平成22(行ケ)10016号:
本件は、無効審判不成立審決に対して取消を求めるものです。
主たる争点は、進歩性と実施可能性です。
裁判所の判断は、23ページ以下。
まず、本判決は、本件発明1の「打点衝撃を与える所定形状の突起」の技術的意義について、明細書の記載を参酌して解釈する一方、引用発明1における突起の形状、大きさ、作用効果を参酌し、これは、本件発明の「打点衝撃を与える所定形状の突起」に相当しないと判断しました。
次に、本判決は、引用発明1の凹凸は、スリップを防止するためであり、ガラス板に板圧を貫通するほどの極めて長い垂直クラックを発生させる程度の打撃衝撃を与えるものではなく、引用例1には、構成・作用効果に関し、かかる本件発明1の技術思想を示唆するものではなく、また、引用発明2の鋸歯状の突起は、後に高温でガラスを切断することを前提として、ガラス表面に微細な傷を生じさせるために設けられた構成であり、極めて深い垂直クラックを発生させるという高精度のスクライブラインを形成することまでは想定しておらず、引用例2にも、打点衝撃を与える所定形状の突起に係る構成・作用効果に関し、本件発明の技術思想を示唆するものではない、と判断しました。
さらに、本判決は、引用発明3に関し、本件発明1とはガラスの切断機序が明らかに異なるものである上、引用発明3のガラス瓦と本件発明のガラス板とは、厚さ・形状・用途が相当異なるものであって、引用例3には、瓦カッターに関する知見をガラスカッターホイールについて転用する動機付け・示唆はないと判断しました。
また、本判決は、本件発明3ないし5においては、突起の形状を決める諸要素がホイール外径に比例することを前提に各数値範囲が設定されており、数値範囲内での設定方針が開示されていると述べた上、明細書に記載の推奨例を参考に、当業者が本件発明の数値範囲内において刃先に打点衝撃を与える所定形状の突起を設けることについて、当業者に過度の試行錯誤を求めるものではなく、実施可能性要件を充足すると判断しました。
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