ここまで事件の概要の話が続いたので、個々の「UFO」接触者に関しての情報を見ていこう。
一番最初に謎の物体を見たのは、イギリスにあるウッドブリッジ空軍基地(駐留米軍)の警備兵だ。
今回これから紹介する状況は、ホルト中佐の報告書の第1番目に書かれている事の詳細である。
その前に、もう一度ホルトメモの第1章を見てみよう。
1.
1980年12月27日早朝(午前3時頃)、アメリカ空軍の警備兵二人がウッドブリッジ空軍基地の裏門の外に、異常な光をいくつか目撃した。
航空機の墜落か不時着と思った二人は、調査のため裏門を出る許可を求めた。
当直の司令官は、三名の警備兵に徒歩で偵察に向かうことを許した。
彼らは、森のなかで奇妙な光体を一つ見たと報告してきた。表面は金属のようで、形は三角形、直径は二~三メートル、高さは約二メートル。
森全体を白い光線で照らしていた。上端は赤く、下端は青く光っていた。その物体は浮かんだり、着陸脚で立っていたりした。
接近してみると、物体は樹木のあいだを進路変更して姿を消した。
同時刻に近くの農家の家畜が何頭も狂乱状態になった。
物体は約一時間後に裏門近くで目撃された。
この報告書のくだりはひじょうに簡潔な文面となっており、詳細が判らない。
しかし、退役した当時の警備兵たちが徐々に口を開いており、この時の状況がどのようなものであったのかが、近年明らかになってきた。
アメリカのドキュメンタリー専門チャンネル、「ヒストリーチャンネル」では、これらの将兵に聞き取りを行い、「イギリスのロズウェル事件」として番組で紹介している。
以下、事件の詳細・証言はその番組からの抜粋であることをあらかじめことわっておく。
二人の証言が真実なのかどうかは、当事者二人にしか判らない事である。
真実なのであれば、二人が見たものを合理的に説明出来る人間はいないであろう。
事件が公文書で報告されている以上、事件当夜「何か」が起こったのは間違いのないところではあるが、また、他の天体からの訪問者が来る確率が、この宇宙という想像も出来ないようなスケールから考えた場合、限りなくゼロに近い事を考えると、まったく理解に苦しむのである。
この事件に関しては、様々な否定論が出た。
人工衛星の墜落・・・灯台の見間違い・・・流れ星・・・
それらがこの状況にあてはまるか、考えてほしい。
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深夜、ジャック・バローズは底冷えのする基地東ゲートで警備の任にあたっていた。
そこへ、上官のスティーブンス軍曹がピックアップトラックでやってきた。
「ちょっとその辺を走ろうぜ」。
バローズはピックアップに乗り込み、退屈しのぎに丁度良い、と思った。
車は走りだした。
東ゲートからの道は、森の中を通る。
しばらくすると突然、茂みの方を見て「何だあれは?」とスティーブンスが言った。
バローズが目をやると、怪しい光が森に降下してゆくのが見えた。
嫌な予感がした。
クリスマスのイルミネーションのように、様々な色が点滅していたのだ。
二人は急いで東ゲートへ戻ると、飛行指令室に電話をかけた。
無線では大勢に聴かれてしまう危険があるので、バローズはCSC(中央保安指令部)に電話を転送するよう、依頼したという。
当日の当直士官は、ペニストン軍曹(当時26歳)を現場に急行させた。
ペニストンは軍歴7年の野戦憲兵(MP)である。
ペニストンは、当夜の状況をこう証言した。
「問題が起きたので、東門に行くよう、命じられました。どんな問題か質すと、それは現場の警備兵が説明すると言われました。緊急ですか、と聞くと、今すぐ行けと言われました。」
ペニストンは数分で東ゲートに到着すると、バローズとスティーブンスは後方の森を指差した。
「200~300m先の森の中に、黄色や赤などが混じった光が見えたので、すぐに航空機が墜落したのだと思いました。それは、チタンや燃料が燃えるときの色とよく似ていたのです。」
中央保安指令部に状況を報告したペニストンは、上官の指示を待った。
「航空機の墜落なら、救助に向かい、周辺を警備するよう命じられました。」
ペニストンは憲兵の職務として、スティーブンス軍曹から話を聞いた。
「墜落する音が聞こえたか、と聞くと、墜落ではなく着陸したというのです。」
あまりに恐ろしいものを見た恐怖から、スティーブンス軍曹は自分の持ち場に逃げ帰ってしまった。
そのため、その「着陸現場」には、ペニストンとバローズが行く事になった。
森の中を、クルマで入っていけるところまで行き、途中から徒歩で森に入った。
森に入ってゆくと、トランシーバーに雑音が混じってきた。
バローズはその時の事をこう話す。
「どんどん森の奥に入ってゆくと益々電波状況が悪くなり、通信が困難になりました。」
突如、ペニストンは異様な空気を感じた。
「以前にも任務遂行中に、何度もこういうアドレナリンが噴き出すような状況に遭遇していましたが、この時の感覚は別格でした。身体全部で何かを感じたのです。」
光に近づくほど、その現場の状況は墜落事故とは異なっていた。
「煙も、破壊の爪痕もありませんでした。ただ、丸い光があったんです。」
バローズは言う。
「開けた場所に到達すると、目がくらむような光が辺りを照らし出していました。」
ペニストンが物体まで3mくらいのところまで来たとき光は弱まったが、彼にはこの物体が何なのか、見当もつかなかった。
「私は合理的にものを考えるタイプの人間なので、納得のゆく回答を探しましたが、ダメでした。」
ペニストンは携帯している軍用のカメラで写真を撮った。
「形状は3角形で、大きさは幅2.7m、高さ2.4mくらいで、機体の前後の区別はつきませんでした。エンジンや操縦席のようなものが無かったからです。また、表面はとてもスベスベしていました。」
ペニストンは、物体の特徴をメモ帳に書き記した。
「『表面の材質・・・不明、国籍・・・不明、着陸装置見当たらず。音はしていないが機能は維持しているようだ』。」
物体に近づくほど、ペニストンの筆跡はグニャグニャに乱れていった。
物体からの作用か、異常に興奮した状態だったためかは判らない。
「どんな種類の飛行物体なのか、まったく判りませんでした。『不明』という言葉を繰り返すだけで、物体が何なのか理解に苦しんでいたのです。」
更に近づき、手を伸ばし触ってみたという。
「材質はガラスのようで、滑らかでした。暖かく感じましたが熱いわけではなく、熱源は物体の中から出ているようでした。」
ふと、ペニストンは物体の表面に奇妙なシンボルが描かれている事に気づき、これもノートに記録した。
「何かの記号のようでしたが、数字とも文字とも違いました。全部で6つほど、横幅90cm程度の範囲に描かれていたのですが、専門家ではないのでよく判りません。」
その時、ふいに物体から強い閃光が発せられ、ふたりは物陰に身を隠した。
バローズは言う。
「謎の物体はスーッと宙に浮くと、木々の上まで上昇していきました。」
ペニストンもこの状況を見ていた。
「そこから浮き上がって飛び去った時のスピードといったら、正に瞬きした瞬間に消えたも同然でした。あれほど早い航空機を見た事はありませんし、これからも無いでしょう。」
ゆっくり立ち上がった二人は、別の光にギョッとした。
最初は、例の物体かと思ったが、すぐに8km先にあるオーフォードネス灯台の灯りである事に気付いた。
無線機が正常な状態に戻っていた。
時間は5:00。謎の光を見てから2時間が経過していた。
無線で中央保安指令部に状況を報告すると、東ゲートで警備部隊と合流するよう命じられた。
バローズは、今見てきた事をどう説明すればよいのか戸惑っていた。
二人は本部に出頭したが、ペニストンは包み隠さず報告する事に躊躇した。
「ありのままを話すのは賢明ではないと思いました。そこで、バローズと共に当直士官のもとへ行くと、昨夜の出来事について当たり障りのない報告をしたのです。」
それでも当直士官は、二人に露骨な警告を発したという。
「諸君。プロジェクト・ブルーブックは1969年に終了している。あまり事を荒立てないように・・・!いいな!」
(続く)