チハルだより

絵本・童話作家 北川チハル WEBSITE

おしらせ

童話・絵本テキスト教室「はるかぜ」受講生募集 原稿のご依頼 えほんのひろば

東京出張

2007-05-14 | Weblog



17日(木)から東京出張になります。
留守番のものはおりますが、
仕事部屋については留守電設定になります。
留守電メッセージ、ファックス、メール等は
21日(月)以降確認いたしますのでご了承ください。

なお、メールにつきましては、
あやまって迷惑メール対策システムに
自動的にふりわけされることがあります。
手動で確認しておりますが、
一度に作業する件数が多くなりますと
見落としがでることもありますので、
21日以降、しばらくたっても返信ないようでしたら、
お手数ですが再送信していただきますよう
よろしくお願いいたします。





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赤ちゃんパワー

2007-05-14 | エッセイ
 

 さきごろ、絵本『ふたごのあかちゃん』(ひさかたチャイルド)を上梓しました。登場するのは生まれたばかりの男女の双子。しゃべります。歩きます。真夜中の病院で大活躍するスーパーベイビーズ!です。この現実ばなれした赤ちゃんの話を書いたのは、私が現実に赤ちゃんを生み育て、その小さな体に秘められた大きな力にビックリしたことがきっかけです。
 はじめて子を授かったとき、妊娠悪阻で食事も水も喉を通らず、緊急入院することになりました。ミイラのようにやせ枯れていく私とうらはらに、豆粒ほどの赤ちゃんは元気に育ちつづけてくれました。母体の弱さに負けない命に、どれほど励まされたことでしょう。
 無事に誕生したその娘、なぜか生まれてすぐには泣きませんでした。彼女は静かに看護士さんに体をふかれ、銀色の月のように輝く無垢の瞳で私をじっと見つめていたのです。「ふうん、これがお母さんか」というような顔つきで。新しい命の神々しさに、赤ちゃんよりもさきに私のほうが泣きました。
 退院後はうってかわり激しく泣く娘でした。ほとんど昼寝をせず、泣き声で意思を伝え、要求し、不満を訴え、周囲の大人の生活どころか世の中さえひっくり返しそうな勢いでした。その一方で唐突に、「あはははは」と大人びた笑い方をしてみせたり、何の飾りもない壁に熱心に声をかけ、手足をぱたぱたふってみせたりするのです。
「赤ちゃんには、予想以上の特殊な力があるのかな」と眺めても、あどけないその姿に、まさかの疑問は、たちまち幸福感にかすみました。いえ、もしかして、彼女はこちらの心を見透かして、わざと赤ちゃんらしくふるまっていたのかもしれません。
 思えば、赤ちゃんの愛らしさと不思議さ(不可解さ、というべきか)にふりまわされ、そして救われた日々でした。かえりみて気づくのです。親が、この世に不慣れな赤ちゃんを、大切に守り育ててきたことは、結果的に赤ちゃんが、子育てに不慣れな親を守り育ててきたことでもあるのだな、と。
 とにもかくにも、赤ちゃんの未知なる力について、わくわく想像するうちに『ふたごのあかちゃん』はできました。はたこうしろう氏が、かわいらしい双子を愉快に描いてくださって、魅力的な赤ちゃんパワー全開です。各所の読み語りの会で、この絵本にふれた子が、「すっげぇ!」「赤ちゃんなのに、なんで?」と目を丸くするたび、私は心の中でつぶやきます。
 そうよ、赤ちゃんってすごいのよ。そしてだれもがみんな、偉大な赤ちゃんパワーをふりまいて、この世に生まれてきたんだよ。

■京都新聞 2007年5月8日 丹波ワイド版 口丹随想掲載

 

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