カタツムリの富士登山(3)

2016-08-21 08:02:43 | 童話
『あっ、雨だ。』
雨粒が僕の目に当たりました。
『チョウチョさん大丈夫?』
『ええ、これくらいの雨なら大丈夫だけれど、きつく降ってきたら雨宿りしないといけないわね。』
『そうなの? 僕は雨がたくさん降っていてもへいきだよ。』
『わぁ、たくさん降ってきだした。わたしは大きな葉の裏側で雨宿りするわ。』
『じゃぁ、僕も葉っぱの裏側で休憩するよ。』
『カタツムリさんは1日10メートル歩くんでしょ。』
『うん、だけれど、雨がやんでから一杯歩くよ。』

こうして、僕とチョウチョさんは歌いながら、何日も富士山を登って行きました。
僕が
『ランランラン、ランランラン。』
チョウチョさんは
『ルンルンルン、ルンルンルン。』

『楽しそうだけれど、何をやっているの?』
僕とチョウチョさんが見上げるとトンボ君が話しかけてきました。

『チョウチョさんと山登りしているんだよ。』
『カタツムリ君はふもとからずっと登って来たの?』
『登山口まで自動車で送ってもらったけれど、登山口からはずっと歩いて登っているんだよ。途中でチョウチョさんと友達になって一緒に登っているので楽しいよ。』
『いいなぁ、僕も友達に入れてよ、僕も一緒に登りたいなあ。』
『いいよ、たくさんで登ると楽しいよ。』
『決めた。僕はカタツムリ君とチョウチョさんの友達になる。』

こうして3匹で
僕が
『ランランラン、ランランラン。』
チョウチョさんは
『ルンルンルン、ルンルンルン。』
そして、トンボ君も
『ピッピピピ、ピッピピピ。』
と歌いながら何日も何日も富士山を登って行きました。

カタツムリの富士登山(2)

2016-08-20 11:02:42 | 童話
僕は、登るのに2年で、下るのに2年かかるから、僕が今度お花畑に帰るのは4年後になるんだなぁと思った。
さあ、ガンバルぞ、僕の始めての大冒険の始まりだ。
今はまだ低い所なので草やお花が一杯だ。
僕は体が乾燥しないように、水が残っている草の上を歩いて行った。

『どこへ行くの?』
僕のうしろから声がしたので頭をうしろにまわすとチョウチョが飛んでいた。
『僕はね、これから富士山に登るんだよ。』
『ふぅ~ん、すごいね。ひとりで登っているの?』
『うん、お父さんとお母さんはお家に帰ったよ。』
『わたしが途中まで一緒に行ってあげようか?』
とチョウチョが言ったので、仲良く一緒に登って行った。

チョウチョはカタツムリの僕の体が乾燥しないように、水のある所や、水の付いている草の場所を、高い所から探して僕に教えてくれた。

そして、夜は仲良く一緒に寝ました。
『カタツムリ君、もう朝だよ、早く起きなよ。』
『ああ、おはよう。昨日はいっぱい歩いたから疲れちゃった。』
『まだ1日でしょ。4年間歩くのだから、がんばらなければダメだよ。』
『そうだね、よしガンバルぞ。』

僕は草の上の水を飲んだあとで、大きなあくびをした。
そして、僕はまた歩きだし、チョウチョは僕の上を飛び始めた。

『ランランラン、ランランラン』
僕はチョウチョと一緒なので楽しくなり、歌をうたいながら歩きました。
チョウチョも
『ルンルンルン、ルンルンルン。』
と楽しそうにヒラヒラと飛んで、一緒に富士山を登って行きました。

カタツムリの富士登山(1)

2016-08-19 21:46:56 | 童話
『お母さん、僕、富士山に登りたい。』
僕達が住んでいるお花畑の持ち主さんが、テレビで世界遺産になった富士山を見ていた時に、カタツムリの僕は急に富士山に登りたくなった。
『何を言っているの、あんな高い山に登れるはずが無いでしょ。』
お母さんがあきれて言った。
『富士山の高さは3776メートルでしょ、1日に10メートル登ると377日だから、1年ちょっとで登れると思うんだ。』
『だけれどね、高い山は雪が降ってすごく寒いんだよ。私達カタツムリは寒さに弱いので生きていられないのよ。』
『それでは、寒い時は背中にある家に入って、温かくなるのを待っているよ。そうすると、2年で登れると思うんだ。』
お父さんが、
『絶対に登るという気持ちが有るなら、やってみるといいよ。だけれど、寒くなってきたら家から出たら絶対ダメだよ。』
と、言ったので僕は
『うん、わかった。』
と答えた。

そして、僕は今日から体力をつける運動を始めた。
僕達の住んでいるお花畑を、今までは1日で1廻りしていたが、今日からは1日に3回まわることにした。
最初は疲れて、休憩ばかりしていたが、何日かすると休憩しないで、まわれるようなった。

そして、たくさん練習して富士山に登れる自信がついたので、明日出発することにした。
すると、お父さんが、このお花畑の持ち主さんに、富士山の登山口まで自動車で送ってもらえるようにお願いをしてくれた。
そして、お花畑の持ち主さんが、僕とお父さんとお母さんを入れた虫かごを富士山の登山口まで自動車で運んでくれた。
自動車の外に置いてくれた虫かごから僕だけが外に出た。
お父さんとお母さんは、虫かごに残って、もとのお花畑に連れて帰ってもらうことにしていたのだ。

『お父さん、お母さん、行ってきます。』
『気を付けてな。絶対ムリしたらダメだよ。』
『うん、わかった。バイバイ。』
『バイバイ。』
そして、お父さんとお母さんは、お花畑の持ち主さんの自動車で帰って行った。

山の上のロックの永~い旅(6)

2016-08-18 21:29:31 | 童話
『あれっ、あっちこっちの角が取れちゃったので、段々丸くなってきた。』

そして、取れた角の小石も川の中でコロコロと転がっていた。

『お~い、みんな大丈夫かい?』
『大丈夫だよ。一緒に転がっているからね。』
『だけど、君達の方が小さいから転がるのが速いね。』

段々川が広くなって、魚も多くなってきた。
人間が川下りする船とも出会った。

『僕はロック、君達は?』
『ぼくはコイ。』
『わたしはアユ。』
『ぼくはイワナで、あそこにウナギも居るよ。』
『ロックはどこへ行くの。』
『海へ行くんだよ。』
『海はまだ遠いよ。』
『この川を転がって行くと海へ行けるよね。』
『うん、海の少し前まで行った事があるけれど、遠いよ。』
『ありがとう、頑張って行ってくるからね。』

そして、何年か転がって海の入口にやって来た。

『水が少し塩辛くなったね。』

遠くに大きな船が見えてきた。

『海だ、海だ、海に着いたのだ。』

僕の上を大きな波がザブン、ザブン。

『ここは、波でユラユラと楽しいな。』
『やぁ、僕たちよりも前に来た石達もみんな丸くなっているね。』
『お父さん、お母さん、僕は海に着いたよ。お姉ちゃん、弟、海で待っているからね。気を付けて来るんだよ。』

何年もかかったけれど楽しい旅だったと、僕は思った。

おしまい

山の上のロックの永~い旅(5)

2016-08-17 15:13:45 | 童話
何年か経った時に台風が来た。
山にたくさんの雨が降り、小川の水量が増えて、僕はまた動き出した。

そして、もっと広い川まで滑って来た時、急に水の流れが激しくなってきて、僕はあっちこっちぶつけながらすこしずつ進んだ。

その時、前の方の川岸や木が見えなくなり、空が見えてきて、急に体がふぁっと浮かんだ。
次の一瞬、下へ下へと体が落ちて行った。
それは、お父さんやお母さんから聞いていた滝だ。
初めて見たし、初めて下へ落ちて行った。
ドボーン、ドスン、僕は滝壺に落ちてお尻をぶつけた。
その衝撃で体が半分くらいになってしまい、滝壺から飛び出した。
そして、僕の体の仲間がたくさんできたのだ。

『みんな大丈夫かい?』
『大丈夫だよ。』
『大丈夫。』
『元気だよ。』
『一緒に居るよ。』
『僕も元気だよ。』
『良かった、良かった。みんな無事でよかった。』
『この滝の川から出るのに何年かかるかわからないけれど、みんなで海に向かって行こうね。』

そして、何年かして、広い川の中まで転がり出て大きな岩にぶつかった。
『痛いっ。岩にぶつかったので、頭とお尻の角が取れちゃった。』
僕は次々と岩にぶつかりながら転がって行った。