カズTの城を行く

身近な城からちょっと遠くの城まで写真を撮りながら・・・

『戦国に散る花びら』  第十五話  悲しき死

2008-10-23 21:31:42 | Weblog
愛美は、食欲も戻り元気になっていた。
「さゆみ、心配かけてごめんね。」
「いいのよ、愛美がいなくなったら、こんな時代で何を頼りに生きていけばいいのか、私だって途方に暮れちゃうもん。」
「ねえ、ここに桜を植えてみない。・・・この時代に花見ってないかもしれないけど、皆が集まれる場所にしようよ。」
「そうね、レジャーランドもないし、テレビも、ゲームも無いからけっこう暇よね。シーズンにはお殿様を招待したりして、ふふ。」
愛美とさゆみは、縁側から庭を眺めながら話をしていた。そんな現代っ子の二人の小袖姿も様になってきていた。
「愛美様、少しお休みになった方がよろしいかと・・・。」
茂助が二人の所へやって来て言った。
「まだ大丈夫よ、心配しないで・・・。」
「しかしお屋形様から、留守中愛美様のことを気にかけるように言われておりますので・・。」
「そうよ愛美さん、茂助さんの言う通りにしてあげなさい。無理して倒れたら、慶大さんが悲しむわよ。」
茂助の後ろから久留美が茂助のサポートをした。
「久留美さんに言われたらしかたないわ、少し休むことにする。」
「そうね、私も渡名部さんに、愛美のことしっかり見守ってるように言われてるから、休んでちょうだい。」
そう言って、さゆみは立ち上がった。
「はーい、わかりました。」
皆の要望通りに愛美は、部屋に戻って横になった。

さゆみは縁側に残り、茂助を呼び止めた。
「ねえ、茂助さん。」
「何でしょう、さゆみ様。」
「この辺りに桜の木ってないですか?」
「桜ですか?・・・山の方に行けば少しありますけど、今は花が咲く季節ではありませんよ。」
茂助は丁寧に答えた。
「愛美がね、この庭に桜を植えたいんだって。・・だから苗木でいいから何処かにないかと思って・・・。」
「そうですか、では探して参ります。」
「じゃ、先に桜の木がある所を探して来て下さい。で、明日にでも愛美も一緒に連れて行って掘ってきましょ。たまには愛美にも体を動かさせないと丈夫にならないわよ。・・子作りしなきゃいけないでしょ。」
「そうですね。じゃ、下見してきます。」
「お願いします。」
茂助は、屋敷を出て山に向かった。
・・・そんな茂助の行動を塀の陰から見ている男がいた。



「久しぶりの出陣だな。」
「ええ、そうなんですけど・・・渡名部さん。」
「どうしたんだ大将・・・。」
「やめて下さい、大将なんて・・・。いえ、鷹天神城と言えば相当な難航不落の山城ですよ。落ちたとしても長引きそうです・・・。」
三津林と渡名部は、城で出陣の計画を聞いた後、二人で屋敷へ帰るために城下を歩いていた。
「ちょっと待て!」
渡名部は、屋敷が見える角まで来た時に、三津林の歩みを止めさせた。
「あの男、怪しくないか?」
門を見渡せる塀の陰で、男が屋敷を偵察しているように見えた。渡名部が先に男の方へ近付いた。
「気をつけて下さい、渡名部さん。」
軽く頷いて渡名部は、男の脇まで行った。
「何か用でもあるのか?」
「へ、ひ、人を待っているんで・・・。」
「こんな所で、誰を?」
「いえ、来ないんで失礼します。」
男は、そそくさと立ち去ろうとした。
「待て、見ない顔だが何処の者だ・・・。」
渡名部が男の肩に手を掛けると、男は懐から短刀を抜き、いきなり斬りかかってきた。
「渡名部さん!」
渡名部は、腕を押さえて膝をついた。三津林は、刀を抜いて二人の間に入った。
「何者だ!」
男は何も言わずに刀を構えた。
「どうしたんですか!?」
屋敷の門の所から、膝をつき腕を押さえている渡名部を見つけて久留美が走って来る。
「危ない久留美さん!来るんじゃない!」
しかし危険な場面にも臆することなく、久留美は渡名部の所へやって来た。
「大丈夫ですか?あっ、血が出てる!」
「かすり傷だ、ここは危険だから戻りなさい!」
三津林は、刀を上段に構えて男に向かって振り下ろした。それを男は素早くかわし、短刀を三津林に向かって振った。三津林もそれを一歩下がってかわす。
「久留美さん、渡名部さんを屋敷に連れて行って、茂助さんを呼んで来て下さい。」
「は、はい!」
久留美は、渡名部を立たせた。
「早く行って下さい!」
三津林がそう言った時だった。一本の矢が三津林の頬をかすめて通り過ぎた。
「うっ!」
「久留美さん!」
渡名部が叫んだ。三津林が振り返ると、胸に矢が刺さった久留美の身体がゆっくりと倒れていった。
「久留美さん!」
その時、男が隙を狙って三津林に斬りつけた。今度はかわせず腕に傷を負い刀を落とした。
「屋敷の女だけが目的だったが、こうなったら皆殺しにしてやる。」
そう言って、男が三津林に向かって斬りかかろうとした時だった。
「三津林どの!」
走ってやって来たのは、家康の家臣、土田弘江門と川越五郎太だった。
それを見て、男が逃げ出した。
「大丈夫ですか?」
「は、はい、あそこに矢を射った者もいます!」
木の陰にいた別の男も逃げ出した。
「屋敷に戻って下さい。我らがあやつ等を追います。」
そう言って、土田と川越は男達を追った。



「久留美さん、しっかりして下さい・・・。」
三津林は、傷を負った腕で久留美を抱きかかえた。
「慶大さん、怪我は大丈夫?」
「大丈夫だよ、君こそ人の心配してる場合じゃないだろ・・・。」
三津林は、久留美の胸に刺さる矢を見ることが出来なかった。
「んんん、何ともないわ、あなたに抱いてもらっているだけで気分がいいの。」
「俺のせいでこんな時代に来てしまって、・・俺が君の人生を狂わせてしまったんだ、ごめん!」
「何言ってるの、私、あなたに出会えて、良かったって、思ってるのよ。・・あなたには、愛美さんがいたけれど、私、・・・あなたの役に、・・・立てて、・・ぐふぉっ!」
久留美は、血を吐いた。
「私、看護師なのに、・・自分は、手当て出来ないの。・・・け、慶大さん。・・・私に、・・・最後に、・・・あなたといた、・・この時代の、・・思い出を、くだ、さ、い。・・き、・・。」
しだいに久留美の意識がなくなっていく。
「久留美さん・・・。」
「キス、・・・して、・・く・・・。」
もう話すことが出来なくなってきている。渡名部が涙を流しながら、三津林に向かって言った。
「してやれよ・・・。」
三河の谷から時代を超えて、久留美は三津林と一緒に浜奈へやって来た。久留美は怪我をした三津林に肩を貸して山を越えてここまで来たのだ。
愛美のことばかりを考えていて、道連れにしてしまった久留美のことを気にかけることが出来なかった。そんな自分を三津林は悔いた。
「久留美さん、ありがとう・・・。」
三津林は、久留美の唇にそっと口付けをした。
「あ、りが、・・と、・・・・。」
久留美は、静かに息を引き取った。
「久留美さん・・・。」
三津林は、久留美を強く抱き締めた。


                   つづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする