知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

軽やか風味事件判決

2015-01-27 12:24:31 | 最新知財裁判例

1 事件番号等

平成25年(行ケ)第10271号

平成26年11月10日

2 事案の概要

本件は、特許無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟です。主たる争点は、明細書の記載要件(実施可能要件)についての判断の当否です。

3 裁判所の判断:実施可能要件違反〔平成6年改正前特許法36条4項違反〕に関する判断

本判決は、「アルコールの軽やか風味」について、概要、以下のとおり述べて、実施可能性要件を否定しました。

当業者は、本件発明の実施に当たり、アルコール飲料にシュクラロースを添加することによって、アルコールに起因する「苦味」及び「バーニング感」を抑える一方、「アルコールの軽やか風味」については「生かしたまま」、すなわち、減殺することなく、アルコール飲料全体の風味を向上させられるか、という点を確認する必要がある。そして、この確認のためには、「アルコールの軽やか風味」の意味を明らかにすることが不可欠というべきである。

本件明細書の記載のすべてを参酌しても、これらの「好ましい味」が「軽やか風味」に該当するものと直ちにいうことはできず、両者の関係は不明といわざるを得ない。

以上によれば、「アルコールの軽やか風味」という用語の意味は、不明瞭といわざるを得ない。そして、当業者は、本件発明の実施に当たり、「軽やか風味」については「生かしたまま」、すなわち、減殺することなく、アルコール飲料全体の風味を向上させられるか、という点を確認する必要があるところ、「軽やか風味」の意味が不明瞭である以上、上記確認は不可能であるから、本件特許の発明の詳細な説明は、「アルコールの軽やか風味」という用語に関し、実施可能性を欠くというべきである。

以上

 


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