1/2慶応大学金子教授による政府のエネルギー基本計画に対するインタビュー文字起こしを引用します(転載OKの文章です)
-前半は省略-
で、そこで次に持ちだしてきたのが、燃料費の増加ってやつですね。経産省は原発停止による火力発電の焚き増しによって、2012年度に燃料費が3.1兆円増えたとしてるんですけど、ここでも計算のごまかしがあるんですね。
で、経産省は2010年から過去3年の原発の平均電力量っていうのを、発電量ですね、これが2748億キロワットなんですけど、泊3号機と大飯の3、4号機の発電量156億キロワットを差し引いた2592億キロワットを全て火力発電で代替したっていうふうにして計算して3.1兆(円増えた)って出してるんですね。
しかし、実際には節電や省エネが進んだことがあって、火力発電の焚き増し分は1827億キロワットに過ぎなかったわけです。つまり766億キロワットも焚き増しが水増しされた数字で計算してるわけです。
しかもその火力発電の内訳を見るとですね、燃料単価が高い石油火力が1206億キロワットも発電すると見積もられていたり、LNGガスですね、この価格が原油価格に連動する形の高い価格でそのまま計算されていて、もうこのLNGの調達先を分散すればかなり節約が可能な数字なんで、環境エネルギー政策研究所の試算によれば、燃料費の増加分は3.1兆円の半分の1.5兆円程度だっていうふうにしてるんです。でも、経産省は原発を再稼働させたいために、燃料費の増加を過大に見積もってると言わざるを得ないと、いうことだと思うんです。
アナ● 一方、原発のコストはどうですか?
金子■ 原発のコストもですね、今回の基本計画の場合でも、2011年の12月にコスト等検証委員会が出したキロワットアワーあたり8.9円という数字を使っているんですね。ちなみに石炭火力は9.4円で、LNGガス10.7円だと。
つまり原発が最も安いということなんですけど、これはモデルプラントを使って50基全部が動くことを前提にしたシミュレーションで試算したものなんですね。
で、何が抜けてるかというと、まず2兆円ほどかかる追加安全投資の分がはっきり全部入っていない。
それから、東京電力が自身が出している賠償除染費用が10兆円もあるんですけど、これも入っていないんですね、全部。
で、燃料費の1.5兆円とは比べられないくらい大きいわけです。で、それらが実際には発電の発電コスト、発電単価を押し上げているんですね。
で、さらに政府も原発依存を出来るだけ下げるとしているわけですけど、原発を40年で減価償却して、廃炉引当金を積む事になっているので、もし途中で廃炉にすると、原子力発電施設と核燃料の残存簿価ですね。減価償却が終わってない分ですけど。それから廃炉引当金の不足が生じて、特別損失として計上しなければいけないわけです。
で、現時点で50基全部を廃炉にすると4.4兆かかると言われているわけで、電力会社の経営を圧迫しちゃうんですね。それゆえ、電力会社は安全無視で原発を再稼働させたくなるわけですけど、再稼働する原発が少なければ少ないほど原発の発電単価は上昇する事になるわけです。つまり分母が小さくなるわけです。で、私が50基中28基をですね、廃炉にして安全投資10兆円の賠償除染費用を乗せて、他の廃炉費用も乗せていくと、政府のシミュレーション方式を使って試算しても、原発の発電単価はおよそ20円、キロワットアワーあたり20円近くとなる。つまり、火力の2倍になっちゃうと。もはやもう、原発の経済性は全くないと。
で、問題はですね、この経済産業省がですね、省令一本で廃炉費用を電力料金に乗せられるようにしたことなんですね。原発はもう不良債権なんで、その抜本処理が必要だと。その為にはもう電力会社に発電、原子力発電施設と核燃料の残存簿価分と廃炉引当の不足額に当たる株式新株を発行させて、それを政府が買い取って、原発を電力会社から切り離して、すでに事実上破綻している、日本原子力発電に集めると。つまり事実上の原発の国有化という抜本処理が必要なんだということだと思います。
-引用終わり-
発電コストのカラクリは以前から言われていることですが、ここで着目したいのは「原発の再稼働問題は電力会社の経営破綻回避の問題だ」という内容です。
つまり、このコスト説明の中に「再生エネルギー」という内容は出てこないのです。3年間待たずとも原発の代替エネルギーとなるのは火力発電でしかないと既に経産省も見切っているということです。
「脱原発を目指す」ということと「再生エネルギーの普及促進」ということは、当面は違うステージではないか、と考えています。
しかしながら、再生エネルギー普及のスピードを上げるための議論はとても重要です。
-前半は省略-
で、そこで次に持ちだしてきたのが、燃料費の増加ってやつですね。経産省は原発停止による火力発電の焚き増しによって、2012年度に燃料費が3.1兆円増えたとしてるんですけど、ここでも計算のごまかしがあるんですね。
で、経産省は2010年から過去3年の原発の平均電力量っていうのを、発電量ですね、これが2748億キロワットなんですけど、泊3号機と大飯の3、4号機の発電量156億キロワットを差し引いた2592億キロワットを全て火力発電で代替したっていうふうにして計算して3.1兆(円増えた)って出してるんですね。
しかし、実際には節電や省エネが進んだことがあって、火力発電の焚き増し分は1827億キロワットに過ぎなかったわけです。つまり766億キロワットも焚き増しが水増しされた数字で計算してるわけです。
しかもその火力発電の内訳を見るとですね、燃料単価が高い石油火力が1206億キロワットも発電すると見積もられていたり、LNGガスですね、この価格が原油価格に連動する形の高い価格でそのまま計算されていて、もうこのLNGの調達先を分散すればかなり節約が可能な数字なんで、環境エネルギー政策研究所の試算によれば、燃料費の増加分は3.1兆円の半分の1.5兆円程度だっていうふうにしてるんです。でも、経産省は原発を再稼働させたいために、燃料費の増加を過大に見積もってると言わざるを得ないと、いうことだと思うんです。
アナ● 一方、原発のコストはどうですか?
金子■ 原発のコストもですね、今回の基本計画の場合でも、2011年の12月にコスト等検証委員会が出したキロワットアワーあたり8.9円という数字を使っているんですね。ちなみに石炭火力は9.4円で、LNGガス10.7円だと。
つまり原発が最も安いということなんですけど、これはモデルプラントを使って50基全部が動くことを前提にしたシミュレーションで試算したものなんですね。
で、何が抜けてるかというと、まず2兆円ほどかかる追加安全投資の分がはっきり全部入っていない。
それから、東京電力が自身が出している賠償除染費用が10兆円もあるんですけど、これも入っていないんですね、全部。
で、燃料費の1.5兆円とは比べられないくらい大きいわけです。で、それらが実際には発電の発電コスト、発電単価を押し上げているんですね。
で、さらに政府も原発依存を出来るだけ下げるとしているわけですけど、原発を40年で減価償却して、廃炉引当金を積む事になっているので、もし途中で廃炉にすると、原子力発電施設と核燃料の残存簿価ですね。減価償却が終わってない分ですけど。それから廃炉引当金の不足が生じて、特別損失として計上しなければいけないわけです。
で、現時点で50基全部を廃炉にすると4.4兆かかると言われているわけで、電力会社の経営を圧迫しちゃうんですね。それゆえ、電力会社は安全無視で原発を再稼働させたくなるわけですけど、再稼働する原発が少なければ少ないほど原発の発電単価は上昇する事になるわけです。つまり分母が小さくなるわけです。で、私が50基中28基をですね、廃炉にして安全投資10兆円の賠償除染費用を乗せて、他の廃炉費用も乗せていくと、政府のシミュレーション方式を使って試算しても、原発の発電単価はおよそ20円、キロワットアワーあたり20円近くとなる。つまり、火力の2倍になっちゃうと。もはやもう、原発の経済性は全くないと。
で、問題はですね、この経済産業省がですね、省令一本で廃炉費用を電力料金に乗せられるようにしたことなんですね。原発はもう不良債権なんで、その抜本処理が必要だと。その為にはもう電力会社に発電、原子力発電施設と核燃料の残存簿価分と廃炉引当の不足額に当たる株式新株を発行させて、それを政府が買い取って、原発を電力会社から切り離して、すでに事実上破綻している、日本原子力発電に集めると。つまり事実上の原発の国有化という抜本処理が必要なんだということだと思います。
-引用終わり-
発電コストのカラクリは以前から言われていることですが、ここで着目したいのは「原発の再稼働問題は電力会社の経営破綻回避の問題だ」という内容です。
つまり、このコスト説明の中に「再生エネルギー」という内容は出てこないのです。3年間待たずとも原発の代替エネルギーとなるのは火力発電でしかないと既に経産省も見切っているということです。
「脱原発を目指す」ということと「再生エネルギーの普及促進」ということは、当面は違うステージではないか、と考えています。
しかしながら、再生エネルギー普及のスピードを上げるための議論はとても重要です。