女装子愛好クラブ

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村田喜代子『雲南の妻』  講談社

2008年02月10日 | 私的読書日記
女装妻というコンセプトに興味をもって、いろいろ調べていたところ、中国雲南省には女同士が結婚する風習をもっている少数民族がいるそうです。
それを題材にした小説を村田喜代子さんが書いています。
日本人駐在員のごく普通の妻・敦子が、夫の仕事をきっかけにして、英姫という娘と結婚することになるという話です。
敦子は、3日間は妻として夫に抱かれ、それが終わると3日間は夫として英姫とベッドを共にする。
何かぞくぞくとする設定です。

以下は敦子と英姫の初夜シーンです。

わたしたちは向き合ってしゃべっていた。灯がないので英姫の顔は影に沈み、温い息だけがかすかに流れてくる。窓から射す月の光が、そんな彼女の肩に雪のようにぼうっと白く降り積んでいた。
「ミーチタ」
とわたしは名前を呼んだ。
こっちへこない?」
枕の上から手招くと、彼女はすぐわたしの腕の中へすべすべした暖かい体を潜り込ませてきた。
「抱いてあげるわ」
彼女の肩を抱き、胸と胸をぴったり合わせると二つの体の温みが溶け合って不思議な熱の塊になっていく。だが女二人の体はどちらも柔らかで掴み所がなく頼りない。奇妙な抱擁だった。
「ねえ。わたしたちって何かしら」
とわたしは彼女に言った。
「いったいどうすればいいの」
英姫は少し無言で考えるような気配である。そして抱かれたままくぐもった声で答えた。
「奥さんはわたしです……。わたしは奥さんです……。あなたのして欲しいことをわたしがします。わたしのして欲しいことをあなたがします」
どこからか、また猿の切り裂くような悲鳴が流れる。こんな夜中に猿はどうして安らかに眠れないのだろう。
猿の鳴き声を聞きながら、わたしは激しい夢のように英姫の体を抱いた。
出所 村田喜代子『雲南の妻』講談社


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