アメリカから引っ越して来てしばらくして、
娘と西日本の地方の、古いショッピングモールに行った。
細長いフロアの両側に店があり、
通路の真ん中にプラスチックとクッションでできた
こぎれいな城みたいなものが並んでいた。
子供を遊ばせるものだろうなとは思ったが、
大きい子たちが奥でヒソヒソやっているだけで、
自分が入って行って、どうやって遊ぶかやって見せるわけにもいかず、
行って来れば?とは言ってみたものの、
初めて見た娘は何をするものかわからなかったようで
(もしかしたら建設中の人んちかもしれないし)、
いまいち遠巻きにして遊ばなかった。
アメリカで住んでた町は田舎すぎて、モールにそんなものなかった。
側にいた、いかにも良い人そうなおばさんが、
「お友達と一緒に遊びたかったのに、やっぱりできなかったねー。
かわいそうに。」というような、
余計なことを言ってきたので、さりげなく娘を遠ざけ、
「ああいう、周りの見当違いの共感が変な暗示をかけるんだ。
よし次週、リベンジだ!」とばかりに次の週に、同じ場所へ行って遊んだ。
余計なことを言う人どころか、夕方で幸い誰も人がいなかったので、
心ゆくまでクッションの手触りを楽しんで、
自分は脇のベンチにぼ~っと座ってそれを見ていると、
館内のアナウンスで「先程、専門店でめだかカレーをご注文の〇〇様~
めだかカレーを・・・」と聞こえてきて、
そうか、この地では食べるのだな。
ウエっっ。
しかし自分が食べないからといって、否定するのは良くない。
ニボシのようなものかもしれないし、などと考えているうちに
余計に気持ち悪くなり、
こんな所には住めないんじゃないのか?!と、うすら寒い心もちになったが、
後で聞いたら、目高カレイのお造りの注文だったし、
その後10数年住んだ。
