今年のお題は「人」。毎年絶妙なお題が選ばれる。その中でも天皇の姿勢は一貫している。
すばらしいことだ。なかなか違ったお題で、同じテーマについて歌うことは困難だ。
(イオンはまだクリスマスかな。)
天皇陛下
戦いにあまたの人の失せしとふ島緑にて海に横たふ
(戦いがあって多くの人が命をなくしたと言う、島は緑色をして海に横たわっている)
右翼たちは自分では歌の解釈もできぬくせに僕が解釈をつけるとヒキツケを起こすのだろう。恐れ多くも御製の歌に対して解説を加えるとは不敬罪だと。
天皇は行事のときはともかく、プライベートではじつにフランクな人だそうだ。もう少し行事を減らさないとかわいそうだと思う。もはや神ではない。老人には負担が多すぎると思うがどうかな、宮内庁。おまいらが平成を早く終わらせたら承知しないやつらが多いと思うぞ。
僕らは白黒の世界で実写フィルムを見ているが、南洋に行けばまずその世界のどぎつい色に驚く。そして、この色こそ当時の若者が最後に見た世界だ。
まかり間違えばこのどぎつい世界で若者が死ぬ、と天皇の歌は警告しているように見た。
天皇はいつも静かに警告している。
皇后さま
夕茜に入りゆく一機、若き日の吾がごとく行く旅人やある
(夕焼け空の中に飛行機が一機若い頃の私のように旅立つ人がいるのだろうか、いいや)
皇族のほとんどが「人」と言うお題を他人事のように捕らえている。皇后様は「人」を自分ととらえ詠んでいるので、とても迫力のある歌になった。彼女は天皇との結婚に決心がつかず一人ヨーロッパへ旅立った。夕焼け空の飛行機にそのときを思い出した。
後の皇族は幼稚な歌だ。小学生の遠足の感想文か。
もう後がない人間は、日常のほんのちょっとした出来事も自分の昔と重ねるものだ。そうして似たような想い出を重ねる者同士、共感を共有する。
それが歌の広がりだ。
新潟県 内山遼太さん
日焼けした背中の色がさめる頃友達四人の距離変化する
全部書ききれないので若者の歌をひとつ紹介した。国民も深い情の世界は負けていない。日本人だ。
(ドラゴンフルーツはうまい)