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文在寅が野党指導者だったころ、彼はソウルの安国にあった日本大使館を訪ねたことがある。
そのころソウルに住んでいたぼくは書記官からそのときの様子を聞いた。日本の外交官の特徴は、自己保身が行動基準の鉄則で、まさに Silence is Golden なのだ。むかしは、2等、3等の若い書記官の中には希望に燃えた人がいたが今は減った。
能力のある人はたいてい口数が多く、論破された多くの無能から反感を買っている。しかし、一般の会社の中でもそうであるように、組織は能力よりも従順さを重視する。
これじゃあやってられないということで、たいていいい年になると分析力のある人は外務省を去る。
そこで役所の中には身を賭して国益を守るという気合の入った輩はいなくなる。
一方で、韓国大使館でヘタに議論を吹っ掛けると、理屈も屁理屈も混ぜ込んでとにかくこちらを論破しようとする。日本大使館でそれをやると、いつもの日本人得意の意味不明な笑顔で議論を避ける。
この違いが重要なのだ。
日本は、韓国が今回の日本の措置に対して国際世論に言いつけ外交を展開していることを軽視している。「特恵をやめた」のだから日本の国内問題であり筋違いな韓国の言いふらし、言いつけ外交は問題にしない、というのが日本のスタンスだ。
それでは負けるのだ。100%正義は日本にある、韓国を信頼しない、と言い切る安部は勘違いをしている。国際世論は正義につくのではない。「情」と「カネ」につくのである。
どう見ても大国が分断国家に対し傲慢な態度に出ている構図であり、一国の宰相が他国に対し信頼しないと言い切ることは宣戦布告につながるものだ。
今や複合大企業に飲み込まれさらに勢いを増し政、産、軍、学、は混とん一体の支配層を形成している。アメリカのことだ。自国のIT産業に負の影響が生じる事態になったら、日本の島国正義など一顧だにされない。
文在寅は信念の人だ。彼の青春は、留置所で拷問が当たり前の時代だった。KCIAは、誘拐、殺人、拷問、廃人化、なんでもできた。彼が留置所にいたころ韓国の国家権力は日本の保守層と蜜月時代だった。韓国の軍事政権は日本の自民党政権と癒着体制であったから、文在寅にとっては日本は自国政権と同様に不倶戴天の敵だったのである。
韓国はあらゆる方法を使ってなりふり構わず反日行動を続ける。文在寅にとっては、反日行動も軍事政権闘争も絶対正義なのである。なぜならその考えを貫くことで韓国は民主化したのだから。
この考えは単に彼一人にとどまらず政権に浸透している。文在寅一人の狂乱に事を矮小化して自己満足しようという能天気がいるが、頭が悪い。
「奉陪到底」という言葉を学んだ。そっちがその気なら地獄の底まで付き合ってやるぞ、という意味だ。日本のお坊ちゃま外交官にはこの気合はない。こそこそフッ化水素は安全保障の問題で国際紛争の議題たりえないという自慰的屁理屈に対しては国際世論が同意しない。通用しない。
最初に書いた野党時代の文在寅だが、応対に出た書記官がこう言っている。
通常、韓国人は、反日と親日の間で揺れている。ところが文在寅の話を聞くと、いままでの誰とも違うすさまじく背筋が寒くなるほどの冷徹な反日思想を感じた。