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知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

椙山敬士「著作権論」を読む(2)

2011-03-18 06:31:01 | 著作権

第2部:保護範囲について

1 複製と翻案は択一的認定で良いとのご主張です。賛成です。

2 侵害と創作性の程度について

創作性のある部分のみを対象に侵害の有無を判断する見解(田村説)もありますが、利用の程度も考慮すべきとのご指摘です。賛成です。

3 翻案物と原著作権について

先行作存在の抗弁を提唱されています。先行作と同一の作品を偶然に(依拠することなく)創作(偶然の暗合)しても、文化の発展には寄与していないので、著作権を付与する必要はないとの見解で、全く賛成です。少数説なのが不思議。偶然の暗合の場合に当該創作行為が著作権侵害となるかという問題と当該創作物に著作権を付与するかとは全く別の問題ですが、混同されているのでしょうか。

先行作存在の抗弁に対しては、①独自制作の再抗弁、または、②許諾の取得の再抗弁が成立するとのご見解です。これらの再抗弁の共通要件として、「原告作品と先行作品が同一ではないこと(実質的類似物であること)」がありますが、その位置づけが読み取れません。考え方として、「原告作品と先行作品が同一ではないこと」を再抗弁事実の一つとするか、原告作品が先行作品と同一または類似であることを「先行作存在の抗弁」の抗弁事実の一つとするか、のいずれかがありますが、後者が妥当でしょうか。そうすると、再抗弁の成否が異なる以上、「先行作存在の抗弁」は二つに分けるべきと思います。つまり、「先行同一作存在の抗弁」と「先行類似作存在の抗弁」というように。

 


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