平成24年7月31日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成24年(ワ)第6732号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 平成24年7月3日
1 本件は,登録商標の専用使用権者である原告が,被告クラフトジャパン株式会社が当該登録商標に類似する標章を付した商品を販売した行為が原告の専用使用権の侵害行為に当たり,被告会社の代表取締役である被告Aがその職務を行うについて悪意又は重大な過失があった旨主張し,被告会社に対し,専用使用権侵害の不法行為に基づく損害賠償の支払を求めるとともに,被告Aに対し,会社法429条1項,430条に基づき, 被告会社と連帯して損害賠償の支払を求めた事案です。
2 本判決は、「被告会社による被告標章2を付した被告商品の販売は,本件登録商標の指定商品について本件登録商標に類似する商標の使用に当たるから, 原告の本件専用使用権の侵害とみなす行為(商標法37条1号)に該当するところ,商標法39条において準用する特許法103条により,被告会社には, 本件専用使用権の侵害行為について過失があったものと推定される。 したがって,被告会社は,少なくとも過失により本件専用使用権の侵害行為を行ったものと認められるから,原告に対し,本件専用使用権侵害の不法行為に基づく損害賠償責任を負うもの(請求原因(3)エ)と認められる」と述べた上、「会社法429条1項は,取締役等の会社の役員等が,会社に対する善管注意義務及び忠実義務を負うことを前提として悪意又は重大な過失によってこれらの義務に違反する任務懈怠行為を行い,これによって第三者に損害を被らしめた場合において,その損害賠償義務を負うことを定めた規定であると解されるところ,本件全証拠によっても,被告Aにおいて本件登録商標の存在を知りながら,あえて被告会社に被告標章2が付された被告商品を輸入及び販売させたことを認めるに足りない。また,本件登録商標が周知であったことをうかがわせる事情も本件の証拠上認められないことに照らすならば,被告Aにおいて,被告商品に付された被告標章2を見て他者の登録商標ではないかとの疑いを持ち,調査確認をしなかったことについて,過失はともかく,重大な過失があったとまで認めるに足りない」と判断し、「被告Aが故意又は重大な過失によって被告会社に対する任務懈怠行為を行ったものと認めることはできないから,原告の上記主張は,採用することができない」と結論づけました。
3 本判決は、知的財産訴訟において取締役の会社法上の第三者に対する責任が争点とされたものとして実務の参考になるものと思われます。
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