けいた と おちぇの親方日記

わんこと暮らす、のんびり日記

小説「海岸列車(上・下)」(宮本輝著)

2015-06-20 12:00:00 | 書籍(小説)
宮本輝さんの「海岸列車(上・下)」を読んだ。

本作の題名は、山陰本線・城崎駅から鎧駅まで、
海岸沿いをいくつものトンネルを抜けて走る、
列車に因んだもの。



内容は、ひと言で言えば、
手塚夏彦とかおり兄妹の成長物語である。

“鎧”という山陰本線の無人駅。
そこには、自分たちを捨てた母がいる(らしい)。

父の死後、ふたりは伯父に引き取られ、大人になる。
そして、伯父が経営する“モス・クラブ”という
会社で働き始める。

夏彦は金持ち夫人の紐のような生活を、
一方、かおりは伯父の後を継ぐために奔走する。

そんな時、かおりの目の前に、
国際弁護士の戸倉陸離が現れるのであった。
(戸倉は心臓病を抱えた妻と娘がいる)

夏彦と未亡人・高木澄子との関係、
かおりと戸倉との関係が複雑に進みつつ、
物語は思わぬ方向に。

宮本さんの作品はやはりいい。
文章は綺麗で読みやすく、共感できることが多い。

本作品では、魅力的な女性・かおりが戸倉を慕う。

誰でも素敵な若い女性に慕われたら、嬉しいだろう。
そして、不倫関係に・・・といかないのである。
このふたりの関係が今時はないものとなっている。

こういったところが宮本さんの作品のいいところである。
あとがきで宮本さんは次のように言っている。

(略)もうひとつの作者の“つもり”は、
 昨今の男女の、下半身のだらしなさに対して、
 少々腹を立ててみたいという点だった。
 誰がはやらせたかは知らないが、
 家庭を持ついい歳をした連中が、
 まるでひとつのファッションであるかのように
 不倫とやらに走って、いい気分にひたっている。
 
 私は、そのての軽い小説を目にするたびに、
 鼻先であざ笑いつつ、
 「不倫てのは、命懸けでやるもんだ」と、
 時代にはずれた老人みたいにぶつくさ言ってきた。

 トルストイにせよ、ロレンスにせよ、
 チェーホフにせよ、近松にせよ、
 彼等の創造した不倫は、なまやさしいものではなかった。
 つまるところ、命懸けだったのである。

 私にとって、作中で、
 戸倉とかおりに肉体の関係を結ばせることなど、
 朝めし前のやり口である。小説は、そのほうがらくに書ける。

 しかし、真剣に生きているまっとうな妻子ある男が、
 そう簡単に、
 まっとうな若い娘と深い関係を結ぶわけにはいかない。
 私は決して道徳論者でもなく倫理主義者でもない。
 だが、人間には“幾つかの大切な振る舞い”があると
 考えているにすぎない。

 だから、“人間の依りどころ”と“振る舞い”をレールとして、
 「海岸列車」を最後まで走りつづけさせることになった。

そのとおりであると思う。

では、ここからはお口直し。ある夜のおかんとおちぇ。



目やにをとる、おかん。



眠くなる、おちぇ。



少々考え込んで。



考えているうちに寝ちゃった。



この手のかけ方がなんとも可愛い。



おちぇ、何歳?



今度、7歳になるとは思えない。
おちぇは、いつもいつも可愛いね。
コメント
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