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原題 LE SCAPHANDRE ET LE PAPILLON/THE DIVING BELL AND THE BUTTERFLY
製作年度 2007年
製作国・地域 フランス/アメリカ
上映時間 112分
原作 ジャン=ドミニク・ボビー『潜水服は蝶の夢を見る』(講談社刊)
監督 ジュリアン・シュナーベル
出演 マチュー・アマルリック/エマニュエル・セニエ/マリ=ジョゼ・クローズ/アンヌ・コンシニ/オラツ・ロペス・ヘルメンディア/マックス・フォン・シドー
ファッション誌「エル」の編集長として活躍する人生から一転、脳梗塞(こうそく)で左目のまぶた以外の自由が効かなくなってしまった男の実話を映画化
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公開時も、DVD化されても、全身麻痺の闘病生活を強いられる伝記モノだと知っていたので
どうしても観る気になれなかった本作。
BSで放送されたのを録画してやっと観る事ができました。
42歳。順風満帆に輝いていた人生だった。こだわり続けた超一流の生活。
華やかなファッションを左右する、フランス版ELLEの名編集長として
意識を失くすその時まで、人生を謳歌し、全てを持っていたのに・・・――
物語はジャン・ドゥー(ジャン=ドミニク・ボビー)が病室で意識を取り戻すところから始まる。
ぼやけた狭い視界・・・。
覗き込み、語りかける医師たち。しかし、答えるジャン・ドゥーの声は空を切る―。
意識、知力はそのままなのに、それを伝える術がない。
医師は告げる。
身体全体の自由を奪われた“ロックト・イン・シンドローム(閉じ込め症候群)”だが、
心配はないと。
直ぐに美人の言語療法士と理学療法士が彼の元にやってくる。
シャルル・ トレネ(Charles Trenet)のLa Mer
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陽射しの降り注ぐ病室の、男の戸惑いの向こうで流れる・・・。
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彼の意思とは関係なく、意識はあるままに右目を塞がれ、
身体はまるで重い潜水服を着せられたような状態で、心の叫びも届かない恐怖と絶望。
画面は終始、ジャン・ドゥーの目線で捉えられ、
声にならない彼の心の涸れそうなつぶやきと、
誰も踏み込めない彼の帰り来ぬ日々の記憶、妄想、果てない願望を繰り返し映していく・・・
そして観客とジャン・ドゥーは、同時に彼の現在の姿をガラス越しに見――、
その瞬間、絶望と、潜水服の重みを分け与えられた気にもなる。。。
そしていつか、仕事にかこつけて顧みなかった家族の大切さに気づき、
やがて遂に現実の自分と向き合う――
言語療法士アンリエットとの、目の瞬きでコミュニケーションをとる方法を会得し、
果てしなく忍耐を強いられる気の遠くなるような作業を頑張りぬき、
20万回の瞬きと、編集者クロードの代筆で自伝「潜水服は蝶の夢を見る」を完成させる。
E・S・A・R・I・N・T、、、、20万回の瞬きとそれを超える数だけ繰り返されたであろう
読み上げられるアルファベットのリズム・・・
そして、潜水服から解き放たれ、蝶は飛び立つ.........
―人間らしさにしがみつけ―
生命あるものの煌き、それは、風に煽られる妻の髪、はためくスカート、木漏れ日の輝き―
身動きのとれないジャン・ドゥーが、蝶のようにはばたく空想の源―。
その、人間らしさを失わないために、
凄まじい努力をして生きる希望を繋いでいくジャン・ドゥーと
彼を支えるひとたちの静かな葛藤........。
五体不満足な状態に陥り、そこから生きていくことを、
静かに、大人の説得を持って描き上げて、しみじみとした余韻が残る作品でした。
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もう4年も経つなんて早い早い。
思考は自由とわかっていても極限状態にならないとその尊さがわからない。
すごい作品だと思いました。
蓋を開けてみれば、
音楽も、映像からも、「言語(ことば)」にすがり、出版するという内容からも、
やはりフランス語で正解だったですね。観て良かったと思えた作品でした
早々にコメとTBをいただきながらこちらへのお伺いが今になってしまってすみません。
『最強のふたり』でも同様の台詞がありましたが、「自分で命を絶つことさえも叶わない」という絶望の中で、生きる道を見つけてゆくことの(想像を絶する)煩悶。
ジャンのやがて到達する姿を何と言ったらいいのか、神々しいまでにと言うのとも違う、適切な言葉が見当たらないのでもどかしいです。
「記憶に残る一作」であることは間違いないですね。
(苦しいけれど)私ももう一度観返したくなりました。
観てよかったです。
意外にも私は、重苦しくも、胸苦しさも感じなくて・・・
なんというか、
彼の絶望も、逃避も、、それを諦めて現実を受け入れることも、
涙もなく観ていられました。この、涙腺ゆるい、私が!!
ヒトは知的生物である。ということにしがみついた、
まぶただけで、生を発信するというコトに、
弱気になりがちなフツウの人たちへのメッセージに、じみじみとした感動がありました