1 発光ダイオード光源事件判決
知的財産高等裁判所
平成25年(行ケ)第10318号
平成26年09月11日
2 判旨:取消事由2(本願補正発明との相違点についての容易想到性の判断の誤り)について
(1)本願補正発明と引用発明との相違点は、審決の認定のとおりである。すなわち、両発明は、いずれも電気的なコンタクトを有し、かつ、放射光を放射する面に塗布したルミネセンス変換材料を、同じ工程段階(溝形成工程及び当該面への塗布工程後で、個別化工程前)で研磨するという点で一致するものであるが、本願補正発明は研磨によって、電気的なコンタクトの露出により外部回路との電気的な接触能力を保証するということだけではなく、併せて発光ダイオード光源の色位置を調整するという目的を有し(前記1(1))、これを構成要件の一部としているのに対し、引用発明は、外部回路との電気的な接続の確保のために電気的なコンタクト(接続電極)を露出させるという目的のみで研磨しているという点で相違する。
(2)刊行物2の技術は、引用発明と同じ、発光素子の周りを波長変換用の蛍光物質を含有する樹脂材料によって被膜するという白色光の発光ダイオード光源の製造方法に関するものであり、引用発明と同じく、透明樹脂の塗布工程の次に存する、ルミネセンス変換材料(透明樹脂)の厚みを研磨により調整するという工程に関するものであるから、引用発明と全く同一の技術分野ないし対象物に関するものである。また、刊行物2の技術は、樹脂層の研磨調整により、所望の色度に調節できるという機能を有するものであるところ、引用発明も、光電子部品というものの性質上、発せられる光を任意の色調とすることが前提として必要とされている(刊行物1の【0022】)。
(3)そうすると、刊行物2の記載に接した当業者であれば、引用発明における光の放射面側に塗布された透明樹脂を研磨して接続電極を露出させる工程である「研磨工程」が、接続電極を露出させることに加えて、透明樹脂の層の厚さを調整して、所望の色度を得る手段にもなり得ることを理解するといえ、同一の技術分野及び製造工程を有する引用発明においても、製造する光電子部品を任意の色調とするために、「研磨工程」を行う際の研磨量を調整して色度の調整を行うことは、当業者であれば容易になし得ることであるといえる。
3 コメント
本判決においては、引用発明に刊行物2記載の技術を適用することの動機付けを基礎付ける事実としては、「全く同一の技術分野ないし対象物に関するものであること」のみが挙げられているようであるが、これだけでは動機付けを肯定するには若干躊躇を覚える。このためか、本判決は、刊行物2記載の技術の機能が引用発明の前提として必要となることを挙げているが、これが、動機付け基礎付け事由に該当すること理由は判然としない。
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