これは、大きな謎です。普通なら反乱軍は、拘束され軍法裁判でしょう。しかし、その気配は一向にありません。プリゴジン氏は自由の身ですしワグネルの部隊には反乱の責任は問われません。
ワグネルの部隊をロシア軍が、どうしたと言う話は聞こえてきません。重火器(戦車や装甲車など)をロシア軍に引き渡す準備をしている事しか聞こえてきません。
一方でベラルーシの大統領は、プリゴジン氏を庇護するようです。(プーチン氏から依頼を受けてロシアの危険人物を預かると言う意味かと思います。自由にしておくと何をたくらむか分かりません。)
そして、ルカシェンコ氏はワグネルの部隊にベラルーシに移動してほしいようです。
『ベラルーシ大統領、ワグネルの傭兵に入国を要請 自国軍隊の訓練求める』
2023.07.01 Sat posted at 16:45 JST
https://www.cnn.co.jp/world/35206001.html
『ベラルーシにワグネルの宿営地か、新たに数百のテント 衛星画像を分析』
https://www.bbc.com/japanese/66074098
ワグネルの部隊用の宿営地の準備も済んでいるようです。
多分、少なくともワグネルの部隊のコアな部分は最終的にベラルーシに移動するのであろうと思います。
ルカシェンコ氏の考えは分かります。ロシア国内にいられなくなったワグネルの部隊を引き取れば、ベラルーシの軍事力を強化することが出来ます。ワグネルの部隊は傭兵部隊ですから雇い主があれば契約するでしょう。ロシア政府と緊張関係にある以上、新しいスポンサーの出現は助かると思います。
ベラルーシとポーランドは、かなりの緊張関係にあります。ルカシェンコ氏がプーチン氏の後ろ盾を背景に嫌がらせをしたら、ポーランドがブチ切れてロシアに備える意味もあって去年から軍事力を大幅に強化しつつあります。
一方でベラルーシの国防軍は貧弱です。強化しようにもベラルーシ国民から嫌いぬかれているルカシェンコ氏には無理な話です。それどころかウクライナ軍にベラルーシ部隊があってベラルーシの民主化運動に参加してくる可能性があります。
ルカシェンコ氏が独裁体制を維持しようと思うなら、ワグネルの部隊でベラルーシ軍を強化するのは、願ったりの話なのです。
ルカシェンコ氏がワグネルの部隊を求める理由は、非常に簡単です。
しかし?
ロシア政府はワグネルを排除できないのか?
この疑問は、依然として残ります。
ロシア政府は、プリゴジン氏のロシア国内の資産や事業を接収しつつあるようです。ワグネルとの契約もプリゴジン氏との契約も打ち切れるところは、打ち切るでしょうね。
打ち切れない部分もあります。それはワグネルがロシア政府に代行して行っているワグネルの海外業務です。この部分はプリゴジン氏が、一人で仕切っていますからそれをすぐロシア政府が統制するのは、事実上不可能です。ワグネルは、プリゴジン氏に忠誠心の強い組織です。簡単にはロシア政府には従わないと思います。
ロシア国内の権力闘争に関しては外部からは分からない部分が多いです。
しかし、ワグネルの海外事業の部分から見るとロシア政府がワグネルを潰せない事情が見えてきます。元々ロシア政府は、ワグネルとの関係を否定してきました。ワグネルはかなりダーテイな部分を代行しており、その観点からワグネルとロシア政府との関係を否定してきました。今、大平にロシア国内で活動しているワグネルは、2021年まではロシア国内では非合法な組織でした。
やはり、ここら辺にロシア政府が今すぐ、ワグネルとプリゴジン氏を排除できない事情がありそうです。
プリゴジン氏がその気になれば、これまでの海外の非合法活動の全容も不透明な資金の流れも、全部暴露することが出来ます。その全容を知っているのは、プリゴジン氏だけだからです。
プリゴジン氏がロシア国内であれほど傍若無人にふるまってきた理由であるかもしれません。かなりの規模の資金を取り扱っているようですから、普通なら権力者への多額の献金もあるはずです。それをバラされても、不味いですね?
真実は不明ですが、以上のような事情も関係しているのかもしれません。
しかし、プリゴジン氏とワグネルは今後は活動しにくくなります。アメリカ政府はワグネルに経済制裁を発動し資金源を制限する動きに出ました。ワグネルの半ば違法な海外業務も、これまで以上にチェックが入ると思います。
これまでロシア政府はワグネルとの関係を否定してきました。しかし、今回ワグネルとの契約を明かした以上、その言い逃れは通用しません。海外であろうとワグネルの行動は、ロシア政府の行動として外国から認識されます。