三木奎吾の住宅探訪記

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。

【ポスト効率主義社会で持続可能な日本の魅力は?】

2020-10-21 05:50:30 | 日記


「課題最先端」北海道のシンクタンク北総研の人口減少社会WEBセミナーより。
きのうまでシリーズで「課題の最先端」ぶりをお伝えしてきました。
もちろんこの他にもたくさんの難題が山積ですが、
ようするに人口増加という社会条件と輸出主導型の産業構造という
戦後長く続いてきた「日本の経済社会環境」が人口減で激変時期を迎える。
長く続いてきたことで、それが当たり前のように思ってきたことが
そうではなくなってきて、それに代わる「持続可能性」が否応なく迫られる。
資本主義社会であることは不変。当然最小資本で最大経済効率を求める。
そして企業は当然のように右肩上がりの「成長」を求める。
このこと自体は変わりのない公理。世界の市場に打って出る企業以外の
「内需型」ビジネス企業にとっては、これは大きな転換期。
考えようによっては新型コロナ禍はそれをさらに後押しする要素かも知れない。
この効率主義の思考法が社会を支配し公益的部分・地方自治体運営も
「効率化」思考がこれまでは優勢に選択されてきた。
しかし地域企業にとって市場は縮小し、激烈な競争が避けられない。
アトキンソンさんという方が菅政権の参与として加わったことで
政権がある一定の方向性を志向していることも推定される。
人口規模は予測可能な2045年でピークから25%減がほぼ決定している。
人口減少が避けられない未来であるとすれば、
その条件下でどのような考え方で「生き延びていくべきか」。

いわば課題への「処方箋」もまたシンクタンクらしく素材を提供している。
上の図は日米での「幸福度」実感調査だそうで、
アメリカ社会では高齢者の「シアワセ」度が加齢と共に上昇している一方、
日本は加齢するごとに幸福感は減衰し、不幸が加速すると未来を想像する。
よく言われるように悲観主義じゃないとマジメではないと考えるのが日本人。
日本人は「根拠が明確でない楽観主義」のアメリカ人とは違って
「根拠がなければ悲観的に見る」メンタルだと知れる。しかし、
人口減少社会での大きな成員層の高齢者が本来前向きになる必要がある。
しかしこうした悲観的メンタルが支配的になった後、
そこから一気に局面転換する急激な変化が起こるのが日本史のパターン。
黒船のような「外圧」が日本社会を覚醒させメンタルの転換を図る気がする。
日本民族は危機が進行すると、無意識のうちに急転換を求めてきた。
明治維新のような時代変革、閉塞感打破の動きが湧き上がる可能性。
明治の時は近代化・工業社会化が求められたのだけれど、
日本民族の米作をはじめとする技術基盤が最大の発展資産として働いて
世界の最先端にあっという間に駆け上がった。
工業化社会に応用可能な技術資産に気づいた結果だった。
だから資源小国でありながら工業化に成功できたのだと思う。
今回の人口減少は過去の変革期と違って全人類的に遭遇しつつあるテーマ。
変革のありようは大きく違ってくるのだろうと思う。

一方下図はその「突破口」を匂わせるデータのように思われる。
悲観的な傾向にある日本人にとって、足下にあるシアワセ。
さらにここで挙げられたポイントは、効率主義とはあまり縁がない。
そしてどちらかといえば、都市部よりも郡部の方がメリットを感じやすい。
もちろん、さまざまな突破口があり得るそのひとつの可能性。
時代を乗り越えるタネは必ず自分たちの中にその可能性があるのだと思う。
工業化への成功的対応の原動力が気づかなかった民族技術資産だったように。
しかしコロナ禍までの海外からの観光需要の旺盛さは先行指標なのかも。
こういう「資産」をさらにどう役立たせるか、知恵と工夫が求められている。
振り返れば明治維新から終戦まで77年、終戦からはことしで75年。
世界と日本の大きな「節目」が訪れているともいえるのでしょう。
こう考えれば日本の魅力の根源・地方の生き残りは絶対に不可欠。
最後にWEBセミナーではひとつの方向性も打ち出していた。以下、あしたへ。

【市街地3倍膨張・人口1/3⇒インフラ維持は可能か?】

2020-10-20 05:47:06 | 日記


北総研研究発表会から「人口減少時代の地域づくり」テーマです。
人口拡大局面は都市での「住宅地」拡大局面でもあり、全国どこでも
「市街地の拡大」ということが普遍的に進行してきた。
農地などだった土地に人間が住むことで、そのためのインフラが整備された。
道路が整備され上下水道が開削され電気・通信などがネットワークされた。
経済的には活性化するし人間が住むことで住民税、固定資産税などの税収が上がり、
長期間かけて敷設コストと維持コストは見合うとされ「合理的」と判断された。
日本全国、ほぼ均一にその考え方で「都市が膨張」した。住宅の新築ラッシュ。

図表は北海道内の自治体事例として現在の「むかわ町鵡川」街区の俯瞰図。
1960年代から現在まで市街地面積はなんと3倍超になっている。
1961年に50万㎡だった市街地が2007年段階で167万㎡。
青の枠内から、赤の枠内まで市域が拡大したのだという。
世帯数は38%増加も人口はおおむね2/3に。世帯人員は半減。
そういった状況で、当然税収は総体的に減るけれど、
拡大した市街地に対して道路維持、上下水道維持などのインフラコストは増大する。
人口減少局面でもそこに人が住んでいればこれらは維持される必要がある。
人口予測では2045年にはさらに現在からも半減という推計。
半分になる人口が負担しなければならないコストは、当然2倍になる。
自治体経営と考えれば、誰が考えても同じ問題にぶち当たる。
むかわの事例は別に特異なケースではなく、それこそ北海道・全国一様。
まったく同じ問題がひとしく地方自治体を襲っていくことになる。


さらにこのように拡大した市街地は、災害リスクも高めている。
上の図は太平洋に面したむかわ市街地域での「津波災害予測」。
人口居住地・市街地のほぼ全域が危険と青く色づけされている。
街が開かれた初期には災害危険度も勘案されて土地開発されただろうけれど、
人口膨張プロセスで徐々に「危険地域」にも人間居住域が広がった。
こうした地域の「防災」コストは当然嵩んでいくことは明らか。
被害想定の拡大はもちろん、そこからの復旧を考えてもコストは巨大化する。
これもまた想定災害に違いはあっても全国の自治体に普遍的な現実。

高度経済成長期、日本列島改造というようなイケイケドンドンが
社会の趨勢であって、人口減少の危機などは論じられなかった。
大きいことはいいことだ、みたいな一種の集団的思考停止が蔓延していた。
スマートシュリンク(賢い縮小)という提言が近年されてきているけれど、
しかし経済社会構造と既得権益システムはスケールメリット思考が前提で
社会常識の基礎深く人々の意識に根付いている。
「いまさら止められない」みたいな論理が幅をきかせているといえるでしょう。
しかし、どう考えてもこのコストは誰にも負担できない。
確実に訪れるカタストロフをどう回避できるのか、
今われわれの世代が解決の糸口をつけておかなければ、
若い世代はそのツケを大きく支払わされることになる。
非常ベルは深刻なレベルで鳴り続けていると言わざるを得ない。

【人口減と人類の未来「出生」幸福度視点】

2020-10-19 06:16:45 | 日記

人口減少の予測は大枠としては「変えられない未来」と言われる。
しかし、地域シンクタンクの北総研発表を仔細に見ていると、
北海道の自治体毎でこの「予測値」は変動していることに気づかされる。
上の図は、2013年の道内自治体毎の人口推定と、5年後2018年に再度推計した
2035年度の人口推計の「増減」を視覚化させたもの。
赤い色の濃淡がより推計値が下ぶれした自治体で、
一方青い色合いは、推計値が上ぶれした自治体のカラーマッピング。
この図表が表しているのは予測から、進行する現実は変化するということ。
人口減少がより激しく進行する地域もあれば、
むしろ反対に増加したり、趨勢スピードが鈍化する地域もある、
未来はまだら模様で推移していくのだということ。
大きな傾向としては、札幌および周辺地域、帯広、旭川、函館という
主要都市圏では総じて「青色」の傾向を示しているといえる。
変化は2極分化して襲ってくるということなのでしょう。
ただし、主要都市圏以外でも青色を示している地域が存在することは
その要因チェックに留意する必要があるだろう。
また同時に「赤色」を示している地域は総じて郡部と見なせるけれど、
これも一様にそうとは言えず、より細やかな分析が必要だと思われる。
青色傾向の地域としては、とくに新千歳空港周辺地域が注目。
これは産業として考えれば「運輸」という分野が人口動態に
大きな影響をもたらすということを明示しているのかも知れない。
札幌と新千歳空港というような「道央地域」がその利便性で成長性を持ち
その周辺地域はこの「中心」に対しなんらかの役割を提供する発展がありえる。


で、大きくは都市圏と郡部というように仕分けが当然できるけれど、
この表は、それぞれでのメリット・デメリットを集計したもの。
都市圏が優越しているポイントは、1 生活環境 2 健康維持 3 教育環境
郡部が優越しているポイントは、
1 労働環境 2 高齢者適応 3 人的交流 4 女性活躍 5 子育て
というように分けられている。
非常に興味深いのは、子育てしやすさ比較で「8:14」と郡部優勢なこと。
このことは別の指標でも現れていて、以下の指標が顕著。

これは「合計特殊出生率の全道地域マッピングデータ。
大きな傾向として、北海道内の郡部地域が基本的に青色であり、
札幌周辺などが低くなっている傾向が読み取れること。

「人間疎外」というコトバがかなり以前、高度成長期などに使われたけれど、
どうもこの指標からは、都市化・資本主義的「合理性」発展が
必ずしも人間の幸福度とパラレルではないことを示してはいないだろうか。
このデータを見させられて、いろいろな発想が湧いてきている。
人口減少へ社会の知恵を集める必要があることが自明だけれど、
そのもっとも核心的な指標こそは「出生率」ではないか。
いま、女性がこどもを産むことに積極的である地域傾向とはなにか?
ということ以上に重要な指標はないと思われるのです。う〜む。

【2045年人口25%減 どうする?試される北海道】

2020-10-18 05:57:44 | 日記


一昨日夕刻に北総研からWEBセミナーでの発表資料が開示されました。
記録も取れない(録画権限も制限)、スクリーンショット不可ということでは、
記事を書くにも、記憶とメモだけということになって、
非常に大きな制約になるとお伝えしたところ、開示いただいた次第。
一部は知的所有権への配慮が必要なので非開示ですが、対応に深く感謝。

先日のブログでも書きましたが、人口減少問題は
この国の未来にとってその生存を左右する大問題だと思います。
伝統的に移民に寛容な社会であるアメリカを除いて、
いわゆる近代の工業化社会を先導してきた「先進国」で
おしなべて人口減少が大きな社会問題として突き付けられている。
世界最大の人口を擁する中国も一人っ子政策もあって逃れられない。
第2次世界大戦での戦死者が多い結果として人口構造で
この問題の最先端地域国家として日本は急進的先導的な位置にある。
世界の中で日本は「課題の最先進地域」というように捉えられる。
そもそもどうして社会が豊かになると人口減少に拍車が掛かるのか、
そのメカニズムの解明も社会経済学的探究のメスが必要だけれど、
この研究領域で画期的な発表は寡聞にしてまだ聞かれない。
人口減少問題が進行する中で、誰でも考えられる処方箋は「移民政策」。
伝統的なアメリカ社会のやり方ということになるけれど、
そのアメリカでもその中核と言えるWASP層では人口減少に歯止めが掛からない。
<WASP〔White Anglo-Saxon Protestant〕>
移民政策は、この人口減少に対症療法的「対処」ではあるでしょう。
しかしそれでは伝統的民族社会の希薄化と民族的反発も当然発生する。
イギリスでのEUからの離脱・ブレグジット、アメリカでのトランプ政権の誕生も
伝統的なその国家社会の本音・根幹部からの「異議申し立て」だと思う。
日本社会は伝統的に移民には慎重な社会であり、
皇室という独特の「民族統合の象徴」を持っていることなど
英米社会の動向に親和性が高いと見なせるでしょう。同じ海洋国家でもある。

このように世界情勢の基本因子にもなってきた人口減少問題。
タイトルに書いたように日本社会でもっとも「新開地」である北海道でも
2045年には最多人口時点から25%減少する予測が立てられて、
現在に至るもその趨勢は進みこそすれ、衰える傾向にはない。
ただ、その進行具合はまだらな傾向を示して、一部地域では増加もある。
上の地図グラフは人口の増減状況をマッピングしたもの。
当面人口減に劇的な「改善施策」が出てこない以上、
個別企業にしてみれば、あきらかな「市場収縮」にどう対応するかが問われる。
右肩上がり社会での経済常識では絶対に乗り越えられない。
25%の市場収縮が目の前に迫ってきている危機状況なのだ。
しかし北総研研究発表では下のグラフのような「可能性」も出ていた。
人口減少は同時に「高齢化社会」の進行でもある。
そしてちょっと前まで65才定年というカタチで労働市場から疎外されてきた
65〜74才の「前期高齢者」層での「要介護・介護認定者率」は
10%未満、9.1%に過ぎないというデータ開示。
これまで国レベルでも労働人口減少に対して「女性参加」が謳われ実行され
アベノミクスなどで人口減が始まってからも500⇒540兆とGDP増加が達成。
人口増加社会で想定していた寿命常識からの60才定年制だけれど、
このグラフからは明確に人間社会に構造的変化が起こっていると見なせる。

地道に人口増政策を考え実行すると同時に、当面は状況対応的に
労働人口の拡大をはかるのがひとつの作戦ではないか。
施策によって「未来は変えられる」という提言も同発表会ではあったけれど、
「課題の先端地域」は同時に知恵が湧き出す地域でもありたい。

【人口減少へ処方箋提言も/北総研・研究報告会】

2020-10-16 06:12:25 | 日記

一昨日の地域工務店グループ・アース21のリアル例会と打って変わり
昨日はWEBセミナー形式の北総研・研究成果報告会。
北総研というのは略称で正しくは「北海道立総合研究機構 建築研究本部」。
ただ住宅建築の世界では長く「北総研」の名前で知られてきた。
地方独立行政法人としてつくばの「国総研」とほぼ同じ領域の研究を行ってきた。
国総研が主に温暖地から準寒冷地までの住宅研究をするのに対し
いかにも「開拓使」以来のDNAが残る北海道として寒冷地の住宅・建築について
国の研究機関とはまた別に独自研究開発を続けてきたシンクタンク。
一地方が住宅・建築について独自研究機関を持っているのは北海道のみ。
独特の寒冷地域性から、いかに住宅研究が死活的かをあらわしています。
年に一度、研究成果報告会を公開しているけれど、
ことしは旭川市の本部建物会場のほか、新型コロナ対応でWEBでも同時発信。
わたしは他用もあったので、基本的にWEBで内容を聞かせていただきました。
内容についてはスクリーンショットも「遠慮ください」ということだったので、
写真は、同時に情報発信されているyoutuve動画の表紙カットです。

きのうの発表で強く興味を持ったテーマは、
むしろ住宅建築からはやや拡張的な「人口減少時代の地域づくり」領域。
建築の学問研究には「まちづくり」という計画系の領域も大きく存在するので
それについて「トークセッション」が企画されていたのです。
先日のブログ記事でも触れたのですが、これは今の日本最大のテーマ。
人口減少が加速してきているいまの局面で、本来は国を挙げて
このテーマから逃げずに日夜論議が戦わされるべきだと強く思います。
人口増基調だった時代が終わり、社会構造も思考法も変わらざるを得ない。
人類全体としても先進国はみなこの共通問題に直面している。
資本主義とは市場の拡大を予測前提とした経済システムだと思う。
人口増は市場拡大を提供するけれど人口減は市場収縮につながる。
資本主義社会を支える企業にとってこの環境の中で生き残るために
どうしたらいいのか、日々苦悩が深まっているというのが現実。
であれば社会としてどう対応するか、それこそ「身を切る」改革が避けられない。
当面は規制改革や既得権益の打破などが必須の課題になることは自明。
国民から負託を受けてこのテーマを真剣論議しない政治は危機意識が薄い。
さらには既得権益にしがみつくだけに見える日本学術会議って・・・とも思う。
今の歴史局面でこれ以上の提言必須テーマがあるとは思えない。
・・・っていうテーマに対し、日本国土の北の果ての地方独立行政法人が
地域の最大課題として取り組み、さまざまな具体的提言も行っていた。

北海道は「課題の最先端地域」と自嘲気味に自己規定している。
地方にとって人口減少は危機そのもの。それへの戦い方はまさに死活問題。
人口予測ではかなりのスピードで減少が予測される。国土交通省からは
「2015年に約538万人であった北海道の人口は、2045年には
約400万人になる(25.7%減)。日本の総人口に占める北海道の人口割合は、
2015年の4.2%から2045年は3.8%に低下する。」というアナウンス。
この25年先には市場規模3/4の現実がやってくるし、その先もさらに厳しい。
そもそも経済規模でも社会の「厚み」でも脆弱な基盤しかない北海道が、
人口400万人で、どうやったら活力を維持し続けられるのか、
まさに地域社会にとって喫緊の大テーマだといえるでしょう。

レジュメとかの配布もなく、スクショの撮影・引用発表も不可だったことで、
この内容を確認しつつ文章でまとめるのは時間が掛かると思われます。
本日は取り急ぎ、昨日のテーマについてのお知らせ報道と言うことで、
今後、いくつかのテーマに分節してこの内容を考えたいと思います。