ウォーホール左派

今日も作詩、明日もまた、本格詩人のブログ。

転生

2016-07-13 21:40:05 | Weblog
転生

爽やかな空気を深める秋に
ひっそりとした山村で
柿の実が色づく

廃校となった
村の分校
その窓の隙間から
密かなコーラスの声を
幻の中 聴いて

この村の道を辿る時
重ねる転生は
熟すだけ熟して

江戸時代末期に
私は郷愁の漢詩を書き散らし

道端の道祖神に
軽く一礼を済ませて
燃えるような彼岸花を見送ると

開けた場所で
漁港の防波堤に座り
持参したジョイスの
「若き芸術家の肖像」の一文を
無造作に選び出す

時空を飛翔して
アイルランド文藝復興運動の波に酔う
校庭に響き舞う作家たちの息吹

19歳の思春期に砂漠に降り立つように
何の当てもなく
ジョイスを読んでいたあの日々…