日々の生活から

毎日の生活で感じたこと・考えたこと

歌う船/アン・マキャフリー著/創元SF文庫

2025-01-10 21:29:05 | 
AIの講演の中で、AIにできないことの一つに身体性に基づいた考え方がある、身体性を考える時SFがヒントになる、と聞いた。
東京大学の稲見教授が攻殻機動隊と並んで紹介していたのが本書だった。
本書は、人間の脳と宇宙船の身体を持つサイボーグの物語。
欲求との折り合いは「条件づけられている」という下りで、片付けられてしまうのが少し残念だった。私は、自分をより制御する(律する)ヒントが得たかったのかもしれない、と読み終わった後に気付いた。
相手を強く求める部分は恋愛物の熱い話になっていたり、ハッピーな結末になっているので楽しめた。



わたしが「わたし」を助けに行こう/橋本翔太著/サンマーク出版

2024-12-30 20:54:29 | 
幼少時に獲得した自分を守るための心の働き「ナイト君」。
急にキレて怒る、やる気が出ない、食べ過ぎてしまう、SNSがやめらない。こうした好ましくない行動は、ナイト君が自分を守ってくれるから。
自分が傷つけられてしまうことから、失敗してしまいそうなことから、不安やストレスから誤魔化すように、守ってくれる。
ナイト君のやり方は幼少時のやり方だから、今は好ましくない結果になる。

自分は難しいことを後回しにしてしまうことがある。あまりに難しいと「自分には手に負えない、誰か何とかして」と逃げ出してしまう。
これはナイト君の働きとはちょっと違うような。

きみのお金は誰のため/田内学著/東洋経済新報社

2024-11-03 21:32:56 | 
book cafe「今日fileのコーナー」で紹介されていて手に取った。
図書館で半年以上待った人気の本でした。
みんなが老後が不安だから貯金することは問題の解決にならない。問題の解決は生産性の向上であり、助け合いであり、贈与である、という説明に、意表を突かれ、でも素晴らしいことだと思った。
投資でお金を増やすことではなく、社会的な価値を高めることが大切であると説明されていることが、気持ち良かった。

「能力」の生きづらさをほぐす/勅使河原真衣著/どく社

2024-10-31 09:34:53 | 
Voicyのbook cafeに著者が対談で来ていて、手に取った本。
著者ががん闘病中に、書かれたこの本。設定が、職場で「能力がない」と言われて悩む息子に、幽霊になった母が対話する、というもの。自分なら、何を伝えられるのか?と、この設定だけでもどきどきする。
測定できない「能力」を、人材開発コンサル会社が如何に商品化しているか、そして人はその「能力」を元に評されることに弱い構造が説明される。
では、どう生きるのが良いのか。簡単な方法がないことを受け止めて、関係に生きること。簡単さに逃げないこと。
才能には発動条件がある、とたかちんが話すことに通じるものがあった。
それでも、色々できる方が良いよねと思い、本を読み続けよう。
これまでは「自分のできることを増やす」ことばかりに目を向けがちだったが、人との関係についても働きかけよう、と思えた。

ロギング仕事術/倉下忠憲著/大和出版

2024-10-25 19:55:53 | 
会社のPodcast好きが勧めてくれたナレッジスタックで、ログを書きながら仕事を進める方法がよく語られている。
私も書くことが好きなので、書くことを仕事の中にどう組み込むのか?と思っていた所、書籍化がされていた。著者のPodcastを聞いて、手に取った。
一日の始まり、1時間ごとに、人に語り掛けるように記録する。記録があるから、続きや割込みやよそ事から戻って来られる。記録があるから振り返りができる。考えられる。
すごくたくさん記録は生まれたけれども、「考え」は全然進んでいないというなら要注意のサインです。それはロギング仕事術のコンセプトから外れ始めています。記録だけしているのは楽ですし、データが増えていくのはコレクション的な楽しさもありますが、それだけであれば自分の手で記録する必要はありません。それこそコンピューターの自動的なログに頼ればいいでしょう。
大切なのは書くことを通して「考える」ことです。自動的なログでは、「考える」ことが起きにくいのです。その点は注意してください。
P.90

ナレッジスタックではobsidianがよく出てくるが、本書ではメモ帳でもWordでも、使い慣れたものから始めれば良いとハードルを下げてくれる。
少しづつ、ログを書き始めているが、振り返りでの効果まではまだ出ていない。それでも、複数の仕事が並行するので、ログがあると再開が早いことを感じている。

休養学/片野秀樹著/東洋経済

2024-10-20 21:09:28 | 
睡眠だけの休息だけでなく、活力が得られる活動もしよう、との話。
活力の例も具体的に書かれている。
河合隼雄だったかが、「元気な人は色々なことをしている。色々なことをすることで元気の鉱脈を掘り当てて、そこから元気をもらっている。だから休むだけでなく、色々なことに首を突っ込むことで元気になる。」というようなこと言っていた。
「自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術」では、ひたすら休息を取ることの大切さが語られていた。とてもシステマティックに、疲れた量に対して、休息が必要な日数を算出して、予定を調整する方法が説明されている。活力が得られる活動も、一定の負荷がかかることを認識しつつ、休息とのバランスを取るのが良いということだろう。

祝祭と予感/恩田睦著/幻冬舎文庫

2024-10-15 21:30:02 | 
「蜜蜂と遠雷」のスピンオフ作品集。
作品のコンピレーションアルバムのために書かれた作品がその始まりだったそうだ。
天才たちのその後や、舞台となったコンクールにたどり着く前の話で、本作の雰囲気の延長戦とした楽しかった。
巻末のエッセイに、作者が音楽とどう関係していたのかが書かれていて、物語よりも興味深く読んだ。また、本作のために、繰り返し候補となる曲を聞いて、公正を作り直した話は迫力があった。自分がその練り上げられたプログラムを読み解くことはできなかったが、背景に触れることができて嬉しかった。

蜜蜂と遠雷/恩田睦著/幻冬舎文庫

2024-10-13 21:06:55 | 
カミさんが強く勧めてくれた作品。やっと読了。
天才たちが音楽を通してレベルアップしていく様子が素敵で、わくわくしながら読み進んだ。
カミさんは、それぞれの曲を聞きながら読み直したい、と言ったが、私は天才のように感じ取れる自信がないし、楽曲の演奏者がどんな思いを込めているかもわかると思えず。
村上春樹のノルウェイの森で、友達とクラッシックを聞きながら、解説をしてくれるシーンがあり、とても憧れた。いまだに、そうした解説を求めている。

営業の科学/高橋浩一著/かんき出版

2024-10-03 21:13:10 | 
現在、会社では営業の方との接点は少ない。生活面では、車の購入が数年間隔である位。
前の仕事では営業サポートに入っていたが、営業って難しいよな、と見ていた。
まず、商品のスペックがあって、後はお客様のニーズとのマッチングなので、人が介在する余地があまりないように思える。
なので、「営業を頑張る」=「足で稼ぐ」→「拝み倒す」or「値引きする」が仕事であり、「頑張る」とは理不尽なことに耐える、と思っていた。
Voicyの荒木さんと著者の高橋浩一の対談を聞いて、人に対する科学的なアプローチが学ぼうと手に取った。

売れない営業は「がんばっていないから売れないのではなく、「がんばる以外のやり方が思い浮かばず、そのうえ、がんばり方を間違えているために、結果として追い詰められているのです。(P.30)

本書の中で、どうがんばれば良いのかが、1万人のアンケートを元に詳細に説明されている。
成果を出している営業が、各フェーズをここまで解像度高く見ている姿勢に学ぶことは多く、自分の仕事も成果に向けて努力しようと思えた。

お坊さんはなぜ夜お寺を抜け出すのか?/虚空山彼岸寺著/現代書館

2024-09-25 22:05:24 | 
COTEN RADIOを聞いていると、仏教は哲学だと言う。とても頭の良い人が、とても考え抜いたロジックで、人が生きる苦しみから解放される考え方が示されているとのこと。

P.112
ひとつの考え方として、仏教には「命の事実」とでも言うべき理論が描かれていると見るのはどうだろう。経典には、ブッダが瞑想を通じて徹底的に自己と世界を掘り下げた結果えられたありのままの事実について、人間がりかいできるようにさまざまな表現で語られている。正しい選択肢を教えてくれるのではなく、正しい選択肢を選べるような判断力を身に付ける術をそこから読み取ることができる。というよりは、心身ともに自己と世界に対する洞察力を高めることによって、結果としてさまざまな判断力も身につくようになるといったほうがよいだろうか。だからこそ、仏教に関する知識だけでなく瞑想の方法などもともに発達してきた歴史がある。

近年、宗教が関係した事件が時々起こる。私も普段、宗教的な活動はしていないが、人が生きる時、自分の考えだけでは足りないことがある。身近な人の死、自分の大病、理不尽な事故、事件、災害。そうした時に、宗教は人を支えてくれる。
田中慶子さんのVoicyで対談で出ていた松本紹圭さんに興味を持った。毎日の生活が仏堂であり、掃除は修行であるという。生活が修行であり、自分を高め整える、というお坊さんの生活が素敵だと覆う。
私は毎日を丁寧に生きたい。食器を片づける時は、取り出しやすいような位置に置く。
その松本さんを含む4人のお坊さんが書いたのが本書。葬式仏教と言われる現代にあって、お寺やお坊さんがどう仏道と向き合いながら、社会に影響を与えるのか。頼れる仏教が、そばに居てくれる。そうした活動をしている人達がいる。頼もしい。



相談する力/山中哲男著/海士の風

2024-09-12 21:37:08 | 
相談する力をつけたい。仕事を抱え込んでスタックさせがちの自分に必要なスキルだ。
相談相手の時間を使ってしまい、相手にメリットがない、と思っていた。
相談をしても、「そんなことも自分で調べられないの?」と言われるのが怖かった。
職場で業務を進めるために、上司、先輩、関係部署に「答えを求める」=相談だと思っていた。
そんな相談がしやすくなることを期待したが、この本で扱う相談は、起業や経営観点でビジネスの進め方の精度を高めたり、打開策を探ることが主だった。

この本で書かれている相談の領域が自分の期待とは異なったが、自分に必要な内容も多かった。

私は、「教える/教えられる」というよ下の関係ではなくて、対話をして共感してもらうヨコの関係が相談
の本来的な特徴の1つだと考えています。(P.48)

相談内容が相手にとって興味があるのか、相談されて迷惑なのかは、相談相手に聞いてみないとわからない、としか言えないんですよね。だから、先ほどのように「まず、聞いてみたら?」とツッコミを入れるわけです。聞いてみて、無理だったら無理でいいし、受けてもらえたらラッキー。ボールをまず投げてみて、それが次につながっていけばいいのです。(P.130)

この形での相談を進めよう。

冒険の書/孫泰蔵著/日経BP

2024-08-14 08:20:52 | 
複数のVoicyパーソナリティが、紹介していた。
これまでの教育の成り立ちから、面白いと思うこと突き詰めるのが学習であり、AIが色々なことができるようになるこれからは従来の学習に拘る必要はないと展開される。
そうかな、と思いつつも、だからと言って子供に好きなことだけやっていれば良いと言えるようにはならない。
自分が持ち帰られたのは、最後に書かれていた言葉。
われわれに後世に遺すものはなにもなくとも、われわれに後世の人にこれぞいうて覚えられるべきものはなにもなくとも、あの人はこの世の中に生きているあいだは真面目なる生涯を送った人であると言われるだけのことを後世の人に遺したいと思います
(内村鑑三)

観察力の鍛え方/佐渡島庸平著/SB新書

2024-08-11 19:14:10 | 
普段の振り返りが上手くいっていない。今日のできごと・感情から、改善点や自分の価値観を見つけられていない。観察力が低いと感じていたので、本書を手に取った。
本書では、観察力を鍛えるために、認識を歪める感情とバイアスとコンテクストについて丁寧に解説がされる。それらが悪いものではなく、特性を理解して武器にすることが語られる。眼鏡は事象の一部しか見せないが、眼鏡があることで見えることもある。
終盤では、正解を手放し、あいまいな状態を受け入れ、創作に結びつけるためのマインドフルネスについて語られ、愛にたどり着く。
観察力を超えて、人生の視方を説かれたように感じた。新書だが、メモ・抜き出しの量が12,000字を超えた。


傲慢と善良/辻村深月著/朝日新聞出版

2024-08-10 11:09:59 | 
9月に映画化される小説。book cafeで話があった。https://voicy.jp/channel/794/5070291

book cafeでは、親の言う通りにしてきた善良、という話があった。
自分は、より広く、常識というか謙虚さも善良の中に含まれていて、その善良と傲慢は同居して、相手を傷付け、自分にも返ってくることあることが怖くなった。
婚活が上手くいかない、「ピンとこない」という状態を、ちょっと辛辣に、でも鋭く描写していて、ドキドキする。
ピンとこない、の正体は、その人が、自分につけている値段です
その値段、点数が、自分と釣り合うか、自分の高い点を持ち出すか、低い点から相手を見られるか、傲慢を手放せるか、それが「ピンとくる」ということなのだろう。

もう一つ、自分の価値観に突き付けられたのが自己愛と逃げ。
自己評価は低いくせに、自己愛が半端ない。諦めているから何も言わないでって、ずっといろんなことから逃げてきたんだと思う
自分が謙虚で居ようとするのは、逃げるためだったようにも思う。「頑張ったから、これで勘弁してください」と、ハンドルを手放してしまう身勝手さの根っこに、上のセリフが重なり、ちょっと苦しくなった。

この話の根底に、恋愛結婚至上主義的なものがある。個を確立した者同士が自分の価値観に基づいて相手と結ばれることが最善という考え方。婚活がテーマなので、登場人物がそうした考えを持って行動し、個の確立ができていない生き方に未熟を感じるように描いているのは当然かもしれない。半年前であれば自分も違和感なく読めただろう。
選択の科学/シーナ・アイエンガー著/文藝春秋 - 日々の生活から では、恋愛結婚が一般通念でないことが描かれている。それがあったので、お見合い結婚であっても幸せになれるだろうし、という視点で読み進められた。主人公への共感は減ったかもしれないが、落ち着いて読み進められた。