『女装管理職デビュー』という妄想AVに触発されて、久しぶりに女装小説を書いてみました。
とはいっても、20年前に書いていた小説に少し手を加えたものです。
私の初代のブログにアップした記憶はありましたが、こちらのブログの女装小説カテには入れていませんし、
また大昔につくったfc2のHP「女装小説」にもアップしていません。
古くからのご愛読者はご記憶があるかもしれません。
主人公は大会社の若き取締役。仕事ができる切れ者で40代で役員になり、将来の社長候補です。
しかし彼には人にも家族にも話せない秘密がありました。
それは女装して横浜の某所に行っていることです。
20年前に書いた小説で今回は主人公の名前を変えました。
ご笑覧いただければ幸いです。
「明日から3連休なのに、接待ゴルフというのも大変ですね」
社用車の運転手である大沢さんが同情したように言ってくれる。
「そうなんですよ、経済産業省と財務省の若手官僚なんですけどね、僕のゼミの後輩にあっていましてね。『たまには先輩、ゴルフでも誘ってくださいよ』とせがまれましてね」
「後輩思いなんですね、さすがだ、佐倉取締役は」
「いやいや、わざわざ伊豆まで行くのは、正直な話、億劫ですよ。ま、クラブは先に宅急便で送ってありますけどね」
「伊豆ですか....。新幹線ですか? 踊り子ですか?」
「たまには在来線でいこうとおもって、秘書室には踊り子のグリーンを取ってもらってますよ」
「わかりました。じゃ、丸の内口につけますね。そっちの方が近いですから」
「ありがとう」
数分後、黒のクラウンは東京駅南口のKITTE前に到着した。トランクからボストンバックを取り出した大沢運転手は「気をつけていってらっしゃいませ」と最敬礼で私を見送ってくれた。
数分後、私は予定通り15番線ホームから伊豆急下田行きの踊り子号に乗車した。しかし、私は素知らぬ顔で横浜駅で下車したのだ。そして駅前にいるタクシーに乗り込むと行き先を「K町に...」と告げた。
K町からH町に向かっては赤線の生き残りのような妖しげな飲み屋が立ち並んでいる。しかし、これから私が行こうとしている場所はそこからすこし奥に入った古い住宅やアパートが立ち並ぶ一角にある。昭和40年代に建てられた木造の商人宿を誰かが買い取ったといわれているが、詳しいことはわからない。ここだけ時代から取り残されたような雰囲気で、街灯も少なく暗い闇に包まれている。
「遅かったじゃないの、サクラちゃん」
「ごめんなさい、おかあさん。会議が長引いちゃって」
「あんたが会社でどんなに偉くても、ここじゃお女郎さんのひとりなんだからね。それもさ、もうすぐ45になろうという年増の女郎なんだよ。きちんと早くきて、すこしでもきれいにみえるようにお化粧しておかないとだめじゃない」
「すみません....」
私はこれでも虎ノ門の高層ビルに本社があるM工業株式会社で経営企画担当の役員をやっている。MITのMBAをもっているし、賞与の査定時期には300人の評価票にサインもする。今週はずっと若手のプロジェクトチームと関係会社再編の戦略会議をやっていたくらいだ。1000人くらいがリストラされることになるだろう。
しかし、60年も水商売をしているおかあさんから見れば私なんか子供なのだ。戦略会議なんかより、今日のお客さんの入りのほうがよっぽど重要のはずだ。帳場にいるおかあさんの厳しい視線を避けるようにして、私はあわてて階段を登った。それをおっかけるように、おかあさんの声が響いた。
「はやくお仕度しなさいよ、お風呂もちょうど空いているし。お部屋はね、今日は桔梗の間ね」
「はい...」
「それとね、いつものように潤滑ゼリーをたっぷり入れておくのよ。サクラちゃんのあそこに...」
桔梗の間といっても8畳の狭さだ。窓際に鏡台、壁際に白いシーツが掛かった布団と枕が二つ。そして枕元にスタンドライトと桜紙があるだけの殺風景な部屋。背広を着たままの私は鏡台の前にストンと正座した。
「どうして、こんなことをしているんだろう....」
収入も地位もある自分が、女装して場末の売春宿で身を売っている。妻と子供には「伊豆で接待ゴルフだ」と嘘をついて、金曜日の夜から土曜日の朝まで女郎になっている。MBAやコンサルタントや会計士なんかを思うように使っている自分が、日焼けした汗臭い肉体労働者たちに抱かれている。ここに来るたびに私は必ず自問自答してしまう。
でも回答は簡単、嫌ならここに来なければいい。しかし、私はここに来てしまう。何かの魔性に取り付かれているとしかいえない。
とはいっても、20年前に書いていた小説に少し手を加えたものです。
私の初代のブログにアップした記憶はありましたが、こちらのブログの女装小説カテには入れていませんし、
また大昔につくったfc2のHP「女装小説」にもアップしていません。
古くからのご愛読者はご記憶があるかもしれません。
主人公は大会社の若き取締役。仕事ができる切れ者で40代で役員になり、将来の社長候補です。
しかし彼には人にも家族にも話せない秘密がありました。
それは女装して横浜の某所に行っていることです。
20年前に書いた小説で今回は主人公の名前を変えました。
ご笑覧いただければ幸いです。
「明日から3連休なのに、接待ゴルフというのも大変ですね」
社用車の運転手である大沢さんが同情したように言ってくれる。
「そうなんですよ、経済産業省と財務省の若手官僚なんですけどね、僕のゼミの後輩にあっていましてね。『たまには先輩、ゴルフでも誘ってくださいよ』とせがまれましてね」
「後輩思いなんですね、さすがだ、佐倉取締役は」
「いやいや、わざわざ伊豆まで行くのは、正直な話、億劫ですよ。ま、クラブは先に宅急便で送ってありますけどね」
「伊豆ですか....。新幹線ですか? 踊り子ですか?」
「たまには在来線でいこうとおもって、秘書室には踊り子のグリーンを取ってもらってますよ」
「わかりました。じゃ、丸の内口につけますね。そっちの方が近いですから」
「ありがとう」
数分後、黒のクラウンは東京駅南口のKITTE前に到着した。トランクからボストンバックを取り出した大沢運転手は「気をつけていってらっしゃいませ」と最敬礼で私を見送ってくれた。
数分後、私は予定通り15番線ホームから伊豆急下田行きの踊り子号に乗車した。しかし、私は素知らぬ顔で横浜駅で下車したのだ。そして駅前にいるタクシーに乗り込むと行き先を「K町に...」と告げた。
K町からH町に向かっては赤線の生き残りのような妖しげな飲み屋が立ち並んでいる。しかし、これから私が行こうとしている場所はそこからすこし奥に入った古い住宅やアパートが立ち並ぶ一角にある。昭和40年代に建てられた木造の商人宿を誰かが買い取ったといわれているが、詳しいことはわからない。ここだけ時代から取り残されたような雰囲気で、街灯も少なく暗い闇に包まれている。
「遅かったじゃないの、サクラちゃん」
「ごめんなさい、おかあさん。会議が長引いちゃって」
「あんたが会社でどんなに偉くても、ここじゃお女郎さんのひとりなんだからね。それもさ、もうすぐ45になろうという年増の女郎なんだよ。きちんと早くきて、すこしでもきれいにみえるようにお化粧しておかないとだめじゃない」
「すみません....」
私はこれでも虎ノ門の高層ビルに本社があるM工業株式会社で経営企画担当の役員をやっている。MITのMBAをもっているし、賞与の査定時期には300人の評価票にサインもする。今週はずっと若手のプロジェクトチームと関係会社再編の戦略会議をやっていたくらいだ。1000人くらいがリストラされることになるだろう。
しかし、60年も水商売をしているおかあさんから見れば私なんか子供なのだ。戦略会議なんかより、今日のお客さんの入りのほうがよっぽど重要のはずだ。帳場にいるおかあさんの厳しい視線を避けるようにして、私はあわてて階段を登った。それをおっかけるように、おかあさんの声が響いた。
「はやくお仕度しなさいよ、お風呂もちょうど空いているし。お部屋はね、今日は桔梗の間ね」
「はい...」
「それとね、いつものように潤滑ゼリーをたっぷり入れておくのよ。サクラちゃんのあそこに...」
桔梗の間といっても8畳の狭さだ。窓際に鏡台、壁際に白いシーツが掛かった布団と枕が二つ。そして枕元にスタンドライトと桜紙があるだけの殺風景な部屋。背広を着たままの私は鏡台の前にストンと正座した。
「どうして、こんなことをしているんだろう....」
収入も地位もある自分が、女装して場末の売春宿で身を売っている。妻と子供には「伊豆で接待ゴルフだ」と嘘をついて、金曜日の夜から土曜日の朝まで女郎になっている。MBAやコンサルタントや会計士なんかを思うように使っている自分が、日焼けした汗臭い肉体労働者たちに抱かれている。ここに来るたびに私は必ず自問自答してしまう。
でも回答は簡単、嫌ならここに来なければいい。しかし、私はここに来てしまう。何かの魔性に取り付かれているとしかいえない。