日常の 些事に惑いながら
とある都市の 私の小さな小さな
城の一室へ帰りを急ぐ
神田に一万円握り締めて行き
二千円で購入した『魯迅選集』全十三冊
文字たちよ
そして魯迅先生は何とおっしゃったのか
(書物を読み書物に読まれ)
荘厳な一日がどっぷり暮れてゆく
『狂人日記』『阿Q正伝』
文章の隅々から
義憤の感性が染み出て
私は千九百三十年代
あの動乱の中国にいる様だ
魯迅先生
ペンの力で過去の因習の蹉跌をブッタ切りたかった
激しい怒りの感情が文章の端端に漲る
そこには烈風に一人立つ『文士』がいる
ペンの力で意識改革を促し
ペンの力を信じ切った『文士』がいる
書物を読み書物に読まれ・・・
夕餉の電気釜が蒸気を噴き
小さな城は食卓の様相
もうすぐ日が暮れる
二度と来ない今日が暮れて
そして 書物に酔い リフレインに