ウォーホール左派

今日も作詩、明日もまた、本格詩人のブログ。

転生

2016-01-16 12:37:15 | Weblog
爽やかな空気を深める秋に
ひっそりとした山村で
柿の実が色づく

廃校となった
村の分校
その窓の隙間から
密かなコーラスの声を
幻の中 聴いて

この村の道を辿る時
重ねる転生は
熟すだけ熟して

江戸時代末期に
私は郷愁の漢詩を書き散らし

道端の道祖神に
軽く一礼を済ませて
燃えるような彼岸花を見送ると

開けた場所で
持参したジョイスの
「若き芸術家の肖像」の一文を
無造作に選び出す

時空を飛翔して
アイルランド文藝復興運動の波に酔う
校庭に響き舞う作家たちの息吹

19歳の思春期に砂漠に降り立つように
何の当てもなく
ジョイスを読んでいたあの日々…

前世の秋の日は
柿のように色づいて
革命を標榜した

我よ!
200年の時を隔てて
この世へ再び受胎した我は

文学を志す
はち切れんばかりの青年を
演じている


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