夜の空は星のかけっこ

2015-06-18 21:40:19 | 童話
夜の空は星のかけっこ。
たくさんの星のかけっこ。
空いっぱいのかけっこ。
ゆっくり、ゆっくりとしたかけっこ。
みんなでゆっくりとしたかけっこ。

大きな星も、小さな星も、ゆっくりとしたかけっこ。
あっ、すごいスピードで走っていた星がいる。
みんなとちがう方向へ走っていった。
あれっ、星だのに尾っぽがある、長い長い尾っぽがある。

女の子が何か願いごとをしている、友達がたくさんできますように、きれいになれますように、お母さんがいつまでも元気でありますように。
それから、それから、うーん。

願い事をたくさん言っていたら星が遠くへ行ってしまった。
また、次の星のかけっこのときにしよう。

星のかけっこは続いている。
ずーと、ずーと続いている。

これからもずーと。

     おしまい





山は木のかけっこ

2015-06-17 21:40:15 | 童話
山は木のかけっこ、大きな木のかけっこ、小さな木のかけっこ。
たくさんの木がかけっこをしている。
どんどん上へかけっこしている、高く、高く、上へ、どんどん上へ。

高くなった大きな杉の木が下のみんなにさけんだ。
『おーいみんな、はやくおいでよ、高いところはお日さまがいっぱいだよ。』

背の低いもみじの木が、杉の木に応えてさけんだ。
『今、はっぱを赤くしているので、高くのびるのは来年だよ。』
『わかった。では来年待っているからね。来年は高いところで遊ぼうね。』

こんどは松の木が、杉の木に応えてさけんだ。
『僕は上と横の両方にのびているので、杉君みたいに早く上に行けないよ。』
『ではゆっくりと上においでよ、待っているからね。』

たくさんのどんぐりの木がみんなでさけんだ。
『今、どんぐりをたくさん作っているので、高くのびるのは来年だよ。』
『わかった。たくさんのどんぐりを作ってリスさんにあげてね。』
『ところで杉君、高いところはどんな木がいっぱいなの。
前の山も杉で、後ろの山も杉で、右も左もみんな杉だ。
やっぱり、杉君が一等賞だね。』



工場は機械のかけっこ

2015-06-16 21:39:02 | 童話
工場は機械のかけっこ。
大きな機械がドスン、小さな機械がトントントン。
みんなみんな負けないようにかけっこしている。

チャイムがなった、お昼だ。
大きな機械がピタッ、小さな機械もピタッ、みんながピタッ。

みんなお昼ごはんを食べるんだね、工場で働く人が食堂に集まってきた、工場の食堂だ。
食堂のご飯を食べる人。
うちから持ってきた弁当を食べる人。
たくさんの人がいっしょにお昼ごはんを食べている。

あっ、機械に油をさしている人がいる。
大きな機械も、小さな機械も、次々に油をさしている。

またチャイムがなった。
お昼休みの終わりだ、機械のかけっこの始まりだ、大きな機械も、小さな機械も、みんなでかけっこだ。

図書館は本のかけっこ

2015-06-15 21:37:39 | 童話
図書館は本のかけっこ。
たくさんの本のかけっこ。
だれが早く読まれるかな。
だれが早く貸し出されるかな。

大きな本、厚い本、きれいな色の本、小さなもじで書かれた本。
みんな本だなに並んでいる、みんな番号がつけられている。

小さな女の子が来たぞ、お母さんといっしょだ。
きれいな色の本を持ってきてお母さんに渡した。
すると、おかあさんは受付へきれいな色の本を持っていった。
きれいな色の本が一番早く貸し出された、一等賞だ。

こんどは男の子だ。
工作の本を持っている。
工作の本が二等賞で貸し出された。

つぎは男の人が小さな字で書かれた厚い本を持っている。
この人は受付ではなくイスのあるテーブルへ行ったよ。
そうか、何かを調べているみたいだね。

あれっ、図書館の人がたくさんの本をかかえてやってきて、次々と本だなへ置いていく。
貸し出されていた本が返されてきたのだ。
またかけっこの始まりだ。

海は砂のかけっこ

2015-06-14 10:55:31 | 童話
海は砂のかけっこ。
波に乗って砂がかけっこをしている。

ぼくと同じ白い砂、そして灰色の砂、いろいろな砂がやってくる。
次から次から波に乗ってやってくる。
砂に混じって海草もかけっこしている。

あっ、小さな魚もかけっこに加わったぞ、よし、みんなでかけっこだ。
ドドドドッ、ドドドトッ、ザブーン、ザブーン。

みんなに負けないぞ、それ急げ。
あれっ、魚くんはもう遠くへ行ってしまった、速いなあ。

海草くんはぼくと同じ速さだね。
いっしょに走ろう。
僕たちはたくさんだが、海草くんは一人だね。
でもみんなで仲良く走ろうね。
そうしよう。

あっ、大きな波がくるよ。
ドドドドッ、ザブーン。

それ急げ、こんどは海草くんよりぼくたちのほうが早くなった。
おーい、海草くん、がんばれ、がんばれ。
どんどん、どんどん、海草くんが遅くなっていく。
海草くん、先に行ってるからね、ゴールで待っているからね。

あれっ、ゴールはどこだっけ、海草くーん、ゴールはどこだっけ。
あっそうか、あの浜辺がゴールなんた。