おはようございます。
11月3日、文化の日です。
この日は晴れの特異日ということですが、今日も埼玉はよい天気です。
梶山季之先生が書いた『女にされたジョージ』をもっと読みたいというリクエストがありましたので、何回かに分けてアップします。
富豪の息子が誘拐されて女の子に変装させられる。
それだけではなく、誘拐したギャングにオンナにされてしまう。
そしてそれが富豪の息子の人生を変えてしまう。
これも梶山先生の取材力でしょうか。
出所は梶山季之著「男を飼う<鞭と奴隷の章>」(集英社1969年刊)です。
女にされたジョージ①
ジョージ・F・シナモン。
誘拐事件で世間を騒がせ、一躍、有名になったシナモン二世は、父親よりも母親似の目鼻立ちのはっきりした、女に紛うような優さ男であった。
今年十九歳で、一応、加州大学に籍をおいてはいるが、殆んど学校へ行かず、終日、父親に買って貰ったビバリー・ヒルズのー軒の家で、ひっそりと暮していた。
メイドはいない。
住んでいるのは、ジョージと男友達で、その男友達の顔は、ときどき変った。
誘拐されたとき、ジョージは十六歳でまだ童貞であった。
そして今日もなお、童貞だと云えるかも知れない。
――なぜか。
ジョージは、あの誘拐事件の五日間で、すっかり異性に興味を持たない人間に、させられてしまったのだ。
ジョージは、郊外の飛行場へ連れて行かれると、黒い布で目隠しをされ、セスナ機に乗せられた。そしてパラシュートを背負わされたのだ。
だから、どこをどう飛んだのか、彼にはよくわからない。
とに角一時間ぐらい飛びつづけて、ジョージは不意に席を立たされた。
飛行機は旋回をつづけ、ある地点に来たとき、
「さ、飛び降りろ!」
と、殆んど突き落すような恰好で、機外に掘り出されたものである。
ジョージはこのときほど、吃驚したことはない。
彼の躰は、矢よりも速く地上に向かって落下して行き、気を襲いそうになったとき、ぐいツと起重機かなにかで、首を捉えて吊り上げられたのである。
パラシュートが、開いたのだった。
<あ、助かった>
ジョージはそう思った。
十六歳でも、父の迎えではなく、自分は誘拐されつつあるのだ...と悟っていたからだ。
ところが、地上に降り立ってみると、一台のスポーツ・カーが走って来て、
「乗るんだ!」
と云う。
彼は林の中の、山小屋風の別荘に連れ込まれた。
「二階へ来い」
とジョージは、二階の広い寝室に閉じ込められた。
心細かった。
窓をあげてみると、俄かづくりの鉄格子が取り付けられてある。
逃亡を防ぐためであろう。
・・・夕刻まで、ジョージは放置された。
そして夕食が運び込まれ、食事が済んだあと、ジョージは寝室から出されたのだ。
迎えに来たのは、二十七、八のいかにも玄人じみた栗毛の女性である。
「さ、いらっしゃい」
彼女は微笑しながら、ジョージを階下の化粧室へ連れて行った。
「シャワーを浴びて!」
女は命令した。
云われた通りに、シャワーを浴びていると、女が海水着姿で入って来て、
「脚をお出し!」
と云った。
ジョージは驚いた。 みると女の手には、無気味な西洋剃刀が光っている。
「救けて下さい!」
彼は哀願した。
女は苦笑し、
「殺しはしないよ。大事な、私たちのお宝なんだからね」
と云うのである。
おそるおそる、ジョージは右脚をさし出してみた。
すると女は、湯をたっぷり右脚にかけ石鹸を塗りたくりだす。
<なにをするんだろう?>
ジョージはそのとき、奇怪な幻想に捉われたことを記憶している。なぜか、それは彼がー匹の胡蝶となって、浴室の中を羽ばたいて飛び廻る…といった幻想であったのだ。
女は、剃刀をかまえた。
「今日から、あんたに、女になって貰うんだよ・・・・」
彼女は、うっとりした声でそう告げる。
「えツ、女に?」
「そう。男では人目につくからねえ」
女は、ジョージの右脚の毛を丹念に剃りながら、妖しく微笑した。そして云った。
「でもあんた、綺麗だから、私も、女に仕甲斐があるよ・・・」
梶山季之著「男を飼う<鞭と奴隷の章>」(集英社1969年刊)
11月3日、文化の日です。
この日は晴れの特異日ということですが、今日も埼玉はよい天気です。
梶山季之先生が書いた『女にされたジョージ』をもっと読みたいというリクエストがありましたので、何回かに分けてアップします。
富豪の息子が誘拐されて女の子に変装させられる。
それだけではなく、誘拐したギャングにオンナにされてしまう。
そしてそれが富豪の息子の人生を変えてしまう。
これも梶山先生の取材力でしょうか。
出所は梶山季之著「男を飼う<鞭と奴隷の章>」(集英社1969年刊)です。
女にされたジョージ①
ジョージ・F・シナモン。
誘拐事件で世間を騒がせ、一躍、有名になったシナモン二世は、父親よりも母親似の目鼻立ちのはっきりした、女に紛うような優さ男であった。
今年十九歳で、一応、加州大学に籍をおいてはいるが、殆んど学校へ行かず、終日、父親に買って貰ったビバリー・ヒルズのー軒の家で、ひっそりと暮していた。
メイドはいない。
住んでいるのは、ジョージと男友達で、その男友達の顔は、ときどき変った。
誘拐されたとき、ジョージは十六歳でまだ童貞であった。
そして今日もなお、童貞だと云えるかも知れない。
――なぜか。
ジョージは、あの誘拐事件の五日間で、すっかり異性に興味を持たない人間に、させられてしまったのだ。
ジョージは、郊外の飛行場へ連れて行かれると、黒い布で目隠しをされ、セスナ機に乗せられた。そしてパラシュートを背負わされたのだ。
だから、どこをどう飛んだのか、彼にはよくわからない。
とに角一時間ぐらい飛びつづけて、ジョージは不意に席を立たされた。
飛行機は旋回をつづけ、ある地点に来たとき、
「さ、飛び降りろ!」
と、殆んど突き落すような恰好で、機外に掘り出されたものである。
ジョージはこのときほど、吃驚したことはない。
彼の躰は、矢よりも速く地上に向かって落下して行き、気を襲いそうになったとき、ぐいツと起重機かなにかで、首を捉えて吊り上げられたのである。
パラシュートが、開いたのだった。
<あ、助かった>
ジョージはそう思った。
十六歳でも、父の迎えではなく、自分は誘拐されつつあるのだ...と悟っていたからだ。
ところが、地上に降り立ってみると、一台のスポーツ・カーが走って来て、
「乗るんだ!」
と云う。
彼は林の中の、山小屋風の別荘に連れ込まれた。
「二階へ来い」
とジョージは、二階の広い寝室に閉じ込められた。
心細かった。
窓をあげてみると、俄かづくりの鉄格子が取り付けられてある。
逃亡を防ぐためであろう。
・・・夕刻まで、ジョージは放置された。
そして夕食が運び込まれ、食事が済んだあと、ジョージは寝室から出されたのだ。
迎えに来たのは、二十七、八のいかにも玄人じみた栗毛の女性である。
「さ、いらっしゃい」
彼女は微笑しながら、ジョージを階下の化粧室へ連れて行った。
「シャワーを浴びて!」
女は命令した。
云われた通りに、シャワーを浴びていると、女が海水着姿で入って来て、
「脚をお出し!」
と云った。
ジョージは驚いた。 みると女の手には、無気味な西洋剃刀が光っている。
「救けて下さい!」
彼は哀願した。
女は苦笑し、
「殺しはしないよ。大事な、私たちのお宝なんだからね」
と云うのである。
おそるおそる、ジョージは右脚をさし出してみた。
すると女は、湯をたっぷり右脚にかけ石鹸を塗りたくりだす。
<なにをするんだろう?>
ジョージはそのとき、奇怪な幻想に捉われたことを記憶している。なぜか、それは彼がー匹の胡蝶となって、浴室の中を羽ばたいて飛び廻る…といった幻想であったのだ。
女は、剃刀をかまえた。
「今日から、あんたに、女になって貰うんだよ・・・・」
彼女は、うっとりした声でそう告げる。
「えツ、女に?」
「そう。男では人目につくからねえ」
女は、ジョージの右脚の毛を丹念に剃りながら、妖しく微笑した。そして云った。
「でもあんた、綺麗だから、私も、女に仕甲斐があるよ・・・」
梶山季之著「男を飼う<鞭と奴隷の章>」(集英社1969年刊)