知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

可動人形審取

2013-01-24 06:42:08 | 最新知財裁判例

1 平成23年(行ケ)第10255号審決取消請求事件
2 本件は、無効審判不成立審決の取消を求めるものです。
3 本件の争点は、進歩性の有無です。
4 
4-1
本判決は、無効理由1における容易想到性の判断の誤りについて、「第1商品(甲1の1,2。別紙甲1の1(写真6)参照)の各部材は,ネジなどの着脱によって分解・組立てできることは,その構造からして明らかであるから,第1商品は,当業者が組立て可能な人形であると認識できるものである」としつつ、「第1商品は,完成品人形であって,上半身部品と下半身部品は,組み立てた状態で着脱自在ではなく,また,上半身部品を交換するものではないから,上半身部品の交換の容易化という技術的課題が内在しているとはいえない」と述べ、さらに、「第2商品(甲5の1,2。別紙甲5の2(組立説明図)参照)の胸部(2.パーツ)と胴部(6.パーツ)の抜き差し連結構造は,胸部(2.パーツ)を交換可能とするためのものであるが,第1商品における腹部や腰部は,他の部材と交換する必要はないから,第1商品発明の腰部連結構造に,第2商品発明の胸部と胴部の抜き差し連結構造を適用する動機付けがあるとはいえない」と判断し、また,第2商品については、「腹部と腰部を連結している連結体のうち,軸部は,腰部に形成された円筒状の軸受け部に接着固定されており,一方,球体部は,腹部の下面に形成された円筒状の凹部に嵌め込まれて接着固定された筒体に挿入,嵌合することによって揺動可能となっているため,腹部と腰部を上下方向に引っ張ると,連結体の球体部は,筒体から抜け,腹部と腰部は分離されるから,上半身部と下半身部は,着脱自在になっているものと認められる」ことから、「上半身部と下半身部が既に着脱自在になっている第2商品において,接着固定されている連結体の軸部と腰部の軸受け部を,接着固定せずにわざわざ着脱自在とする必要性はないから,第2商品の胴部と腰部の連結構造は,原告がいう「必ずしも接着固定が必然のものではないことが容易に理解できる胴部と腰部の連結構造」と認めることはできず,原告の主張は,前提において誤りである」と判断しました。

4-2
また、本判決は、原告の「無効理由1における主引用例と副引用例を入れ替えて,第2商品発明に第1商品発明並びに周知技術の構成を適用すれば,本件特許発明1は容易想到である」との主張に対し、「本件特許発明1は,「前記上半身部品と前記下半身部品は, ……前記棹部と前記差込み穴との上下方向の差込み又は引き抜きのみによって着脱自在に連結されている」(請求項1)ものであるから,棹部の上半身部品側は固定されているものと認められる。他方,前記1 (1)のとおり,第2商品では,腹部と腰部を連結している連結体のうち,軸部は,腰部に形成された円筒状の軸受け部に接着固定されており,一方,球体部は,腹部の下面に形成された円筒状の凹部に嵌め込まれて接着固定された筒体に挿入,嵌合することによって揺動可能となっているため,腹部と腰部を上下方向に引っ張ると,連結体の球体部は,筒体から抜け,腹部と腰部は分離されるから,上半身部と下半身部は,着脱自在になっているものと認められる」ことから、「第2商品には,接着固定されている連結体の軸部と腰部の軸受け部を着脱自在とし,そうした上で更に,着脱自在(揺動可能)になっている球体部と筒体を接着固定する必要性も動機付けもないから,第2商品の上半身部品と下半身部品を,本件特許発明1のように連結体の軸部と腰部の軸受け部との上下方向の差し込み又は引き抜きのみによって着脱自在に連結することが,容易想到であるとはいえない」と判断しました。

5 本件は、容易想到性を否定したものとして参考になると思われます。

以上

 


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