上映時間 157分
脚本 ボー・ゴールドマン
監督 マーティン・ブレスト
音楽 トーマス・ニューマン
出演 アル・パチーノ/クリス・オドネル/ジェームズ・レブホーン/ガブリエル・アンウォー/フィリップ・S・ホフマン/リチャード・ヴェンチャー/サリー・マーフィ/ブラッドリー・ウィットフォード
気難しく人間嫌いな全盲の退役軍人と、心優しいエリート寄宿学校の苦学生との年齢差を越えた友情を描き出した人間ドラマ。
全寮制の名門ハイスクール、ベアード校の奨学生チャーリー(クリス・オドネル)は、アルバイトで盲目の退役軍人フランク(アル・パチーノ)の世話を頼まれた。翌朝、トラクス校長(ジェイムズ・レブホーン)が全校生徒の前でペンキまみれにされるというイタズラが起き、校長はその犯人の顔を知るチャーリーと同級生のジョージ(フィリップ・S・ホフマン)を呼びつけ、犯人の名を明かさないと週明けの特別集会で退学を申し渡すと脅した。さらに校長はチャーリーに大学進学の奨学金を交換条件に提示した。バイトの初日、チャーリーはフランクに無理矢理ニューヨークへの旅に同行させられることになり・・・・・・
イタリアの作家ジョヴァンニ・アルピーノの小説をもとに「カッコーの巣の上で」のボー・ゴールドマンが自身の体験も加えて脚本を執筆。
本作は、92年度アカデミー賞最優秀主演男優賞、ゴールデン・グローブ賞作品賞〈ドラマ部門〉、最優秀主演男優賞〈同〉、最優秀脚本賞を受賞という華々しさであるが、
恥ずかしながら全く知らずに手にした1本。
A・パチーノは7度目のノミネートにして遂に本作でアカデミー主演賞男優賞受賞が叶ったのですね。
もう、なんとうか・・・、この作品に出会えてシアワセ
今まで知らずにいたなんて、なんてこったい!
2時間半という長さなのだけれども、この物語に必要な長さ。
盲目の退役軍人の昔と今、そして優しくて強い少年の置かれた昨日と今日。
それから少年が目にしていくフランクの旅の目的。
またフランクが、盲目であるが為に嗅ぎ取ってしまう人間の本質―。
それらを描くのに必要な2時間半でした。
本当は何も情報を持たずに観た私のように、ゼロでご覧になるのが良いと思いますが、
一つだけ、、クライマックスは2度やってきます。
以下は、ネタバレ気味です
↓
横暴で威圧的なフランクは、常に人を小ばかにした態度を取り、
常識的で温厚な少年は、戸惑いながらも、時に大人のように振る舞い、フランクをサポートする。
一見、強者と弱者のように見えるふたりが、ニューヨークに移ってからは、
時に教師と生徒のようであり、年の離れた友人のようであり、ぶつかり合う親子のように会話する。
純粋で優しいチャーリーにとっては300ドルの為の、罰ゲームのような旅も、
どこか確信犯のような、フランクの本質を、賢明なチャーリーは見逃さない。
ふたりは其々に人生の岐路にさしかかっていた。
人生の難しい岐路に立っている悩めるチャーリーに、どんな展開が待ちうけるのか、
全盲の切れ者、フランクは読んでいた。それはなぜか?そして
チャーリーはどちらの道を行くのか―。
そ知らぬ振りをしてそれもフランクは読めていたのだ。
家族との再会で傷つき、しかしここでハッキリしたものもある。
フランクはチャーリーを認めていた。
ホテルのラウンジで、偶然近くに座った美しい女性ドナ(ガブリアル・アンワー)に近づき、強引にダンスに誘うやり取りも楽しい。
自信たっぷりにドナを誘うフランクを、羨望の眼差しでみつめるチャーリーが温かい。
そして―
脚が絡まっても踊り続けて……タンゴ
終わった時に思わず拍手をしてしまったタンゴ
美しい女を抱き―フェラーリをぶっ飛ばす・・・フランク・・・
もうその頃はチャーリーはフランクに信頼を寄せていたし、一方で案じてもいたのだけれど。
そして一度目のクライマックスはやってきて、
フランクの、
叶わないと諦めていた夢を知り、私はこの
邦題に感じ入るの。
クライマックスは最後にもう一度やってくる。
世のアホタレ(笑)に、胸のすく一発。こうであって欲しい、こうでなくては!
精一杯の自分で、相手を護るフランクとチャーリー。
ふたりのこの出会いに、なぜか神に感謝したくなる・・・このふたりが愛しくなる。
そして甘く切ない
POR UNA CABEZA聴く度にあの素敵なダンスを想い出し、
その様子を愛情のこもった眼差しでみつめるC・オドネルを想い出そう。
人の心の底に潜む孤独と絶望。それは愛情がなければ視えない。
1000人を前に孤立する人を、誰もが救おうと立ち上がれるだろうか。
アル・パチーノとクリス・オドネルの魅力たっぷりの素敵な作品でした
”POR UNA CABEZA”
http://dev.todotango.com/spanish/las_obras/letra.aspx?idletra=224
(↑劇中では歌は入ってない演奏のみですが、コチラで視聴できます)
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http://jp.youtube.com/watch?v=Oi566Y4FBLA&feature=related
余談ですがフランクが出会った時に女性のフレグランス・ソープを言い当てるのですが、
その香りの一つにフルール・ド・ロカイユが出てきます。「岸辺の花」と言っていましたが、
これはフランスの老舗の香り、日本では「石の花」として販売されていました。
大人びてシックで、若い頃憧れて使っていた香りなのでとても懐かしかったのでした