優しかったお母さんは、
私を誘拐した人でした。
上映時間 147分
原作 角田光代
脚本 奥寺佐渡子
監督 成島出
出演 井上真央/永作博美/小池栄子/森口瑤子/田中哲司/市川実和子/平田満/渡邉このみ/劇団ひとり/風吹ジュン
誘拐犯の女と誘拐された少女との逃亡劇と、その後の二人の運命を描いた、角田光代原作のベストセラー小説を映画化したヒューマン・サスペンス
会社の上司との不倫で妊娠し、中絶手術の後遺症で二度と子供を産めない体となったOL、野々宮希和子(永作博美)。相手の男はいずれ妻と別れると言いながら、その妻(森口瑤子)はいつの間にか子供を産んでいた。自らにケリをつけるべく、赤ん坊の顔を一目見ようと夫婦の留守宅に忍び込んだ希和子。ふと我に返ると、赤ん坊を抱えたまま家から飛び出していた。赤ん坊を薫と名づけた希和子は、そのまま逃亡生活の中で薫(渡邉このみ)を育てていくことに…。
この作品、『孤高のメス』の成島出監督だと知って、急遽行って参りました。
原作は未読、N○Kドラマもスポット予告ぐらいしか観ていませんでしたが、
昨年春に放送された日テレのMotherにテーマが酷似していることから関心が持てないでいました。
つまり、Motherの誘拐犯とされた小学校教師と、その動機もおかれた環境も異なる独身の本作女性が、
他人の子の母親になるという事で自分の生きる意味を見出し、法を犯し、
だけど、誰よりもその子に無償の愛を注ぎ、母親になる―・・・という.......。
Motherの主人公・小学校教師は法的にはどうあれ、実際事実は人命救助の、超法規的措置だと思えたので、逃亡する擬似親子を応援しつつ見守っていけたのに対し、
さて、同じく母性に焦点を当てたこちらの作品では・・・どうなのか。
冒頭いきなり二人の母の法廷での証言シーンで幕を開け、この物語の被害者と加害者の
事件後の心の明暗が観るものの胸に刻まれます。
出産し、何もかもこれから、という時に我が子を奪われた男の本妻のやり場のない怒り。
奪われた4年の時間は、それだけでは済まなかった!!
奪った犯人の希和子の陳述はというと・・・。
――それは許されるはずのない幸せだったことに間違いはない。のに、、、
成長した娘・恵理菜(井上真央)の胸が疼くような現在と、
不倫相手の妻の赤ん坊をさらった希和子との事件以降・・・厳しい環境の中にも安らぎのある幼少時代が、
交互に映し出されるストーリー展開は、2時間半という長さで効果的です。
家を出て独立して生活をする恵理菜に、ある日近づいてくるフリーライターの千草(小池栄子)が
ちょっと挙動不審にもみえるのだけど、そこにも秘密があり・・・、
この千草とのやり取りの中で、恵理菜は封印していた過去に向き合うきっかけを手にする。
「八日目の蝉」は哀しいのか?それとも、
「八日目の蝉」は幸せを観るのか・・・。二人の年頃の娘の会話・・・。
母と信じて過ごした4年の後の、恵理菜の不幸も全ては希和子の衝動から起こったこと。
母親の立場からみれば、とんでもない話で、
しかしまた、ヒトの幸福な人生を奪っておきながら、聖母のような愛情を持って薫を守る
希和子の母親としての姿にこそ、今の悩み多き女性へのメッセージが込められているのは間違いない。
けれど―・・・。
こういうテーマを扱う時に、被害者の母に問題があるかのような印象を与えて、
誘拐犯人の行動を擁護するような描き方に抵抗を覚えてしまった。
実際仮に私が産んだばかりの我が子を盗まれたら、
そして4歳になった子供に知らないおばちゃんとしてしか認知されなかったら――死んでしまいたくなるかも知れない。
こんな話で「大号泣した」とか「感動」とかあり得ない。どこに感動するの?しちゃいけないでしょう。と、正直思ってしまいました。。。
愛した男の本妻の子というのが、そもそも誘拐の動機ではないし、彼女の犯罪そのものになんら同情の余地はない。
一瞬の「天使の笑顔」を盗みとったその時から、少なくとも3人の人生をも奪い獲った。
しかしまた、その事を頑として謝らないところに、
世間を捨て、薫にのみ全てを捧げた彼女が、天晴れな紛れもない母の姿として心に残る。
誘拐犯の永作博美、盗まれた母の森口瑤子もそれぞれ素晴しかったけれど、
独身で、逃亡犯でありながら、野々宮希和子に肉親、またその親戚の影が微塵も描かれてないなど、
ストーリー展開・設定がウソっぽく思えて、女優陣の熱演も虚しく、ちょっと離れてみていた。
同じ角田光代サン原作の「空中庭園」も、壊れた家族とトラウマを抱えた母子の物語でインパクトがあったけど、シュールな世界だった。そしてラストはちゃんと着地した印象。
でも、コチラは犯罪絡みなので、どうしてもリアルを求めてしまう。
ただ一箇所、はらはらと涙がこぼれてしまったのは、
おどおど、せかせかとしたライターの千草の告白シーンでした。
今まで苦手系女子ばかりを目にしてきましたが、初めて小池さんに泣かされてびっくり(笑)
出演女優さんの演技はみんな素晴しかったですが、
やっぱり渡邉このみちゃんの時に不信感を、時に不安感を募らせる、あの表情と存在がとても良かったのでした。
私を誘拐した人でした。
上映時間 147分
原作 角田光代
脚本 奥寺佐渡子
監督 成島出
出演 井上真央/永作博美/小池栄子/森口瑤子/田中哲司/市川実和子/平田満/渡邉このみ/劇団ひとり/風吹ジュン
誘拐犯の女と誘拐された少女との逃亡劇と、その後の二人の運命を描いた、角田光代原作のベストセラー小説を映画化したヒューマン・サスペンス
会社の上司との不倫で妊娠し、中絶手術の後遺症で二度と子供を産めない体となったOL、野々宮希和子(永作博美)。相手の男はいずれ妻と別れると言いながら、その妻(森口瑤子)はいつの間にか子供を産んでいた。自らにケリをつけるべく、赤ん坊の顔を一目見ようと夫婦の留守宅に忍び込んだ希和子。ふと我に返ると、赤ん坊を抱えたまま家から飛び出していた。赤ん坊を薫と名づけた希和子は、そのまま逃亡生活の中で薫(渡邉このみ)を育てていくことに…。
この作品、『孤高のメス』の成島出監督だと知って、急遽行って参りました。
原作は未読、N○Kドラマもスポット予告ぐらいしか観ていませんでしたが、
昨年春に放送された日テレのMotherにテーマが酷似していることから関心が持てないでいました。
つまり、Motherの誘拐犯とされた小学校教師と、その動機もおかれた環境も異なる独身の本作女性が、
他人の子の母親になるという事で自分の生きる意味を見出し、法を犯し、
だけど、誰よりもその子に無償の愛を注ぎ、母親になる―・・・という.......。
Motherの主人公・小学校教師は法的にはどうあれ、実際事実は人命救助の、超法規的措置だと思えたので、逃亡する擬似親子を応援しつつ見守っていけたのに対し、
さて、同じく母性に焦点を当てたこちらの作品では・・・どうなのか。
冒頭いきなり二人の母の法廷での証言シーンで幕を開け、この物語の被害者と加害者の
事件後の心の明暗が観るものの胸に刻まれます。
出産し、何もかもこれから、という時に我が子を奪われた男の本妻のやり場のない怒り。
奪われた4年の時間は、それだけでは済まなかった!!
奪った犯人の希和子の陳述はというと・・・。
――それは許されるはずのない幸せだったことに間違いはない。のに、、、
成長した娘・恵理菜(井上真央)の胸が疼くような現在と、
不倫相手の妻の赤ん坊をさらった希和子との事件以降・・・厳しい環境の中にも安らぎのある幼少時代が、
交互に映し出されるストーリー展開は、2時間半という長さで効果的です。
家を出て独立して生活をする恵理菜に、ある日近づいてくるフリーライターの千草(小池栄子)が
ちょっと挙動不審にもみえるのだけど、そこにも秘密があり・・・、
この千草とのやり取りの中で、恵理菜は封印していた過去に向き合うきっかけを手にする。
「八日目の蝉」は哀しいのか?それとも、
「八日目の蝉」は幸せを観るのか・・・。二人の年頃の娘の会話・・・。
母と信じて過ごした4年の後の、恵理菜の不幸も全ては希和子の衝動から起こったこと。
母親の立場からみれば、とんでもない話で、
しかしまた、ヒトの幸福な人生を奪っておきながら、聖母のような愛情を持って薫を守る
希和子の母親としての姿にこそ、今の悩み多き女性へのメッセージが込められているのは間違いない。
けれど―・・・。
こういうテーマを扱う時に、被害者の母に問題があるかのような印象を与えて、
誘拐犯人の行動を擁護するような描き方に抵抗を覚えてしまった。
実際仮に私が産んだばかりの我が子を盗まれたら、
そして4歳になった子供に知らないおばちゃんとしてしか認知されなかったら――死んでしまいたくなるかも知れない。
こんな話で「大号泣した」とか「感動」とかあり得ない。どこに感動するの?しちゃいけないでしょう。と、正直思ってしまいました。。。
愛した男の本妻の子というのが、そもそも誘拐の動機ではないし、彼女の犯罪そのものになんら同情の余地はない。
一瞬の「天使の笑顔」を盗みとったその時から、少なくとも3人の人生をも奪い獲った。
しかしまた、その事を頑として謝らないところに、
世間を捨て、薫にのみ全てを捧げた彼女が、天晴れな紛れもない母の姿として心に残る。
誘拐犯の永作博美、盗まれた母の森口瑤子もそれぞれ素晴しかったけれど、
独身で、逃亡犯でありながら、野々宮希和子に肉親、またその親戚の影が微塵も描かれてないなど、
ストーリー展開・設定がウソっぽく思えて、女優陣の熱演も虚しく、ちょっと離れてみていた。
同じ角田光代サン原作の「空中庭園」も、壊れた家族とトラウマを抱えた母子の物語でインパクトがあったけど、シュールな世界だった。そしてラストはちゃんと着地した印象。
でも、コチラは犯罪絡みなので、どうしてもリアルを求めてしまう。
ただ一箇所、はらはらと涙がこぼれてしまったのは、
おどおど、せかせかとしたライターの千草の告白シーンでした。
今まで苦手系女子ばかりを目にしてきましたが、初めて小池さんに泣かされてびっくり(笑)
出演女優さんの演技はみんな素晴しかったですが、
やっぱり渡邉このみちゃんの時に不信感を、時に不安感を募らせる、あの表情と存在がとても良かったのでした。
本は既読なんで本とは違ったテイストでしたが、見せ方はうまかったなあ。
あ、キワコの両親は亡くなってて、親の遺産があって、数千万を所持してると言う設定です。
だからお金の心配なく逃亡出来るんですが、あのカルト教団に全部差し出す。。となります。
あの描き方は、妻の存在って凄く否定的でしたよね。あえて観る者がみんな奇和子に同情しちゃう作りにしてあったような気がした・・・
別れて別れてと迫るシーンとか、空っぽ!とののしるシーンとか・・・
実母のよいところなんて全然見せなかったし。だからあの星の歌をせがむシーンで、初めて私は心から彼女に同情してしまった。
本当に悪いのはあの旦那だと思うのだけど・・・
母性というものは血の繋がりより、心の繋がりだと思う。そこは揺るぎない・・・
そうそう、私も小池さん苦手だったんだけど~
この役はよかったですね~。
あの喋り方、歩き方、特殊な世界に生きてたんだな~と胸にせまってきました。
違和感というか、設定自体が甘く感じて、
役者の演技も見事なのに、臨場感が感じられないのを、
sakuraiさんの記事にて納得した次第です。
まず臨時の日雇いでもない限り、いくら小豆島の小さな会社でも、
何ヶ月も偽名で給料を貰い続けるのはムリではないかとか、
私には突っ込みどころも多くて、気持ちが離れたままでした。
カルト教団も、随分都合がいいなぁ~と思っていましたら、
その金銭部分、省いちゃダメですよね~。
ともかく、巷では大絶賛されていますが、
なにかと残念な思いがする作品でした。
>あえて観る者がみんな奇和子に同情しちゃう作り
で、奇和子を聖母にして
彼女が妻子があることを承知で男とつきあい続け、本妻と別れて欲しいと願い、
挙句妊娠、そして子供のできない身体になったことの全てが、
「男が悪い」とか、挙句子供を置いて出かける「本妻が悪い」とかの印象にしてしまってることに一抹の不安を覚えます。
悪いのは不倫をしていたふたりであり、家宅侵入のうえ「誘拐」したことですよね~。
あの土砂降りの中、駅まで夫を送るぐらいであれば私でも子供は置いていくでしょう。
鍵はかけますが。
ともかく、誘拐して密度の濃い母と子の時間を持てたから幸せと言う・・
これはやはり怖いです。復讐でなく、「衝動」でひとを不幸にしたんですもの。
いつも拝見させて頂いてます。
今回はTBさせて頂きましたので、いちおう報告しました。
gooブログを始めて短い上にTBも始めてなので、もしかしたら色々間違えてしまうかもしれませんが、よろしくお願いします。
gooブログ始められたばかりなんですね♪
今までもこんな拙いブログに目を通していただいて、恐縮です。
この作品、観る方の経験値とか性別などで
かなり感想が分かれる作品のようですね。
恭子ちゃん記事に傾き加減ですが(笑)これからも宜しくお願いします!
私も感動とは程遠い感情で見ていました。
テーマが重かったのもそうですが、キワコの行動が
なにやら肯定化されているように感じてしまい・・。
かといって正妻の行動も共感できず。。。
というか、正妻が悪いような印象ばかり与えているような感じがぬぐませんでした。
でも、キワコのエリナに対する愛情は紛れもなくそこにあったのが救いだったのでしょか?
最後まで心の葛藤の折り合いがつかなかったですね。^^;
逆に小池栄子さんの千草にはちょっとウルっときました。
>最後まで心の葛藤の折り合いがつかなかったですね
同じです!
キャストの演技もあって、犯罪そのものが、
「母性」という一言で覆されるかのような印象を与える本作品。
ちょっとアブナサも感じてしまうものでした。
衝動で犯罪を犯したけど、愛して育てて、幸せだったから・・・いいじゃんみたいな。。
これは一つ間違えると、、の思いが残る作品でした。