私がサラリーマンしていた20代半ば
直属上司に現総理と同姓同名の人がいた。
おとなしいというか根暗な感じで
静かに事務机で算盤はじき
時折、蚊のような声で電話していた。
目立たない人。
氏素性を他の人から聞いて驚いた。
K大付属中から大学院まで進んだ。
表参道に住居があった。
その住まいは、マンションであるが
一棟がその方の所有マンションであった。
しかし出身は北関東、険しい山岳地帯で
登山者の遭難事故が日本一。
その峡谷にある有名な温泉旅館ホテルを経営するところの御曹司であった。
口数少なかったが、部内での飲み会で
ドキリとする皮肉を発する。
その人と同期入社(その人も四国リゾートホテルの御曹司)を突然、公然の秘密である頭髪について
宴席で暴露した。
「あなたの桂は良く出来ていますね」
「強風にも負けず、風呂に入る時は外すのですか」
宴席は凍り付き座が静まりかえった。
臆病なのか、注意深いのか
高架下を歩く時、上を見上げながら足早に抜けるのだ。
訊ねた。
「どうして速足になるのですか」?
すると神妙な表情で
「高架のコンクリートが崩れ落ちるかもしれない」
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父君は、県山岳連盟の会長であり
私は大学山岳部に所属していたので
高名は知っていた。
御曹司はひ弱である。
しかし、先祖は
嫡流であり本家でもあります。
最近になってその分家が現総理であること知った。
本州の西に流れた庶流があった。
どちらも
お坊茶魔です。
私の上司は影が薄かったのか
出世しなかった。
出世欲がなかった訳ではない。
役員が遅くまでいると、必ず帰らずにじっとしていて
役員と同時に退出する。
給料などは、小遣い程度であったのであろう
執念と呼ぶべき頑張りは感じられなかった。
かなり前に名門旅館は廃業した。
それに引き換え
分家の御曹司は、どんなスキャンダルもものともせず
執念で憲法改正を目指す。
現総理も若き日、サラリーマンをしていた
政界に出なければ、目立たない出世もしない人だったかもしれない。
衆議院議員 甘利明も
互いのルーツを誇りとして、魂胆を相照らす仲なのか。
大名 お殿様が弱体であれば
嫡子を廃して縁戚を世子とする。
既に上司は故人か?
知らない。
優しい方だった。
私を採用した。
恩人でした。
お会いして話しかった。