昨日の仕事中、正職員のアイさんに「たかぽんさん、ちょっとお話しがあります」と、事務所に呼ばれた。
「来月から、クミちゃんが施設に入ることになりました」
クミちゃんは重度の心身障害がある中学生。軽い発達障害があるミサコちゃんのお姉ちゃんだ。
そのクミちゃんが、親元を離れ、或る施設に入るのだそうだ。
「…そうなんですか…可哀想な…」
私は悲しくなり、言葉が出てこなかった。
だがアイさんの話では、
「でも、そこの施設は親のネグレストとか何か家庭に問題が無いと、いくら障がい児でも入居できないんです。だからクミちゃんにとってはどちらが良いかわからないですよ」
ということだった。
そうなんだ…
クミちゃんは体が大きいが、自分では立てない歩けない。喋ることもできない。オムツをつけ、排泄、入浴、食事、全てが介助の必要な中学生である。
両親は居るが共働きで、いつもクミちゃんはウチのデイサービスに預けられている。
ミサコちゃんもウチのデイサービスに来ているが、ミサコちゃんは発達障害といっても学習障害が強く、勉強以外では至って健常児とあまり変わらない。
ただミサコちゃんの話を聞くと、家庭でのクミちゃんに対する様子が気になっていた。
例えば、「日曜日はお父さんお母さんと一緒に車で買い物に行く」という話をしていた時、
「あ、じゃあクミちゃんも行くんだね」
と聞くと、
「クミちゃんは留守番」
と言っていた。
え…
クミちゃんは立てないといっても、ハイハイはして動き回る。
クミちゃん自身にとっても、家の防災等にしても危険だし、第一、クミちゃんを独りにして出かけるなんて可哀想じゃないか。
しかも、クミちゃんが大量の便をして、ズボンにはみ出してしまっていた時、お母さんが怒りながらクミちゃんのお尻を叩いていたとミサコちゃんから聞いた。
そう考えれば家に居た方が良いか施設に入った方が良いかわからなくなる。
ウチのデイサービスは、もちろん完全入居はできない。
どこの施設に入るのかわからないが、どうかそこの職員の方々が優しい人達でありますように。
そう祈るしかない。
こうやって親元から離れて生きていく子がいるように、世の中には辛い思いをしている子ども達がたくさんいることだろう。
クミちゃんの場合は少し例外ではあるが、この世で1番の悲劇は親からの虐待だ。
何よりも聞きたくないニュースだ。
子ども達が皆明るく幸せであるよう願いたい。
そしてアイさんの話では、この先ミサコちゃんが情緒不安定になる可能性があるので、理解して見守って欲しいということだった。
そうだね。
今までずっと一緒だったお姉ちゃんのクミちゃんと離ればなれになってしまうんだから、戸惑いと寂しさを感じるだろう。
辛いねミサコちゃん。
でももっと辛いのはクミちゃん。
頑張ろうね。
そして、優しい大人になろうね。