手廻しオルガン弾き
手廻しオルガン弾きのおじいさんが今日も仕事に出かけようとすると、オルガンの前輪のタイヤがはずれています。
しかたがないなあ、今日は仕事を休むことにしようとおじいさんはベンチに腰掛けて、ワインを飲みはじめます。
瓶のワインが少なくなりはじめたころ頃、オルガンが演奏をはじめます。
あれっ、おじいさんの手は動いていません。
なんと、オルガンのハンドルを廻していたのは、おじいさんがベンチに脱いで置いていた上着の袖だったのです。
毎日この仕事をしているおじいさんの足は自然にリズムを刻んでいます。
街灯の下の時計をみると、夕方の時刻、おじいさんはつかの間、夢を見ていたのでした。
バードゲージ 1890年 フランス ボンタン作
剥製の鳥が嘴、首、尾を動かしながら、まるで生きているように、囀ります。
台にふいごが組み込まれ、風を送って笛を通しリズミカルに鳴き声を再現しています。
鳥は50年寝かせて、色が変らないのだけを使ったとのことで、100年余りたっても色落ちもなく、さわやかな囀りを聞かせてくれます。
月とピエロ 1890年 フランス ランベール作
ピエロが月にオーハード(恋人の朝の別れの歌)を捧げます。
月に腰掛け、ギターを弾くピエロの歌声に聞き入る月は、目を開きやがていっしょに歌いはじめます。
月に女性のイメージを重ねた夢のある作品で、同様のヴィシーの作品もあります。
バンジョーを弾く黒人 1880年 フランス ヴィシー作
激しく息をしながら右足でリズムをとり、バンジョーを弾く老人、首を振り、目や唇を動かす顔は苦悩の表情にも見えてきます。
仮面を操る道化師 1910年 フランス ドゥカン作
道化師は瞬きをしながら鼻を動かし首をまわします。
彼に操られ、5つのお面とともに靴底の顔までが目、口、舌を動かします。
まぶたや鼻の部分に弾力性に優れた豚の腸皮を使ってより人間にちかい表情がでるようになっています。
口笛吹き 1900年 フランス ファリボア作
口笛吹きはファリボアの広告塔として活躍したそうです。
肩で風を切り、ウィンクしながら口笛を吹きます。
ふいごとトロンボーンの原理を使用した笛をつかって、実際に口笛の音色を出していました。
シャボンと犬 1910年 フランス ドゥカン作
カップに入ったシャボンをストローにつけふくらませます。
ほんとうにふくらみました、そのシャボン玉にじゃれつく子犬、今も昔も変らない幼い子どもの遊びです。
ドリンキング・ベア 1890年 フランス ドゥカン作
お座りをしたくまは実際にボトルからカップに水を注ぎ、その後カップの水を飲みます。
カップに入った水はカップの底から左手、胴体、右手を通るチューブを通ってボトルへ戻る仕掛けになっています。
この写真は、オルゴールの小さな美術館所蔵のもので、同じ仕組みですが、私が見たのは、もうすこし茶色の濃い毛皮のくまでした。
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今日の写真も、最初のをのぞいて、「キド・リュージュコレクション ポストカードブック」、「骨董緑青Vol.33」からの転載です。
手廻しオルガン弾きとバードゲージは上海で、後のは京都で2回に分けて実際の動きを見せてもらいました。
最初のは、上海で見せてもらって、夢のあるストーリーで気に入ったのですが、ただぼ~と見ていて、資料もなく、制作年代も作者もわかりません。
スケッチもその場でしたのではなく、帰国して思い出しながらのものなので、下手な上にいいかげんなものですが、その場の雰囲気だけでもとアップしました。
おじいさんの上着の袖が手廻しオルガンを廻しているシーンでは、わざわざ横からよく見えるようにしてくださり、ほんとうに、私までが夢を見ているようでした。
ボトルの中の赤ワインはほんもの、当時のものが密封されているそうです。