知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

「最高裁の暗闘」」を読む

2011-01-18 18:29:14 | 読書

まねきTVの最高裁判決日に合わせて購入しておいた本書を読了しました。

タイトルはどうかと思いますが、内容は真面目なもので、一読に値します。これまで知る機会のなかった最高裁判所内の議論状況や元最高裁判事の法律に対する考え方などが分かり、とてもためになります。法曹以外の方には、23ページに示される滝井元最高裁判事の見解が参考になるでしょう。引用すると、「何が妥当な結論かが先にあって、理屈を考える。可能な限り考えても理屈が見つからないとき、「結論が間違っているのか」と考える」とあります。つまり、法律家の解決すべき命題は、①妥当な結論の発見と②その結論を導く法解釈の発見にあるといえます。もとより、ある結論が「妥当」であることは、単なる印象・直感によるものではなく、分析的・総合的思考により、導かれる必要があります。言い換えれば、ある結論が「妥当」であることの論証も必要なのです。

個人的に最も驚いたのは、裁判官出身の最高裁判事の思考の柔軟性です。時代の状況を見据えながら、司法の役割を探っていこうという姿勢がみえて新鮮でした。これまでは、「最高裁判事になるようようなエリート裁判官の発想は硬直的に違いない」と思い込んでいましたが、誤りでしたね。これこそ、印象に基づく結論でした。反省します。こんな裁判官が多いなら裁判官も悪くないと思えてきました(向こうがおよびではないかもですが)。なお、この本の著者は、このような最高裁判事を「リベラル」と表現していますが、「リベラル」は政治的色彩の強い言葉なので、他の表現の方がよいでしょうね。「人権派弁護士」という表現も同様です。

 


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