武雄市で今回のヒッグス粒子発見に大きく貢献した、九大の理学研究院 川越清以先生が講演した。
ヨーロッパは自力で量子衝突器を作ろうとしたができなかった。磁力加速を行うため精密なコイルが必要なのだが上手に巻けないでいた。そこで目をつけたのが日本の中小企業だ。彼らは工夫に工夫を重ね食器洗い機まで動員してきれいな銅線を巻こうと苦心惨憺する。0.8㎜φに6000本、500兆回の荷電に耐えた。
テレビのうしろにあるフライバックトランスさえ満足に巻けなくて子供の糸巻きごっこのようなお粗末トランスを見てとても悲しい思いに沈んだのが昨日のようだ。
紆余曲折の果て量子は衝突した。このとき1兆回に5回ほどヒッグス崩壊が確認された。ただ、これほど小さくなるとF=MAにより質量と力は同一のものであることが実験結果に影響してくる。ΔXΔP>h/4π(不確定性理論)よりPはエネルギーであるが質量と同義である。すると位置Xをつかもうとすると質量は巨大になり測定に失敗する。
それによりヒッグスの測定を困難ににしている。ところが理論物理学者ヒッグズさんは、ヒッグズ粒子の出るパターンを5パターンに限られると予言していた。これはちょうどウランの崩壊のパターンが幾通りもあるのと似ている。
彼の示した5パターンは実験屋の寿命をどれほど延ばしたことだろう。
かなりの確率で新しい粒子の存在が確認された。川越先生には悪いが、いったん見つかったモノの成果を世間に広めるため不必要に検証を多く行っている。この勢いでリニアコライダーを作ろうという勢いだ。
賛成だ。
少し問題点を感じる。ヒッグスの5崩壊のうち実証されたのは2崩壊だけだ。50年前の崩壊理論を基礎として実験をした。はたしてヒッグスの中には粒子はないのか。標準理論の究極の姿ではあるが、はたして宇宙のほんの一部の姿を発見しただけで量子論を積み上げていいのか。
今ある量子の姿が本当に最終形態ならリニアコライダーで電子と陽電子をぶつける必要はない。
光よりも早いニュートリノの時のようにあまり浮かれるとよろしくない。川越先生の誠実なお人柄に感銘を受けた。僕に説明してもまったくなんの役にも立たないのに熱心に説明していただいた。頭のいい人と話すと絶対に論点がずれない。ユーモアがあり誠実だ。
ノーベル賞をとった小林先生は毎年一本の論文を書いている。ある女子高校生が質問した。
「そんなに論文を書いてもし間違っていたらと思うと怖くないですか?」
先生は言った。
「僕はいつも間違えている。だから一つや二つの間違いは怖くない。みんながどんどん間違えるから科学は発展するんだ。」