今日は職場で会議があった。
まずは夏休み中のイベント計画について。
施設の縁日やさまざまなお出かけや、流しそうめんなど、いろいろ予定が目白押しのようだ。
その後、正職員マユコさんがこう切り出した。
マユコさんは、私が昨年この職場からいったん辞めた後に新しく正職員として入って来た人で、私より二つ年下である。
とてもしっかりしていて、仕事がデキる人という感じ。
マユコさんはこう言った。
「せっかくですから皆さんに聞きたいんですけど、この仕事をしていて、子ども達にどういう気持ちで接していますかと聞きたいです」
お。
何そのツッコんだ質問。私がかつてここで働いていた頃は無かった空気だぞ。
厳しい顔つきのマユコさん。これは何かが始まるぞ。誰かを指名しそうな雰囲気だ。
「じゃあ長くここで働いているヒロキさん、」
しゃあ!いいぞ。
長いといってもヒロキより先に入ったのは私だが、何せ1年以上のブランクがあるから実質ヒロキの方が私より長くなった。
さて指名されたヒロキ。
「いやそう聞かれても難しいですねぇ…」
難しいんかい。いかにも考え無しで適当にやってる人の言い方だな。
「どういう気持ちで子ども達に接してますか?」
たじたじのヒロキに更に迫るマユコさん。いいぞ。いけマユコ。
「いや…だからその…このまま…ありのまま…なんていうか…」
自分をさらけ出すというジェスチャーで、「ありのまま」と表現しているヒロキ。
なんじゃそりゃ。笑
マユコさんはじっとヒロキを見ている。
その目は厳しい。
「じゃあナガヤマくんはどういう気持ちで接していますか?」
まともに答えられないヒロキを冷たく切り捨てるかのように、マユコさんは今度は若い職員のナガヤマくんに聞いた。
するとヒロキは小さな声で、「○○くんの迎えに行って来ます」と席を立って行ってしまった。
逃げたヒロキ。
その、○○くんの迎えに行くにはまだ早い時間だ。
指名がナガヤマくんになったとたんに逃げやがった。
しかし今度はナガヤマくんがまるでつるし上げられる。
「ナガヤマくん、ここに来た頃は一生懸命仕事をしてたけど、今はずいぶんヒロキさんと一緒になって動かなくなりましたね」
マユコスゴい。ズバズバ言う。
私はこのナガヤマくんとは面識が無かったが、今回この職場に戻って来て、なんだか物足りない若者だなと思っていた。
この後もナガヤマくんはマユコさんからいろいろ注意されていた。
するとナガヤマくん、泣いてしまって涙を拭きだした。
そして、え?何?
なぜか私まで涙が出て来た。なんでやねん。
ナガヤマくんの悲しさも感じたし、マユコさんのキリッとした態度にも感動した。
私が知っているのは、ゆるゆるだったこの職場。
久し振りに帰って来て、まるで空気が変わっていたのはマユコさんという存在が出てきたからだったのか。
他にも若い職員が増えていたし、ダメ先輩ヒロキのダメダメぶりが浮きだってきていたのだろう。
いいぞ。いいぞマユコ。
しかし、私も気を引き締めなければ。
以前は私もゆるゆるになっていたとこもあったかもしれない。
厳しいマユコさんは、この先おそらく年上の私にも容赦ないだろう。
よし、やってやろうじゃない。
もはやヒロキはどうでもいい。
ここは私のこれまでの、今までやってきた仕事の集大成。
50代後半、私はここで力を尽くす。