当然の判決だと思う。
被告が全面否認のまま、「死刑」が求刑された裁判員裁判で、
市民から選ばれた裁判員は、検察の『証拠』の信頼性を疑問視し、
被告に「無罪判決」を下した。
裁判員裁判で無罪となった白浜被告(時事通信)
今回の結果は、市民の良識を反映すると言う裁判員裁判の目的に
合致した好例(判例)となるだろう。
これまでの職業裁判官による裁判では、弁護側の奮闘にも関わらず、
検察が有罪としたものは、99.99%有罪という裁判結果であった。
その背景として、警察・検察が提示する「証拠」は信頼性のある物
という、暗黙の了解があったからである。
しかし、大阪地検特増部事件(村木厚子さんに対する証拠捏造)で、
検察は、検察官が描いた『絵図』通りに捜査が進むように日常的に
「証拠をでっちあげてきた」疑いが濃厚となった訳である。
今回も、『指紋』・『DNA鑑定』など表面的な『物的証拠』は提示
されたが、その信用性が問われたようである。
白浜被告の弁護団=高齢夫婦殺害裁判(時事通信)
新聞(Web版)報道によれば、
弁護側は、【指紋などは偽装工作の可能性がある」として、検察側の立証について「合理的な疑いが残る」と批判していた。】 (朝日新聞)
と主張し、
【平島裁判長は「証拠を検討すると、検察官の主張を全面的に認めることはできない」と理由を述べた。】 (朝日新聞)
という。
【白浜政広被告(71)は、捜査段階から「現場には行っていない」と関与を否認し、被告人質問では、犯行日とされる当日の行動について「早朝に家を出て市内を散歩し、夕方に散歩を終えて車の中で仮眠した。午後10時ごろ家に戻った」と述べ、アリバイの存在を主張し】 (朝日新聞)
無罪であることを主張していた、という。
この取り調べでも「自白」を誘導することに重点が置かれていたようで、
【今回の事件では、自白などの犯行を直接結びつける証拠はないため、立証は間接証拠の積み重ねとなった。】 (朝日新聞)
という報道でも明らかであるが、一方で朝日新聞の上記の表現も
【自白 = 犯行を直接結びつける証拠】 という図式に拘泥しており
「自白証拠中心」の考え方のようにも見えて、危うい感じがする。
この判決を検察も受入れ、検察が恥の上塗りをすることのない事を望む!
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死刑求刑被告に無罪 鹿児島高齢夫婦強殺 裁判員裁判で初
西日本新聞 2010年12月10日(金)17:30
鹿児島市の高齢夫婦殺害事件で、強盗殺人と住居侵入の罪に問われ死刑を求刑された同市三和町、無職白浜政広被告(71)の裁判員裁判の判決公判が10日、鹿児島地裁であり、平島正道裁判長は「被告と事件を結び付ける直接的な客観的証拠はなく、犯人とは認められない」として無罪を言い渡した。裁判員裁判で死刑求刑の被告への無罪判決は初めて。裁判員裁判での無罪判決は千葉地裁での覚せい剤取締法違反事件に次ぎ2例目。
白浜被告は逮捕時から一貫して無罪を主張。事件の目撃証言や被告が犯人であることを示す直接的な証拠はなく、公判の最大の争点は、白浜被告が犯人かどうかだった。
検察側は室内のタンスなどから採取された指紋と掌紋11点と、侵入口とされる網戸から採取された細胞片のDNA型が被告と一致したなどとして「被告が犯人でなければ合理的な説明は不可能だ」と主張していた。
これに対し判決は、強盗目的とした検察側の主張をほぼ全面的に否定。室内に現金が残されていたことや、被害者を多数回にわたって殴った犯行状況から「怨恨(えんこん)による犯行とみるのが自然で、金品目的とは断定できない」と指摘した。
指紋、掌紋やDNAについては「被告のものだが、事件が発覚する以前に触ったと推認するにとどまる」とした。
一方、白浜被告が「被害者宅に行ったことは一度もない」と主張した点については「被告の供述は嘘(うそ)であるが、それでただちに犯人と認めることはできない」と述べた。加えて、凶器であるスコップから指紋が検出されていないことなどを挙げ「被告を犯人と認定することは、『疑わしきは被告人の利益に』という刑事裁判の鉄則に照らして許されない」と結論づけた。
事件は2009年6月19日早朝、鹿児島市下福元町の蔵ノ下忠さん=当時(91)=宅を訪ねた家族が忠さんと妻ハツエさん=同(87)=が死んでいるのを見つけて発覚した。
鹿児島県警は現場に残された指紋などが一致したとして、殺人容疑などで白浜被告を逮捕。鹿児島地検は強盗目的で被害者宅に侵入し、2人を殺害したとして強盗殺人などの罪で起訴した。
裁判は、裁判員の選任手続きから判決まで40日間、結審後に、裁判員と裁判官が有罪か無罪かを話し合う評議は14日間と、いずれも裁判員裁判としては最長だった。裁判員裁判では初めて被害者宅の現場検証もあった。裁判員は男性4人、女性2人が務めた。
=2010/12/10付 西日本新聞夕刊=
柔らかな口調で「無罪」、被告を見つめる裁判員 鹿児島(朝日新聞)
死刑求刑被告に無罪、鹿児島地裁 裁判員裁判で初(共同通信)
法廷に響く「無罪」 被告を見つめる裁判員 鹿児島(朝日新聞)
高齢夫婦殺害、被告に無罪=「検察側証拠、証明できず」―死刑求刑、裁判員裁判
時事通信 2010年12月10日(金)11:03
鹿児島市で昨年6月、高齢夫婦を強盗目的で殺害したとして、強盗殺人などの罪に問われた無職白浜政広被告(71)の裁判員裁判の判決で、鹿児島地裁(平島正道裁判長)は10日、「検察側が提示した証拠は全面的に証明できない」と述べ、無罪(求刑死刑)を言い渡した。死刑が求刑された裁判員裁判での無罪は初めて。
判決は「現場のたんすには金品が残されており、物色された形跡がない。被害者の顔を100回以上殴るなど、およそ強盗目的とはそぐわない」と指摘した。
公判では白浜被告に直接結び付く証拠がなく、現場の指紋と細胞片のDNA型が被告のものと一致した点をめぐり、検察と弁護側の評価が対立。結審から約3週間の評議で、裁判員は有罪か無罪か、有罪なら死刑の適否を決める難しい判断を迫られた。
裁判員裁判、死刑求刑被告に無罪判決 鹿児島老夫婦殺害
朝日新聞 2010年12月10日(金)10:45
鹿児島市で昨年6月、老夫婦を殺害したとして、強盗殺人罪などに問われた無職白浜政広被告(71)の裁判員裁判で、鹿児島地裁(平島正道裁判長)は10日、死刑の求刑に対し、無罪を言い渡した。平島裁判長は「証拠を検討すると、検察官の主張を全面的に認めることはできない」と理由を述べた。
被告は捜査段階から「現場には行っていない」と関与を否認し、無罪を主張していた。有罪か無罪かの認定に加え、有罪の場合は死刑の適否が争点で、裁判員がどう判断するかが注目されていた。
裁判員裁判としては、選任手続きから判決までが最長の40日間。無罪主張の被告への死刑求刑は初めてだった。
起訴状によると、白浜被告は昨年6月18日夕から翌朝にかけて、蔵ノ下忠さん(当時91)方に金品を奪う目的で侵入し、忠さんと妻ハツエさん(同87)の頭や顔をスコップで殴って殺害したとされる。
今回の事件では、自白などの犯行を直接結びつける証拠はないため、立証は間接証拠の積み重ねとなった。検察側は、侵入経路とされる網戸から採取された細胞片のDNA型や物色された整理ダンス付近の指紋などが被告のものと一致したとする点を挙げた。
そのうえで、最高裁が死刑選択が許される基準として示した「永山基準」に沿って「命を犠牲に金品を奪おうとした動機は厳しく非難される」「殺害方法が残虐」と指摘。遺族の強い処罰感情などを踏まえ、死刑を求刑した。
弁護側は現金や貴重品が現場に残り、スコップから被告のものと一致する指紋などが出ていないことから、「恨みを持つ別人の犯行」と反論。「指紋などは偽装工作の可能性がある」として、検察側の立証について「合理的な疑いが残る」と批判していた。
白浜被告は被告人質問で、犯行日とされる当日の行動について「早朝に家を出て市内を散歩し、夕方に散歩を終えて車の中で仮眠した。午後10時ごろ家に戻った」と述べ、アリバイの存在を主張した。
公判では、弁護側が検察側の多くの証拠に同意しなかったため、鹿児島県警の警察官ら計27人の証人が出廷。裁判員裁判としては初の現場検証も行われた。評議も最長の14日間だった。
これまでの裁判員裁判では死刑求刑が5件あり、4件が判決に至っていた。横浜、仙台、宮崎の各地裁(横浜と仙台は被告側が控訴)で死刑が言い渡された。東京地裁は無期懲役だった。
◇
〈鹿児島市の老夫婦殺害事件〉 2009年6月19日朝、鹿児島市下福元町の民家で、この家に住む蔵ノ下忠さん(当時91)と妻ハツエさん(同87)が頭から血を流して死亡しているのを訪れた三男が見つけた。タンスに物色の跡があり、現場から見つかった指紋などをもとに鹿児島県警は白浜政広被告(71)を殺人容疑などで逮捕。同年7月、鹿児島地検は強盗殺人と住居侵入罪で起訴した。
起訴状では、白浜被告は同年6月18日午後4時半ごろから19日午前6時ごろ、蔵ノ下さん方に金品を奪う目的で侵入。2人の頭や顔を金属製スコップ(長さ約94センチ、重さ約1.6キロ)で何度も殴り、脳挫傷などにより殺害した、とされていた。検察側は公判で、犯行推定時刻を18日午後7~9時ごろと説明した。