従来のラップル工法に比して,掘削土壌量を少なくし,掘削土を埋戻し土として有効利用できるようにし,生コンクリート費用を不要にすること等によって全体の地盤改良コストを低下させること」を解決課題(目的)とすることが認められる。そして,本件発明2は,上記目的を達成するため,建造物の基礎を構築すべき位置の地盤の土壌を掘削・排土し,所定開口面積,所定深さの空所を形成し,先に掘削・排土した土壌とセメント等の固化材と水とをそれぞれ所定割合づつ投入して,それらの材料を該空所内で混合・撹拌して固化材・土壌混同スラリーを固化させ,改良地盤を構築するものである。他方,イ号方法は,「空所形成工程a」において,建造物の基礎を構築すべき位置の地盤の土壌を掘削・排土して所定開口面積でかつ一定深さの上部空所(11)を形成し,その後,「縦穴形成工程a1,埋め戻し工程a2」において,上部空所(11)の下方に,さらに支持層まで到達する所定深さの溝あるいは縦穴(12)を部分的に形成して,支持層の確認を行い,掘削土は排土せずに埋め戻すとの構成を採用している」と認定し、「本件発明2の構成要件Aをイ号方法の「空所形成工程a,縦穴形成工程a1,埋め戻し工程a2」に置換した場合,「先に掘削・排土した土壌とセメント等の固化材と水とをそれぞれ所定割合づつ投入して,それらの材料を該空所内で混合・撹拌して固化材・土壌混同スラリーを固化させ(る)」という本件発明2の作用効果は得られず,「掘削した土壌と固化材とを均一に混合させることができるようにすることによって高強度で且つ信頼性の高い地盤改良を行うことができるようにする」という本件発明2の目的は達成されることはない」と判断し、「本件発明2の構成要件Aをイ号方法の「縦穴形成工程a1,埋め戻し工程a2」に置き換えることにより,本件発明2の目的を達することができると
はいえない」と結論づけました。
2-2
本判決はさらに、均等の第1要件に関し、「本件発明2は,構成要件A(「建造物の基礎を構築すべき位置の地盤の土壌を掘削・排土して所定開口面積で且つ所定深さの空所(2)を形成し,」)を採用することによって,「掘削した土壌と固化材とを均一に混合させることができるようにすることによって高強度で且つ信頼性の高い地盤改良を行うことができるようにすること」及び「従来のラップル工法に比して,掘削土壌量を少なくし,掘削土を埋戻し土として有効利用できるようにし,生コンクリート費用を不要にすること等によって全体の地盤改良コストを低下させること」との課題を解決するものである」と認定し、「イ号方法における「上部空所(11)にさらに支持層まで到達する所定深さの溝あるいは縦穴(12)を部分的に形成して支持層の確認を行」った上で,掘削土を排土せずに,当該「溝あるいは溝穴(12)を埋め戻」す工程との異なる構成部分は,その本質的部分に存在するというべきである」と判断しました。
3 本判決は、均等の第2要件を否定したものとして実務の参考になるものと思われます。
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