to Heart

~その時がくるまでのひとりごと

ボルベール<帰郷>

2008-01-17 22:45:00 | the cinema (ハ行)
上映時間 120分
製作国 スペイン
監督 ペドロ・アルモドバル
脚本 ペドロ・アルモドバル
音楽 アルベルト・イグレシアス
出演 ペネロペ・クルス/カルメン・マウラ/ ロラ・ドゥエニャス/ブランカ・ポルティージョ/ヨアンナ・コボ

カンヌ映画祭で最優秀脚本賞と最優秀女優賞を受賞した、ペドロ・アルモドバル監督の女性賛歌ともいえるヒューマンドラマ。

10代のころ母親を火事で失ったライムンダ(ペネロペ・クルス)は、失業中の夫と15歳の娘パウラ(ヨアンナ・コバ)のために日々忙しく働いていた。ある日、火事で死んだはずの母親が生きているといううわさを耳にする。そんな中、肉体関係を迫ってきた父親を、パウラが殺害してしまうトラブルが発生し……。(シネマトゥデイ)

これは不思議な感覚に陥ってしまう作品でした。
ただただ、女たちの強かさをみせつけられ、
有無を言わさずに納得させられたとでも言おうか・・・

オープニングの晴れて渇いた強風の中、まるで洗濯をするようにゴシゴシと墓を磨く女たち。
女たちは声高にお喋りし、みんな生命力に溢れて見える。
もう、既にここから日本のお墓参りとのあまりの違いに、距離を置いていた気がする。

物語はペネロペ演じる母娘と、彼女たちを取り巻く伯母と隣人によって綴られていく。
ライムンダの娘・パウラが事件を起こした時、彼女たちは当然のように行動を起こす。
この時、ライムンダは娘に言う「いい?殺したのは私よ。」躊躇は無いのだ。
震えたり、泣き喚く事も無い。ただ一生懸命、仕事をこなすように片付けて行く。

一方で、一人暮らしの伯母の葬儀から戻った姉のソーラ(ロラ・ドゥエニャス)も
死んだはずの母と再会し、ここでも小さな秘密が生まれていたけど・・・
こちらもどこか緊張感に欠け、ユーモラスに二人の女の秘密を共有する楽しささえ感じる。

観客が落ち着かなくなってくるのは、伯母の隣人アグスティナが死期を覚悟したあたりからではないだろうか?
観る側の心配をよそに、女たちのとった行動は、反応は予想をこえる。
この物語にオトコは登場しない。だから、幸いにもコロンボや古畑任三郎のような鼻の利く探偵も現れない。
なにしろ幽霊が目撃されていても不思議ではない土地なんだから・・・

ライムンダが、娘に聴かせる為にレストランで歌う『VOLVER(帰郷)』
これはペネロペがフラメンコ歌手の歌い方、身のこなし方を数ヶ月間徹底的に研究し、体得してから撮影に臨んだというだけあって
実際に歌ってるような見事なクチパクシーンとなっているが、
アネモネの花をバックのこの画像を思わせる、情熱的でどこか哀しいタンゴのメロディと見事シンクロしている。
女として、母として、そして娘であったライムンダの想いの迸るシーンでした

キャッチコピーは、女たち、 流した血から、 花咲かす。
不幸だといって嘆いていないで、こころの故郷へ、母の胸へ―。そして―

立ち止まらない、責めない、ただ生きていく女たちの強さに圧倒されました!

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26 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
なぎささん♪ (kira)
2008-04-21 12:58:32
こちらにも、ありがとうございます!

そうなんですよね~。声を出しちゃいけないシーンで、
彼女は空熱唱してたことになります
だからブレスのシーンものど元がとても自然だったんですね~
付け尻って、どなたのアドバイスなんでしょうか(笑)
確かにデンとしたお母さんのイメージになりましたよね!

これもまた、嘘を吐き通す、秘密を持って生きる道を選んだわけですよね?
なんか、、凄いです
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kiraさん こんにちは♪ (なぎさ)
2008-04-20 15:47:32
いつもありがとうございます!
へぇ~、あの歌のシーンって彼女そんなに特訓して臨んだのですねぇ。
この役でペネロペは"付け尻"をしてたと聞きました。

女は強し、されど母はもっと強し・・・と言ったところでしょうか。

結局、あの旦那さんのことは"蒸発"ということで一件落着しちゃったんですよね(笑)
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ひめちゃん* (kira)
2008-04-18 00:51:45
男不在の映画でしたよね~(笑)

どんな自体にも怯まずに隠し、生き抜いて、子供を守り・・・
って、、どうでしょう。
「OUT」のように、日本の女たちもありましたがあれは最後どうなったでしょうか?
よく考えると、とても出来ないヘタレだし
これはライムンダの少女時代の真実も大きく関係してるからって気もします。
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こんばんは (ひめ)
2008-04-17 19:56:49
不思議な説得力がありましたよね~!
びっくりしながらも、すごく引き込まれて見てしまいました。

ペネロペの歌のシーンは涙が出ちゃいました。
すごかった!しびれた!って感じ。
ほんとペネロペが歌ってるみたいでしたよね。
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ミカさん♪ (kira)
2008-01-31 08:27:19
初めまして(?)でしょうか?
以前TBでお世話になったと思いますが、お話しするのは
初めてかも?ですね♪
お越し下さり有難うございます。こちらこそ宜しくです!

男女の繋がりよりも、親子の結び付きの強さを
とりわけ母と娘の絆の強さを感じましたね。
ペネロペのブレスの時の喉元なんかをみても、とても
クチパクとは思えなかったですよね~
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こんにちは (ミカ)
2008-01-30 08:31:57
kiraさん、こんにちは。
お話させていただくのは、はじめてでしょうか。
これからもよろしくお願いします。

墓参りのシーンは本当に日本と違うものでしたよね。
でも、母や娘への愛情は万国共通で
どんなに憎んでも、母を心から憎めないし
どんあことをしても、娘を心から愛してやまないんですよね。
女性の愛の深さ、強さを感じました。
あの歌のシーンはクチパクだったんですね!
まんまとだまされてしまいました(笑)
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sabunoriさん♪ (kira)
2008-01-22 23:35:50
コメント、ありがとうございます♪
同感です~
サスペンスを感じさせない淡々とした展開。
悪びれない女たち・・・
これ、実は怖いおとなの寓話のようですよね。
伯母の隣人アグスティナがライムンダの娘に、「この子は、あんたのお父さん似だね」と
繰り返し言っていた言葉も実は(知らなかったとはいえ)とても残酷なセリフでしたし
女って凄い~と思わされました!
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こんにちは。 (sabunori)
2008-01-22 14:21:52
kiraさん、こんにちはー。
いやもうあっけにとられている間に終わってしまいました。(笑)
たくさんの「死」が行きかう物語でしたね。
でもその死が人々の生活の一部となっていてみんな取り立て取り乱しも騒ぎもせず淡々とそれを受け入れていくような。
私はあまりにあっけらかんとした彼女たちがちょっと怖くもあり・・・。
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チョコさん* (kira)
2008-01-22 01:55:21
こんばんは!
お越し下さり、ありがとうございます♪

お話自体、現実に有り得る犯罪なのが
女たちが見事に手際よく(都合よく?)処理してしまうし、
警官の一人も出てこないし
凍らしたり、埋めたり、焼いたりしていながら
悪びれない、キッっと前を見ている姿に、ある種の爽快さを覚えてしまいましたね・・凄すぎ。。
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ぺろんぱさん♪ (kira)
2008-01-22 01:39:43
こんばんは、お越し下さりありがとうございます♪

スペインの情熱を感じさせる作品全体の色調と
ペネロペのゴージャスな美しさ、激しさ。
彼女の代表作になりましたね。
正に色んな「帰郷」が読み取れましたが、
「帰るところがある幸せ」を思わないではいられません。
血の赤も、生きる情熱の色だと思わせる迫力でした
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アイマックさん* (kira)
2008-01-20 21:38:36
こんばんはー、kiraですよ~(笑)
こちらこそご無沙汰していました。
今年も宜しくです~♪

この監督作品自体が初めてだったのですが、ずんずんと
力強く進んで行く脚本のせいでしょうか、
本当にコミカルなシーンも含めて
ちゃんと張られた伏線も見逃す事無く楽しめました
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力強い女たち。 (チョコ)
2008-01-20 15:12:38
こんにちは。

ホントですね。
ここで起こってることは犯罪なのに(笑)
なぜか、そんなことはどうでもいいような
女達の迫力でしたね。

ペネロペ。
あまり好きじゃなかったんですけど
この映画の彼女はとても素敵でした。
やっぱ。ペネロペにはスペイン語が良く似合いますね。
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TBありがとうございました。 (ぺろんぱ)
2008-01-20 12:25:07
コメントとTBをありがとうございました。
この作品のペネロペ、良かったですね~。私はこの作品でかなり好きになりました。彼女には「闘う女」があっているように思います。

いろんな意味での「帰郷」が描かれていた事に深みを感じる作品でした。kiraさんが最後に書かれていた「立ち止まらない、責めない、ただ生きていく女たちの強さに」という一分にジンワリ感動・・・そういうしなやかな女でありたいですね。
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ジョーさん* (kira)
2008-01-19 19:01:42
コメント、ありがとうございます♪
ペネロペの胸のショットや付け尻など、とことん肝っ玉母さんのイメージ作りでしたよねー
ワタシも途中からソフィア・ローレンを思い出してました
これで女性ファンが増えたでしょうね♪
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ミチさ~ん* (kira)
2008-01-19 13:41:23
こんにちは
上手くまるめ込まれた、じゃなくて(笑)乗せられたというか、
監督の描きたかった、キャッチコピーそのままを納得されられましたよね?
日本なら正当防衛トカ争える題材でも、「わたしがやった」は、
ただ娘の精神の平和のための言葉に過ぎなかったのですね。
女性パワーで寄り切られちゃった感じ?

これ、逆バージョン(オトコが女を殺した場合)だと、理由イカンによっては男も納得すんのかしら?
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Anyさん~♪ (kira)
2008-01-19 12:30:26
お越し下さりありがとうございます
この監督作品も初めてなら、
スペイン語のペネロペも初めてだったんですよ~。
色使いといい(衣装も含め)生活の中の身近な匂いといい、
激しくて強い女たちと、生活力を上手く表現してましたね~。
>ペネロペの歌う(まね)『VOLVER(帰郷)』は良かったですね
私もあそこはグ~っときました
ペネロペの、女の顔、母の顔、娘だった顔・・・
あそこで赤い車で身を倒して泣く母の姿・・たまりません
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miyuさ~ん* (kira)
2008-01-19 12:06:19
もともとミステリーでも、死体が登場しないとか
ドロドロ劇じゃないものが好み(佐野洋とか)なので
チャッチャと片付けられてほっとしたんですが、
やっぱり事件がどこからか綻びて露見する~って運びじゃないと
普通マズイですよね~
私も古畑には(←呼びすて)たまに追い詰めないでくれって思いましたが
返信する
テクテクさん~♪ (kira)
2008-01-19 11:56:50
こんにちは~
コメント、どうも有難うございます~♪

テクテクさんの仰る、カンヌの評価の傾向って、実は私も感じていました。
決着を見るラストの多いアメリカや、日本の映画とはやはり違いますよね。
カンヌで高評価~も、それほど私には魅力ではないです。
でも、日本の作品が評価されると素直に嬉しいんですが

ペネロペ作品はあまり観ていないんですよ~。とくに自国語のものは。
なのでとても新鮮でした。
「地下鉄に乗って」を思い出されましたか?私は「OUT」でした。。。
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由香さ~ん♪ (kira)
2008-01-19 11:41:17
こんにちは~
そうですよね!
もともとオトコに頼ろうという女はいない土地柄だったのか(爆
女たちの力強さに圧倒されましたね!
血の赤は、なぜか生きて行く赤でしたし、血縁に繋がって行くところが
独特の表現だったように思いました。

挨拶のキスーーー
するほうも疲れちゃうだろうし、順番待つのもの大変~。
ホント、これやれって言われたらどーしましょ?
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Anyさん、こんばんは! (アイマック)
2008-01-19 00:13:39
ご無沙汰してました~
今年もどうそよろしくお願いいたします~

>立ち止まらない、責めない、ただ生きていく女たちの強さに圧倒されました!

うんうん、この映画でなんか元気もらった気がします。
サスペンスでもあるけどコミカルで、よく計算されてる作品だよね。
イキイキしてるペネロペは最高の演技だったね!
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こんばんは。 (ジョー)
2008-01-18 21:57:25
TBありがとうございます。
ベネロペ・クルスがここまで存在感のある女優になるとは思いませんでした。これからどんどん肝っ玉かあさんになっていきそうですね。楽しみです。
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こんばんは♪ (ミチ)
2008-01-18 19:24:41
TBありがとうございました!

うわ~、そんなキャッチコピーがあったんですね。
なんだかすごいな~(笑)
「流した血」って、本当に流していましたよね
いくらダメ男とはいえあんなコトしちゃっていいのかな~と思いつつ、
>女たちの強かさをみせつけられ、有無を言わさずに納得させられた
ハイ。
納得させられました
それにしても罪悪感の欠片もないのが可笑しいというか恐ろしいというか
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TB&コメント感謝です (Any)
2008-01-18 17:22:47
kiraさん、こんにちは♪
内容的にも映像的にも観応えのある作品でしたね。
本来なら超ドロドロのドラマをここまでカラッと、
しかもエネルギーに満ち溢れた作品に
よくぞ仕上げたもんだなぁ~と感心してしまいました。
ペネロペの歌う(まね)『VOLVER(帰郷)』は良かったですね~
このシーンは涙腺決壊でしたよ~ぅ
母国スペイン語を話すペネロペの演技が素晴らしかった。
女は強し、母は更に強し!そして美しかったぁ~
赤を基調とした色彩がとても印象的で綺麗な映画でした。
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あはは (miyu)
2008-01-18 16:56:04
そうだよね。
コロンボや古畑が出てきちゃったら
すぐに解決されちゃうよね~(´▽`*)アハハ
アレもたまに解決しないでやってよ~。
って思わなくもなかったりするのだけど、
やっぱり同性だからかな?
そんな男どもに頼らず強くあろうとする
彼女達を応援せずにはいられませんでした。
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TB&コメントありがとうございました♪ (テクテク)
2008-01-18 12:44:31
こんにちは
この映画には、逆境に立ち向かい、
強く生き抜いている女性たちが描かれていましたよね

女性目線で観てしまうせいか、
やっている行為は犯罪であったとしても、
どこか憎めませんでした…

ペネロペも女優魂を発揮させる作品に出会えて、
嬉しかったでしょうね
間違いなく、彼女の代表作になった映画でした
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こんにちは! (由香)
2008-01-18 08:11:07
お邪魔します♪
私も不思議な感覚を抱きながら鑑賞しました。
起こっている事は重大なのに、何故かユーモラスで・・・
それに、女性たちが何だか知らないけど魅力的でしたよね~
あの逞しさはやはりラテンの血なのでしょうか。

劇中に何度も交わされた挨拶のキスにはちょっとビックリでした。凄い音じゃありませんでしたか?
・・・とても真似出来ないですぅ~
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