『モモ』「灰色の男たち」より
だからもうたのしいお祭りであれ、厳粛な祭典であれ、
ほんとうのお祭りはできなくなりました。夢を見るなど、
ほとんど犯罪です。けれど彼らが一番耐えがたく思うように
なったのは、しずけさでした。彼らは自分たちの生活がどう
なってしまったのかを感じとっていましたから、しずかにな
ると不安でたまらないのです。ですから、しずけさがやって
来そうになると、そうぞうしい音を立てます。<中略>きち
がいじみた、ふゆかいな騒音です。この騒音は日ごとにはげし
くなって、大都会にあふれるようになりました。