承前です。
和服美女の久美子さん、不良3人組も軽いなして、さあ神社に参拝です。
出所は『別冊くいーん 7号(1987年10月)』「女装告白手記~25人の体験実話」です。
そんなワルを後ろに聞きながら神社へと急いだ。神社の近くになると、もう、人人が密集して、川の流れ に乗った様に参道から境内へと暖い込 まれていく。当然私もその中に入って 歩いたが、予想通り格別に扱われることなく、無事に拝殿前に進む事が出来た。勿論私の周囲にいた人を擦れ違う人々は一様に驚いた表情で、私の濃い化粧の顔や今時珍しい高島田に結った髪や派手な着物に見とれて立ち止まって見る人々の中で、わざわざ振り返ってじっと見詰めていた中年の女の視線が気になった。案の定連れの男性に何事か囁いていた。
その時の様子と女の眼差しから推測すると、私の正体を知ったらしく 「……あの人オカマよ。絶対そうよ」とでも言っているらしかった。
(いいのよ。何とでも仰言いな。本当なんだから口惜しかったらご自分 もお洒落してみたら・・・どっちが綺麗か競争しましょうよ。悪いけど男の私の方が勝ちに決まってるワヨ)
そんな台詞を胸の中で呟いて、意地悪な女から受けるプレッシャーを防ぐしかなかった。
拝殿前の人混みの頭越しにお賽銭を投げ、両手を合わせて 「帰り途の無事ともっと美しい女が 出来ます様に」と祈った。
帰路「女装参指 の記念に」何か購おうと思い、立ち並ぶ売店の一つに立ち寄った。電球が晃々と照らしている店先に立つのは、正体が暴る怖れが充分にあったが、その時はその時と開き直っ て、スーッと近づくと印半纏もイナセな兄ちゃんが元気な声をかけた。 「へい、らっしゃーい、お嬢さん綺麗 ですねー、一つ如何ですか? この獅子はとっても縁起がいいんだよ。この大きな口で彼氏のムスコを噛むと、後が良くなるよー。そりゃ冗談だけどウハハハ」
私もつられて微笑みながら低い声で
「その小さいの敷くワ。お幾ら?」
「これは三千だけど、お嬢さんがあんまり綺麗だから二千に負けちゃうよ」
「悪いワネ……………じゃあこれ」
私はピンクにマニキュアした指で、 千円札二枚を差しだした。
彼は獅子頭を包みながら言った。「わたしゃ吃驚しましたよ、お嬢さん あんまり綺麗なんでね。それにしても 近頃の女は駄目になったね。ジーパン かミニスカートばかりはいて······あっ どうもお待ちどう様でした」
お世辞半分であっても、彼は私を再三「綺麗だ、綺麗だ」と言ってくれたの で美しい女として認められた満足感が胸一杯に広がり、やや自信めいたものを感じた。 帰り道に例の三人の若者がいるといやだなと心配したが、幸い何処かへ行ったらしく居なかった。
以下、続きます。
>わたしゃ吃驚しましたよ、お嬢さん あんまり綺麗なんでね。
テキヤのお兄さんも気づいていたと思いますよ。
でも、それをいっちゃあお仕舞いです。
テキヤさんはお客様をいい気持ちにしてなんぼ。
世辞のひとつも女装子さんにもかけますわな。
そういうときは、久美子さんのように有難く受け止めればいいんです、
文章と画像の出所『別冊くぃーん7号』 1987年10月
怖かったでしょうけど、「マブイ」と言われたのだから、オンナとして彼らに認識されていたんですよ.....。
和服美女の久美子さん、不良3人組も軽いなして、さあ神社に参拝です。
出所は『別冊くいーん 7号(1987年10月)』「女装告白手記~25人の体験実話」です。
そんなワルを後ろに聞きながら神社へと急いだ。神社の近くになると、もう、人人が密集して、川の流れ に乗った様に参道から境内へと暖い込 まれていく。当然私もその中に入って 歩いたが、予想通り格別に扱われることなく、無事に拝殿前に進む事が出来た。勿論私の周囲にいた人を擦れ違う人々は一様に驚いた表情で、私の濃い化粧の顔や今時珍しい高島田に結った髪や派手な着物に見とれて立ち止まって見る人々の中で、わざわざ振り返ってじっと見詰めていた中年の女の視線が気になった。案の定連れの男性に何事か囁いていた。
その時の様子と女の眼差しから推測すると、私の正体を知ったらしく 「……あの人オカマよ。絶対そうよ」とでも言っているらしかった。
(いいのよ。何とでも仰言いな。本当なんだから口惜しかったらご自分 もお洒落してみたら・・・どっちが綺麗か競争しましょうよ。悪いけど男の私の方が勝ちに決まってるワヨ)
そんな台詞を胸の中で呟いて、意地悪な女から受けるプレッシャーを防ぐしかなかった。
拝殿前の人混みの頭越しにお賽銭を投げ、両手を合わせて 「帰り途の無事ともっと美しい女が 出来ます様に」と祈った。
帰路「女装参指 の記念に」何か購おうと思い、立ち並ぶ売店の一つに立ち寄った。電球が晃々と照らしている店先に立つのは、正体が暴る怖れが充分にあったが、その時はその時と開き直っ て、スーッと近づくと印半纏もイナセな兄ちゃんが元気な声をかけた。 「へい、らっしゃーい、お嬢さん綺麗 ですねー、一つ如何ですか? この獅子はとっても縁起がいいんだよ。この大きな口で彼氏のムスコを噛むと、後が良くなるよー。そりゃ冗談だけどウハハハ」
私もつられて微笑みながら低い声で
「その小さいの敷くワ。お幾ら?」
「これは三千だけど、お嬢さんがあんまり綺麗だから二千に負けちゃうよ」
「悪いワネ……………じゃあこれ」
私はピンクにマニキュアした指で、 千円札二枚を差しだした。
彼は獅子頭を包みながら言った。「わたしゃ吃驚しましたよ、お嬢さん あんまり綺麗なんでね。それにしても 近頃の女は駄目になったね。ジーパン かミニスカートばかりはいて······あっ どうもお待ちどう様でした」
お世辞半分であっても、彼は私を再三「綺麗だ、綺麗だ」と言ってくれたの で美しい女として認められた満足感が胸一杯に広がり、やや自信めいたものを感じた。 帰り道に例の三人の若者がいるといやだなと心配したが、幸い何処かへ行ったらしく居なかった。
以下、続きます。
>わたしゃ吃驚しましたよ、お嬢さん あんまり綺麗なんでね。
テキヤのお兄さんも気づいていたと思いますよ。
でも、それをいっちゃあお仕舞いです。
テキヤさんはお客様をいい気持ちにしてなんぼ。
世辞のひとつも女装子さんにもかけますわな。
そういうときは、久美子さんのように有難く受け止めればいいんです、
文章と画像の出所『別冊くぃーん7号』 1987年10月
怖かったでしょうけど、「マブイ」と言われたのだから、オンナとして彼らに認識されていたんですよ.....。
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