新河鹿沢通信   

暮らしの中から 村の歴史 足跡 集落 跳躍  麓風小舎     

オニノヤガラ(鬼の矢柄)

2013年07月11日 | 地域の山野草
今年も「オニノヤガラ」(鬼の矢柄)が顔を出した。
「オニノヤガラ」腐生植物であり、光合成を行わず葉緑素を持たない。地下の塊茎は長さ10cm前後の楕円形で、表面には多くの節がある。茎は直立し、帯黄褐色で、高さは40-100cmになり、円柱状の茎に膜質の鱗片葉をまばらにつける。きのこのナラタケと共生しているといわれている。花期は6-7月で、黄褐色の花を茎の先端に20-50個総状につけ、下方から開花していく。花は3萼片(外花被片)が合着して壷状になり、中に2個の側花弁と卵状長楕円形の唇弁がある。

生きているものから養分をとって生きる植物は寄生植物といい、死んだもの、腐ったものから栄養をとつて生きる植物を腐生植物という。「きのこ」のナラタケと共生し、この菌糸を通して養分を取り入れていると云う。

2012.07.04 開花 湯沢市川連町外坪漆

「オニノヤガラ」が我家の山林に生えるのを知ったのは、ここ10年ほど前からだ。一般的に雑木林に生えるというが、自宅のは杉の林だ。それまでは田圃や山林の山野草にそれほどの関心はなかった。この場所は平成4年と17年に、雄勝地方森林組合に委託して間伐作業をしてもらった。それまでの杉林は密生し薄暗いほどだったが、間伐作業を通して杉の林に陽があたるようになり、様々な山野草が見られるようになった。ヤマユリ、クルマユリ、ホウチャクソウ、イカリソウ等。その中に「オニノヤガラ」があった。初めて見たときは少なからずビックリした。異様な姿だったからだ。自宅の山林も特定の場所でしか確認されない。集落の一番近い林道の側に生える。

鬼の矢柄、学名:Gastrodia elata )は、ラン科オニノヤガラ属の多年草。ラン科とされるが、一般的な蘭とは全く違う。茎を矢に見立て鬼の名を冠につけたこの植物は珍しい部類に入る。

先日、集落で林道の草刈りが集落総出で行われたが、多くの人はこの「オニノヤガラ」に関心を示さない。もちろん名前もしらない。自分の知る限り集落を象徴する鍋釣山や、内沢方面では見たことがない。カシカ沢周辺の限られた範囲でせいぜい500㎡位の場所だ。今年の発生はいつもより遅めだった。旱魃も影響したのだろうか。昨日の観察で「オニノヤガラ」の花は終っていた。

2013.06.24 開花前 湯沢市川連町外坪漆

光合成をせず、葉緑素を持たないのは前回ブログの「ギンリョウソウ」と似た所もあるが、その姿はまるで違う。「オニノヤガラ」はきのこのナラタケと共生するといわれるが、ナラタケは「きのこ」ではどこにでも生え、特に珍しいきのこではない。このきのこ、ナラタケを地元では「サワモダシ」と云う。「サワモダシ」の範囲は意外と広い。かといって「サワモダシ」が多いと言っても「オニノヤガラ」が多いわけではないようだ。「ナラタケ」菌と何か別の要素が加わってこの「オニノヤガラ」は発生することになる。

「オニノヤガラ」について下記の記事があったので引用する。

『用途の広い植物で、高価な漢方薬にもなり、目まいや、中風による半身不随などに効き目がある。これまでは、野生のものを採集して薬用に供してきた。以前、これを栽培しようとした人もいるにはいたが、みなうまくいかなかった。この植物が「いつのまにか消えてなくなる」といわれていたのは、その栽培がたいへんむずかしかったからだ。そこで、「仙人の足」などという摩訶(か)不思議な名前で呼ばれるようになったわけである。プロレタリア文化大革命のなかで、われわれは「中国の医学と薬学は偉大な宝庫であり、その発掘と向上につとめるベきである」という毛主席の教え』
(http://www.sinoperi.com/beijingreview/Articles-Details.aspx?id=10709&lang=JN)北京周報 

「仙人の足」という名。奥が深い。「ギンリョウソウ」も一部の蘭も、他の菌と共生するといわれる。共生する植物は栽培が難しとされる。「オニノヤガラ」は秋田では準絶滅危惧種に指定されている。