JUNSKY blog 2015

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日本の面影

2006-05-13 15:55:10 | 観劇レビュー
「共謀罪」など日本の政治の動きが中心となっていましたが、久々の観劇レビューです。

 連休中の5月7日(日)東京・紀伊国屋劇場で山田太一作「日本の面影」を見ました。 演出は木村光一氏。
 この劇は、最初NHKでテレビドラマとして制作され、ジョージ・チャキリス(あのウエストサイドストーリーの主役をやった)主演で放映されたそうです。
なぜ主役が外国人かというと、主人公がラフカディオ・ハーン(劇中ではヘルンさん:小泉八雲)だからなのです。

 演劇としては、1993年風間杜夫がこの役をやって、好評だったと言う。
今回は篠田三郎が主役をやっているが、この方の顔だちから外国人にはあっているようだ。

 ドラマの筋は、ラフカディオ・ヘルン(篠田三郎)が松江に中学校教師として赴任し、松江とそこの人々に惚れてしまい、その地の人々が心配するくらい当時の(1890年明治憲法発布の翌年)日本を理想化して愛してしまう。
 
 その地で身の回りの世話をしていたセツさん(日色ともゑ)と結婚。セツさんの儀父母や祖父を引き取り一緒に生活する。
 ここでストーリーとは離れて驚くのは当時の中学校教師の給金で、これだけの家族を養えたということ。いまの教師の給料ではとても考えられない!

 ヘルンは、当時の日本の「自然」とそれと共生する人々の生活習慣(米英では「自然」は消費するだけの対象であった)や、人々が貧しいながらも助け合いながら生きている有様に感動している。
 
 ところが、次に赴任した熊本では、折からの日清戦争前夜の時代背景も反映して、松江で見た日本のすばらしい習慣を捨てて“近代化・欧米化”を進める風潮が学校にも蔓延している。
 ヘルンは、「力(ちから)ノアル者ガ勝テバイインデスカ?」「力ノ無イ者ハ、ドウナリマスカ?」と問い、世の中の動きに危惧を呈している。

 このヘルンの声が、初演時よりも今回の方が観客の強い反応を引き起こしているところに、「演劇は、なまもの。時代を反映する。」と、出演者たちの共感を生んでいるようです。
 勝ち組・負け組み、格差社会がグローバル化(実際はアメリカの利益に日本をはじめ各国を従属させる思想)により引き起こされている、現代日本を色濃く反映したメッセージ性の強い舞台となっていました。

 この日は、閉幕後 山田太一、木村光一をはじめ出演者全員が舞台にもどり、観客(地人会の友の会員)との交流会が行われ、一時間に亘り、作家・演出家の談義や質疑・応答などが和やかに行われました。 


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