知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

まねきTV最高裁判決

2011-01-18 19:08:45 | 著作権

まねきTVの最高裁判決がでました。破棄・差戻しですね。反対意見・補足意見なしです。

知財高裁との相違点は、①送信可能化権の解釈、②「公衆」の捉え方、③送信の主体の捉え方でしょうか。

法解釈論としては、最高裁の方が正しいような印象を受けますね。本件は、このような番組転送サービスが、権利者の著作権法上保護に値する利益を害さないとすれば、損害がないから差止請求権は発生しないとするか、又は、その行使が権利の濫用(民法1条)との解釈により解決すべきように思います。逆に言えば、権利者の著作権法上保護に値する利益を害するとすれば、差止めを認める結論が妥当であり、そのための理屈として最高裁の法解釈は正しいと思います。

権利者としては、地方のネット放送局の経営を守ることにより自社のビジネスを維持することが、番組転送サービスにより侵害される利益と思われます。これが著作権法上保護に値する利益であるかについては、見解の相違があり得るところであり、また、国家としての電波行政に絡むこともあり、裁判所が結論を出すことはその役割を超えていると考えます。従って、現時点においては、最高裁の法解釈で良いと思います。とはいえ、個別意見での突っ込んだ説明は欲しかったところです。