本書は、独禁法を真剣に学ぼうとする者は必ず手に取るべき一冊である。
僕は、経済学部の出身の弁護士だが、本書に出会うまで、日本の独禁法に関する教科書を何冊も読んだが、モヤモヤしたものが残った。他方、不思議なことに、米国独禁法に関する教科書はすんなり読めるのである。
その理由は、本書を読んで氷解した。
第1の理由は、独禁法の基本的考え方を理解することの重要性が軽視されてきたことである。つまり、これまでの教科書では、総論の説明が不十分なまま日本独禁法の体系及び条文の説明をしようとするから分からないのだ。何故、刑法と同様に総論の説明を重視しないのかは謎である。
第2の理由は、日本の独禁法の条文が米国独禁法を誤った理解の下に直輸入したことである。つまり、条文の作り方がおかしいのである。おかしい条文を前提とする説明が理解できる訳はない。
この状況を前提にすれば、本書のように、最初に弊害要件の総論を説明することは全く正しい。
そして、弊害要件を検討対象たる市場の確定を前提として上で、①反競争性と②正当化理由の不存在に分けて論じている点も極めて分かりやすい。独禁法は、公正な競争を促進することを目的とするのであるから、反競争性が要件の一つになることは当然であるし、他方、独禁法も国富の増大を目的とする競争政策法の一つである以上、正当化理由が存在する場合には、当該行為が違反要件を充足しないことも当然である。
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